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「アンジェリカ、、、間違いない、あの子だ」


アークヒルは握ったままのハンカチの切れ端を広げ刺繍の女性を見る。


(なぜこんなところにいるのか。侯爵の邸はここからしばらく離れた場所のはずだ)


一台の馬車が塔の前に着いた。御者が降りて塔の中へと入っていく。


(侯爵家の者か?)


アークヒルと護衛達は馬車の中、塔の周りに誰もいないことを確認し、塔へと近づいた。


御者が塔に入ってしばらくすると先ほど会ったアンナの声が聞こえてくる。


「お止めください。お願いです。アンジェリカ様を連れていかないで!連れていくなら私も行きます!」


「アンナ、これは旦那様の命だ。お前はここに残りなさい。」


「今更どんな命ですか!こんなところに閉じ込めていたくせに!アンジェリカ様の気持ちなんて考えたこともないくせに!」


「アンナ!いい加減にしないか!」


「アンナ、いいのよ。私行くわ。久しぶりに外へ出れるのですもの。10年振りの外を満喫してくるわ。そんな顔しないで」


「アンジェリカ様、、、」


「大丈夫。痛いことはないと思うわ。アンナのこともちゃんと頼んでくるから心配しないで」


「そんな、、、心配なんて、、、」


「わかってるわ。私が心配かけてるのよね。それとせっかく淹れてくれた紅茶飲めなくてごめんなさい。あと小鳥がきたらこれを。アンナにしか頼めないの、お願い」


アンジェリカは御者によってどこかへ連れていかれるようだ。


外へと出てきたアンジェリカと思われる女性は頭に真っ黒なベールを被っていた。アークヒルは国一番といわれる剣の腕をもつ護衛を一人馬車につけることにした。アンジェリカに危険が迫ったときは躊躇することなく守り戦えと言って送り出す。


アークヒルは今の会話からアンジェリカが置かれた大体の状況を把握した。馬車を見送り今にも泣き出しそうなアンナに声をかける。


「アンナ?」


「あなたはさっきの、、、どうしてここに?」


「先ほど連れていかれたのが君のご主人で間違いはない?」


「そ、、そうです」


「名前はアンジェリカ?」


「は、はい、、」


「大丈夫。私達は味方だよ」


限界だったのだろう、アンナはとうとう泣き出してしまった。アークヒルはアンナが落ち着くのを待って話を聞くことにした。




「では侯爵家へ?」


「はい。アンジェリカ様のお父様が呼んでいるといってましたから」


「父上って前侯爵?」


「そうです。10年もほっといて今更呼び出すなんて。それに病弱で外に出れないなんて嘘ばかりです」


「なぜこの塔に入ることになったのか聞いても?」


「それは、、、色が変わったから」


「色?」


「はい。アンジェリカ様の髪と瞳の色は黒ですが、以前は違った色だったそうです。それを気味悪がった旦那様がこの塔へ」


「どんな色だったか聞いてない?」


「私はこの塔でアンジェリカ様のお世話をするために孤児院から引き取られました。アンジェリカ様に会ったときにはもう、、。ですから以前の色はわからないのです」


「ありがとう。辛いことを聞いてしまって悪かったね。大丈夫、君のご主人は私が助けるから」


「お願いします」


アンナはアンジェリカから渡されたハンカチをギュッと握っていた。アークヒルはそれを見せてもらうとそこにはあの青い小鳥が羽を広げて飛んでいた。





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