第4話 正規兵になった
第4話 正規兵になった
全く不本意ながら抵抗軍二等兵になってしまった私は、兎川中尉の隊の下で戦うことになった。二等兵と言うと、嫌な雑用を押し付けられがちだが、私は一切それらに応じず、自室の中に篭っていた。
配属して早々に嫌われ者となっているようだが、そんなもの私には関係ない。そもそも地球の人間同士が争う場合ではなく、私の理想としては地球連邦政府でも出来ればと思うところである。
その点では、救世主の騎士団が『世界事変』を引き起こし、地球内でほぼ統一された統治機構になりつつあることは、支持できると思っているくらいだ。
「栗希二等兵。いい加減、部屋から出てきなさい」
兎川中尉だ。
「拒否権があるかは分からんが、拒否するよ」
我ながら、堂々過ぎる反抗的態度と思う。
「今日は雑用は押し付けるつもりはないわ。重大な作戦について貴方に知らせなければならないの」
「どんな作戦だ。遂にここにも宇宙人が攻めてきたのか? それは大変だ! 6個の赤く光る目から光線を放ち、それによって私たちを焼き尽くす奴ら……の迎撃か? 」
間違いなく今の発言で、色々と私に対する誤解を生むだろうが、徹夜明けの異常にテンションが上がってしまいつい言ってしまった。
「何を……言ってるの? も、もしかして戦場に出たくなくてわざと変なことを言っているかしら」
なるほど。そうも考えられなくもない。
ともかく、徹夜明けの私は何も考えず無意識に部屋から出た。
「栗希二等兵。明日午前10時より日暮里での偵察任務ため、ここを発つ。ただし午前9時40分にはブリーフィングルームに集まるように。説明は以上よ」
「了解した」
日暮里の偵察か。
私の知る限りでは、日暮里には救世主の騎士団の活動拠点の1つがあったはずだ。救世主の騎士団の関東支部が秋葉原にあるからか(日暮里に関しては北千住に対する睨みか)、そのような拠点が秋葉原の関東支部を囲むように多く設置されているのだ。
「日暮里は、先日の救世主の騎士団による北千住攻撃の出撃拠点でもあり、近い内に私たち抵抗軍が攻撃し、奪取する方針となっているわ」
「なるほど……。逆に日暮里を落とせば北千住への防波堤にもなるかもしれないね」
仮に日暮里を奪取できれば、敵を日暮里に引き付けることもできるだろうから、北千住で直接戦闘になることは少なくなるかもしれない。逆に日暮里を放置すると、北千住に対する前線基地として今後も機能するだろうし、当然、北千住での戦闘も多くなるだろう。
「でも、今回は敵戦力の偵察が任務よ。いつ奪取作戦を決行するかは具体的に決まってないらしいから、ここ北千住での戦闘も減らないかもしれないね」
※
同時刻、日暮里。
「真桐部隊長、先日捕まえた抵抗軍の兵士は皆、秋葉原関東支部への移送が完了しました」
と、中年の男性が報告する。
「そう、ご苦労様。それよりも、先日の戦いで43名が負傷したけれど、支部からの増援は無理そうなの? 」
それに返答するのは、若い女である。名は真桐零華と言い、日暮里を活動拠点とする関東支部第2部隊の部隊長だ。また救世主の騎士団の中では『女男爵』と言う地位でもある。
「それが、『例の作戦』の実行にむけて、関東支部からもかなりの人員が投入されるとのことで、増援は難しいとのことです」
「……そう。仕方ないわね。日暮里は放棄して秋葉原へ引くことにしましょう」
真桐零華がそう言うと、途端に中年の男性は驚いた。
「ほ、放棄・・・・・・するのですか? 」
「そうよ。日暮里にある私たちの戦力だけでは、北千住にある抵抗軍の戦力相手には勝てないわ。それに日暮里は北千住方面からの壁になるかといえば、ちょっと微妙な位置にあるのよね」
真桐零華は戦力的問題点と、日暮里の位置的問題点を理由に、日暮里の放棄を決めたのであった。位置関係については、日暮里を抵抗軍が無視して、関東支部がある秋葉原へ直接的に攻撃ができるからだ。
「現状を考えると、そうなりますかな」
中年の男も、日暮里における状況を理解したようだ。