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今から16年前
アンジェリカが産まれた同時刻、隣の国ザライスコ国では第一王子となる男の子が産まれた。名前をアークヒルといい、黒目、黒髪を国王である父親から受け継いだ。
アークヒルにもまた変化が訪れる。髪と目の色が徐々に薄くなっていく。とうとう6歳の頃には真っ黒だった髪はキラキラと光を反射するような金髪に、瞳は澄んだ青空のような真っ青なブルーへと変化していった。
アークヒルの場合、この変化を神の力を与えられた為だと言われ、それから十年間今まで以上に大切に育てられてきた。
「婚約者ですか?」
「そうだ。そろそろ決めなくては」
「少し考えさせていただけませんか」
「いいだろう。下がりなさい」
アークヒルに婚約者をという話が持ち上がったのは最近のことだった。
「婚約者、、、考えたこともなかったな」
自室に戻りベッドへと腰を下ろすと『コツン』と窓を軽くたたく音がした。
「また来たのか。ほらお食べ」
そこには最近来るようになった小鳥がいた。
「パンくずばかりじゃ飽きるだろう?木の実を潰してみたんだ。食べられるかい?」
小鳥は首を傾げたがわかったのか木の実を食べ始めた。
「本当に美味しそうに食べるね。ふっ。またおいで」
小鳥は飛び立っていった。
しばらくして『コツン』また小鳥がやってきた。
ご飯の催促だなと思い、窓を開けてやると小鳥が何かをくわえていることに気がつく。
「これはなんだい?私にくれるの?」
小鳥のくちばしから白い布切れを取り木の実を窓辺に置く。それを小鳥はせっせとついばんでいた。
しばらく小鳥を見ていたが布切れが気になり広げてみるとハンカチの一部らしい事がわかった。
「どこかでひろってきたのかい?ご飯のお礼かな。ありがとう」
そういってアークヒルが布の裏面を向けたとき
「これは!」
トントン
「失礼します。これを見てください」
「アークヒルどうした」
「これを」
王の前に出すには戸惑われるような薄汚れた布切れを構わず執務机にのせた。
「これは、、どこで」
「小鳥が運んできました。私が神の力を与えられたというなら、婚約者となりうる女性はこの人です」
アークヒルズとアンジェリカの運命が繋がった。
『コツン』
「今日も来てくれたのかい。ほら」
アークヒルが「今日はパンくずなんだ」といいながら窓辺に置いたパンくずを小鳥がついばむ。
「君が彼女のところまで案内してくれたらいいのに。」
アークヒルはかつての自分の色をもつ刺繍の女性が気になって仕方なかった。刺繍なのだから自由に刺すことができる。親愛なる国王の色を使った、たまたま色がなかったから黒で刺したとも考えられる。でも、どうしても気になってしまうのだ。目の前にいる小鳥の色は青。刺繍の黒目、黒髪の女性の頭には青い小鳥がのっている。偶然とは思えなかった。
「父上、これは一体どういうことでしょう」
「アークヒル、こうでもしなければ見つからないだろう」
国王はアークヒルのために国中から年若い黒目、黒髪の女性を集めることにしたのだ。アークヒルの言ったことを決してバカにせず真剣に考えてくれた結果だった。
結果は散々だった。国からの召集内容に第一王子の婚約者選定ではないかと噂が駆け回り、髪を染めてくる者が続出した。髪を染める技術などないに等しいこの国では染めてもすぐにばれてしまう。根本が茶色、毛先まで染まってない、髪全体がまだら。
「この国にはいないのかもしれないな」




