'PARTS' 17 予想できない大混乱
『あ、タカ~? うん。だいじょぶだよ~ん。どしたの? 昨日、夜遅くまであんなにお喋りしたのに、またケティちゃんが恋しくなっちゃった~?』
突然聞こえてきた声に驚くカイト少年達をスルーして、タカは口を開く。
「アホ。頼み事ができたんだよ」
『ほぇ? 頼み事? いいよ~。何なに? またなんかブッ飛んだ話?』
「魔力の制御のやり方を人種族に教えたりできねぇかと思ってな」
『魔力の制御? あ、もしかして、'PARTS BOOK'と'PARTS'を使わせてあげるの?』
『ああ。ただ、'PARTS'魔法を発動させるのには魔力の制御が必要だろ? やったことないっつーから」
『うん。普通の人種族はそんなことしてないと思うよ? タカがおかしいの』
「ほっとけ。んで、やり方は教えてやれるか? 今、ちょうど全員聞いてんだけど」
『そなの? じゃあ、皆フリーズしちゃってない?』
「してる。やっぱりこの腕輪っつーか、指輪っつーか、相当レアなんだろ?」
『まーね~。ダンジョンで見つけたヤツだもん。古代遺物ってヤツ?』
「マジでか。そんなモン、よく貸してくれたな? っつーか、古代遺物をイタズラに使ってんぢゃねーよ」
『あはは。おんなじ発想してたタカがよく言うよ~。それに、タカも'PARTS BOOK'と'PARTS'をくれたじゃない? おあいこおあいこ。んで、魔力操作のやり方だっけ? 教えるのはできるけど、口で説明するのって難しいんだよね』
「そうかぁ・・」
『ね? この話聞かせてるってことは、その人達って信用できる人達? タカは信用してるんだよね?』
「してるよ。アホみたいに良い奴らだ。ケティの次に会えた奴らがこいつらでホントに良かったと思ってるくらいにはな」
タカの言葉に、カイト少年達は思わず目を逸らして少し赤くなってしまう。
「きゅ、急に何言い出してんだ」
「タカ。不意打ちはよくない。押し倒したくなる」
「それはやめような? おじさん、今の状態でも結構いっぱいいっぱいだからな?」
「えへへ~。タカにそんな風に言われると、照れるっすよぉ」
『ほぇ~。ホントに仲いいんだ。じゃあ、いいかな? うん。あたし、これからそっちに行くから、ちょっと待ってて。あと2時間くらいで着くから』
「は? 2時間?」
『たはは。昨日、久しぶりに喋ったら、なんか顔見たくなっちゃってね。もうそっちに向かってる途中なんだ~』
「なんだよ。言ってくれりゃ、迎えにいったのに」
『ダ~メ。それじゃ、サプライズになんないもん。まぁ、こうして言っちゃったけどね~。あ、でも、他の街の人にはあんまり見られたくないから、街の外に来てくれる?』
「おう。どの辺りにいりゃいい?」
『んっとね~・・セリタルカの街から北に1時間くらい行ったトコに森があるから、そこの入口で待ってて』
「森の入口ね。了解。んじゃ、後でな」
『うんっ』
ケティの返答を受けて、指輪に魔力を通すのをやめるタカ。
「・・妖精族から古代遺物を借りてるとか、妖精族とやたら仲よさそうとか、妖精族が会いに向かってたとか、もうホントにどこからツッコミ入れりゃいいんだ?」
「言うな、ダイン。こいつに常識は通じねぇんだ。改めて、俺はそう思った」
「なんか、タカだからなぁとか思ってる俺がいる」
「それでいいんじゃね?」
ルグとレジィの言葉に、溜め息を吐くタカ。
「お前らなぁ・・まぁ、それでいいか。んじゃ、準備して出発だ。ケティが着いてからは魔物はほとんど出ない筈だけど、それまでと帰りは狩りのチャンスもあるかもだからな。装備はちゃんと整えとけよ」
「どうして妖精族が着いたら魔物が出なくなるの?」
「ケティが言うには、妖精族に喧嘩売るようなのはよっぽど強いヤツだけなんだとさ。妖精族とか精霊族の方が強いから」
「へぇ。じゃあさ、マジックアイテムで妖精族とか精霊族がいるように見せかけるのとか作れたら、タカの言ってた道中の安全ってなんとかなりそうじゃない?」
「お? それ、面白そうだな。あとでケティに相談してみっか。ナイス、シェリー」
「えへへ」
「・・シェリーも常識ブッ飛ばしにかかってやがんなぁ・・妖精族がいるように見せかけるマジックアイテムとか言い出しやがった」
「新しいモンを作ろうと思ったら、それくらいブッ飛んだ発想が必要なのかもな。さ、全員準備して出発だ」
「「「おう!」」」「はい」「うん」「ん」
ダインの号令でカイト少年達が動き出し、タカの部屋を後にした。
「さて・・最初の予定は消化の目処は立ったな・・最終目標までは遠そうですけど、ボチボチ頑張っていきますよ。まずはこいつらの戦力底上げ。それから、収集できるドロップアイテムのランクの底上げ。それに伴って、物流の効率上昇の為に道中の安全性向上の為のマジックアイテム作りと冒険者の使う装備品ランクの底上げ。そこから、いろんな技術の開発、向上。ホントに長い話になりそうですけど、まぁ、見ててくださいよ。'偉大なる魔術師'って貴女に呼んでもらえてたのは伊達じゃないってトコ、見せてみせますから」
そう呟いて、タカも準備を済ませて、部屋を後にするのだった。
タカ達が準備を街を出て、1時間後。ケティが指定した森の入口にタカ達が到着すると、森の中から凄まじい勢いでケティが飛んできた。
「タカァァァァァッ!!」
「おぉっ!?」
ケティはタカの目の前で急停止すると、眉を吊り上げたまま、掴み掛かる。
「あんた、今度は一体何しでかしたのよ!? 本ッ気であたしの心臓破裂するかと思ったんだけど!?」
「は?」
「'は?'じゃなくてぇっ!!」
「ふふふ。ケティアセヌス。何も心配することはありませんよ。タカは私にとって嬉しいことしかしてくれていませんから」
鈴の音を思わせる透き通った静かで優しげな声に、一同が森の入口の方へ振り返ると、そこにはゆるふわウェーブの金髪を腰まで伸ばした碧眼の巨乳美女が森からゆっくりと出てきていた。その姿を見たタカは、口を半開きにして完全硬直してしまう。
「お久しぶりですね。タカ」
タカに歩み寄って、嬉しげに微笑む金髪碧眼美女。
「な、ななななな、なんで!? めがっ!?」
タカの言葉を遮るように、唇に人差し指をそっと当てて悪戯っぽい笑みを浮かべる金髪碧眼美女。
「セレス、とそうお呼びください。私の愛しい魔術師様」
「「「なっ!?」」」「いとっ!?」
セレスと名乗った美女の言葉に、ミリエラ、シェリー、アンの驚きと焦りと怒りの籠った声が上がる。同時に、タカは一瞬で赤面してしながら、驚愕と困惑の声を上げてしまう。
「タカ。誰? この人」
「そうよ! こんな人がいるなんて聞いてないんだけど!?」
「も、もしかして、こ、恋人、ですか?」
「あらあら。妬かせてしまいましたかしら?」
「ちょ、いや、あの、いや、マジですか?」
「はい。あなたが思われている通りですよ。やはり、一目で分かってくださったのですね」
ふんわりとした嬉しげな微笑みを浮かべながら言うセレスに、タカは踞って頭を抱えてしまう。
「マジか。予想の斜め上どころか、完全に予想外。っつーか、こんなの誰が予想できんだよ・・」
「タカ? 大丈夫っすか?」
心配そうに覗き込んでくるウィシィの声で、タカは我に返り、立ち上がる。
「あ、ああ。すまん。ちょっと、いや、もう本気でビックリしただけ」
「・・その様子じゃ、タカも知らなかったのね?」
「知るわけあるか。度肝抜かれたっての」
「あたしはそれどころじゃなかったけどね?」
「ふふ。ごめんなさい。ケティアセヌス。いきなり会いにきて、驚くタカが見たかったものですから」
「いっ、いいえっ! あたしはお会いできて凄く嬉しいですからっ!」
セレスに声を掛けられて、ピンッと背筋を伸ばして言うケティ。その様子に、怪訝そうな顔をしているカイト少年達。
「見たトコ、純人族にしか見えねぇけど、あんた、こいつの知り合いか?」
「はい。初めて直接お会いしたのは、もう3年前になりますね」
セレスの言葉に、目眩を覚えるタカ。
ーー3年前って、'MAGICIANS ONLINE'が過疎期に入って、サービスが終了するかもとかって噂が出始めたばっかの頃じゃねぇか!! しかも、もうこの女神様にも会えなくなるかもってセクハラの頻度が急上昇してた頃だぞ!? マジで本人(本神?)にセクハラかましまくってたのかよ、俺は!?ーー
目眩の理由が何とも言えないものではあるが、本人は至って真剣である。罪悪感の余りに、土下座を実行しようとしたとき、セレスがさらに口を開いた。
「私も忙しい身なので、毎日、というわけにもいきませんでしたが、それでも、決まりきった私との会話ですら、いつも楽しそうにしてくださるタカに会えるのが楽しみになっていたのです。立場の近い他の方々を説得するのには骨が折れましたが、やっとこうして何の制限もなく、顔を合わせることができました。あの、ですから、タカ?」
「へ? あ、は、はい」
「もう1度、以前のように手を握ってはいただけませんか?」
少し赤くなりながら、手を差し出すセレス。それをジト目で見つめるミリエラ、シェリー、アンと、羨ましそうに見つめるウィシィ。
「え、あ、いや、本気で言ってます? 俺、次に会えたら、土下座で謝んなきゃって思ってたんですけど」
「謝っていただくことなんてありませんよ。もう1度こうしてもらう為に、私はここにやってきたんですから」
恥ずかしそうに頬を染めて、僅かに目を逸らしながら言うセレスに、タカは再び耳まで赤くなってしまう。
「え、と・・」
助けを求めるようにケティに視線を送るが、'モタモタすんな!!'と言わんばかりに睨まれてしまい、おずおずと手を出すタカ。
「じゃあ、失礼、します」
そう言いながら、ぎこちない動きでセレスの手を握ると、花が咲いたような喜色満面の笑みを浮かべるセレス。その笑顔に、タカのみならず、怪訝そうな顔をしていたカイト少年達ですらも赤くなってしまう。
そこにはタカへの溢れんばかりの気持ちしか見て取れない。その純粋な気持ちを表すセレスの満開の笑顔は、その美貌と相俟って、魅力的という言葉が生温い程なのだ。
「ふわぁ~・・セレスさん、タカのこと、ホントに好きなんすね~」
ウィシィの洩らした感想に、タカとケティは物凄い勢いでウィシィの方に振り返り、'何を言い出しやがる!?'と言わんばかりの視線を飛ばすが、セレスは頬を赤く染めながらも握られた手を引き寄せてきゅっと抱き締めてしまう。
「はい。タカと会って、初めて恋というものを経験しています」
セレスの言葉に、タカとケティは互いに顔を見合わせて、ケティから'一体何をしでかした!?'という射殺さんばかりの視線が飛び、タカは己の潔白を示すように首を高速で左右に振る。
「ご迷惑、でしょうか? タカ?」
「めっ、迷惑とか有り得ませんよ! 俺としちゃ、嬉しい限りです!!」
勢いよく返答したタカの言葉に、セレスは赤くなって俯いてしまい、後頭部にはケティの蹴りが叩き込まれまくる。さらには、ミリエラ達からの鋭い視線も刺さっていたりする。
「た、ただ、大丈夫なんですか? その、なんつーか、色々と。ここに来てるのだって、相当問題あるんじゃないですか?」
「ええ、まぁ。それなりの無理は押し通していますね。決められていた婚約者は激怒していましたし」
「「ブハッ!?」」
セレスがアッサリと口にした台詞に、タカとケティが同時に噴き出した。
「オイ! ケティ!? 相手のこと、知ってるよな!? どういう相手なんだ!?」
「あわ、あわわわわ・・・タ、タカ、短い付き合いになっちゃうわね・・」
悲痛な表情で言うケティに、タカは嫌な汗が背中を伝うのを感じる。
無理もないだろう。セレスの婚約者となれば、相手が神であることは確定なのだから。
流石のタカも、神と相対して勝てると思うほどに傲慢ではないのだ。
「待てコラァッ!? そんなにヤバイ相手なのかよ!?」
「大丈夫ですよ? タカを殺して私の目を覚まさせる、なんて言うものですから、きちんと身動きを取れなくしてきましたから」
「「「「「怖っ!?」」」」」
にっこりとしながら言うセレスの言葉に、カイト少年達のツッコミが炸裂する。
「この人、完全にタカの関係者だぞ、これ」
「サラッと怖いこと言う辺り、間違いねぇ」
「お前ら、頼むから恐れ多いこと言わないでくれるか!?」
「あらあら。構いませんよ? 私はただのセレスとしてここにいるのですから。むしろ、嬉しいですよ」
「そ、そうは言いますけどね・・」
「ダメ、ですか?」
「う゛・・」
上目遣いで言うセレスに、返す言葉を失うタカ。
「・・・何かわけあり?」
「っぽいよね。どこかの国の、っていうか、もしかして、タカの国の王族、とか?」
「有り得そうですね・・タカさんのことですから、偉い人だとは知らないままに接していた、とかでしょうか?」
「それで、そのままタカに落とされた。有り得る話」
「有り得ねぇからな!? お前らの中の俺はどんだけ女誑しなんだ!?」
「普通に接したら、無意識に相手を落とすくらい?」
「人生初の評価ありがとよ!? そんなにモテるんなら、35年も一人身やっとらんわ!!」
「ふふ。タカの良さは間近で接してもらわないと分かりませんからね。まさか、こんなに短時間で恋人が4人もできているとは思いませんでしたけれど」
セレスの言葉に、ミリエラ達は真っ赤になってしまう。それは嬉しそうに頬を緩めながら。
「恋人。そう見える?」
「はい。違いましたか?」
「えへへ。ま、まだ返事待ちなんだけどね~。そっかぁ。そんな風に見えちゃうんだぁ。にへへ~」
「あら。そうなんですか? この国では、複数の伴侶を娶るのは普通のことですから、躊躇う必要はないかと思いますよ?」
「サラッと俺の常識ブッ壊してくれる発言してくれますね!? 色々と躊躇う要素あるんですよ!?」
「常識、ですか? あぁ、なるほど」
「ア、アニキが常識ブッ壊されるって言ってる・・」
「この人、パネェ・・」
納得顔のセレスに、慄きを隠せないカイト少年達。
「えと、セレス様? 本気ですか? 本気の本気で言ってます? こいつ、散々セレス様にセクハラしてたって聞いたんですけど。セレス様がそう思うような要素が見当たらないんですけど」
「「「セクハラ?」」」
「タカ。どういうこと?」
「あ、あたし達には何にもしようとしない癖に」
「た、確かに、その人と比べると体付きは負けてしまうかもしれませんけど、十分に柔らかい筈ですよ?」
「待て待て待て待て! お前らの想像してるようなレベルのはないからな!? 手を握ったり肩に手を回したりはしたけど!!」
「むぅ。タカからっていうのが気に入らない。私にもするべき」
「同じようにしてくんなきゃヤダ!」
「私は別にもっと過激なことでもいいですけど」
「ん~、ボクは撫でてもらってるから、今はそれでいいっすけどね~」
ーーNPCだと思ってやるのと一緒にすんなよ!? っても、そんな理屈、こいつらに通じるわけねぇしぃぃぃっ!! どうすんだ!? どう回避する!? んなこと平然とヤれる程、耐性も免疫もできてねぇっての!!ーー
「まぁまぁ。その辺りは許してあげてください。以前にお会いしたときの私は異性として認識されていませんでしたから。そうですね、ゴーレムのようなもの、だと思われていたと思ってください」
思わぬ助け船に、タカは期待の視線をセレスに投げ掛ける。割と本気で必死である。
「ゴーレム? でも、あなたはどう見ても人種族ですが」
「受け答えが決まったものしか許されていなかったのですよ。それで、手を握ったり肩に手を回したりすることで、特殊な反応が引き出せる、というものが他にもありましたので、私もその一種だと思われていたのです」
「・・ホント?」
ミリエラの質問に、首をブンブンと縦に振るタカ。
セレスの説明は、多少、事実と異なる部分はあるものの、この世界の人種族に分かりやすく説明できる内容としては間違いではない。VRゲームやNPCといったものは、ケティですら理解できなかったのだから、他に説明のしようもないだろう。なので、タカの必死の肯定も嘘ではない。
「ん。なら、仕方ない。そもそも、タカが自分からセクハラに走るというのが想像できなかった。そんなに胸がいいのかと」
「そういうの、やめてくださいませんかね!? この人相手にそんなの思えんわ!」
「え? タカはそういう趣味だったのですか? 4人中、3人が幼い容姿の子ですから、まさかとは思いましたけれど」
「違いますからね!? いや、有りか無しかって言われりゃ、こいつらに関しては有りかもしんないですけど、俺にロリコンの疑い持つのは勘弁してくださいっ!」
「では、私にも触れたいと思ってくださいますかっ?」
嬉しそうに問いかけてくるセレスに、タカはまた赤くなりながら目を逸らしてしまう。
セレスのその眩しいまでの笑顔と、体の一部が揺れるせいで。
「・・思います。はい」
「あんたは何を吐かしてくれちゃってんのぉっ!? 妖精族全員でその煩悩焼き払ってあげよっか!?」
「嘘を吐けってか!? 男ならあんなの触ってみたいと思わねぇ方がおかしいってんだよ!! なぁっ!? そこで目を逸らしてる少年達もそう思うだろ!?」
「テメッ!? 巻き込むんじゃねぇよ!!」
「死なば諸ともって言葉、知ってっか!? 神罰喰らうときは全員道連れだ!!」
「神罰とか怖いこと言い出すんじゃねぇよ!? 確かに、セレスタイン様は女神様だし、女神教の戒律はキッツいけどよ!?」
タカのセレスに対する姿勢に、ミリエラは首を傾げてしまう。普段のタカであれば、こういった事柄に対するコメントは明確にはしないからだ。
「タカ。なんだか、この人には弱い?」
「よ、弱いっつーか、頭上がんねぇんだよ。この人のおかげで、俺はここでこうしてられるんだ。一生掛かっても返しきれない恩がある」
「そんな、恩だなんて。私はそういうつもりはありませんよ? 純粋に貴方の気持ちが嬉しかったからというだけなのですから。それに、貴方はそんな必要もないのに、私の希望を叶えようとしてくださっています。私にはもうそれだけで十分過ぎる程です」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、これは俺の気持ちですから。望んでた生き方、望んでた世界のすべてをセレス様がくれたんです」
タカのいつにない真剣な様子に、ミリエラ達は見惚れてしまい、カイト少年達ですら圧倒されて声が出なくなってしまう。
「タカ・・はい」
目を潤ませながら、嬉しそうに笑うセレス。
「ふぅん・・タカもそんな真剣な顔するんだ。'PARTS'のこと以外で」
「人を'PARTS'馬鹿みたく言うのは止めてくれないか? 否定はせんが」
「しないんだ、否定」
呆れたように言うケティに、胸を張るタカ。
「俺はそれだけに情熱のすべてを15年以上注ぎ込んできた男だぞ。どうやって否定しろと?」
「ふふ。そうですね。タカは'あそこ'でも異例の、いえ、特異と言っていい程の強さを誇っていました。その知略と技のすべてを出せば、貴方の敵う者はいなかったでしょう」
「あ、いえ、Pブ・・対人の試合じゃ、俺の戦績はそこまでよくなかったですよ? いいとこ6割ってトコで」
タカの言葉に、ギョッとなってタカに視線を集中させるカイト少年達とケティ。
「タ、タカさんに勝てる相手がそ、そんなにいるのか?」
「ど、どんな人外魔境だよ、それ・・」
「オイコラ。お前らの持ってる俺に対する印象について、小1時間ばかり問い詰めてやりたいんだが?」
「だって、あんな非常識な魔法ポンポン使えるんでしょ? そんなあんたに勝てるって、相手は魔王か魔神くらいかと思ってたのに」
「俺は完全に人外か!?」
「はぁ? 妖精族よりも強い魔法が使える時点で、人外確定じゃないの。今更何言ってんの?」
当然でしょと言わんばかりに溜め息を吐きながら言うケティ。
「むぐ・・俺と同等の'PARTS'を集めりゃ妖精族と精霊族には、魔力量的に敵わんのは間違いないだろうけど、そう簡単に上回らせるつもりはねぇし、かと言って人外認定を認めるのも・・」
「うわぁ・・本気で誰が相手でも'最強'って肩書きは譲りたくないんだ」
「徹底してるタカ、素敵」
「ふふ。頼もしい限りですね。流石、私の愛しい魔術師様です」
若干呆れ気味に言うシェリーと、うっとりとした表情で言うミリエラとセレス。
突然のセレスの登場で、混乱に次ぐ混乱で場が若干カオスになりつつも、こうしてタカがセレスに対する信頼と恩義を露にすることで、カイト少年の警戒心も薄れ、段々と和やかな雰囲気になっていき、一同の肩の力が抜けていくのであった。
これは、付き合い自体は短い期間であっても、タカとカイト少年達との間に築かれている信頼関係が本物であるこそなのだろう。