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どうして私の髪は黒いの?


どうして私の目は黒いの?


どうしてみんなと違うの?


どうして?


どうしてここから出てはいけないの?


ねぇ


教えて


お父様、お母様、お兄様、お姉さま、、


どうして、、、


どうして、、、もう会えないの、、、



~~~~~~~


「もういいわ。だっていくらキレイに着飾っても誰に見せる訳じゃないのよ」


「いけません、アンジェリカ様。さぁ、こちらにお座り下さい。髪を結いましょう」


「、、、わかったわ。」


アンジェリカはノーブライト国ウィンレット侯爵家の次女として産まれた。産まれたばかりのアンジェリカはキラキラ輝くような金色の髪に澄みわたる青空のようなブルーの瞳を持つかわいらしい赤ちゃんだった。


特に子供好きであった父親も遅くできた自分と同じ髪と瞳の色を持つアンジェリカを他の子以上に可愛がった。それは問題ではなく兄や姉も小さな妹を可愛がった。アンジェリカは誰からも愛される子供だった。



そんな幸せが壊れていく。いつのころからだったか、アンジェリカの髪と瞳の色が少しずつ変わり始めた。両親はそんなアンジェリカを気味悪く思い、髪と瞳の色がすっかり漆黒に染まったころ家族から離され人目につかないよう侯爵家が所有する領地の奥にあるこの塔にずっと閉じ込められていた。この国に黒髪や黒目かいないわけではなかったが、通常両方の黒は持たない。突然変異ともいえる状況に両親も心が追い付かなかったのだ。


アンジェリカは16歳になっていた。


「アンナ、もう十年になるのかしら?」


「、、、アンジェリカ様」


「どこか遠くへ行ってみたいわ」


「それは、、、」


「ふふっ。そんな顔しないで」


アンジェリカにつけられた侍女はアンナといい、歳はアンジェリカの三つ上だった。孤児院からアンジェリカの世話をさせるためだけに引き取られたのだ。突然家族から引き離されたアンジェリカは泣いて暴れて手がつけられないほどだった。アンナはゆっくりと時間をかけアンジェリカの傷付いた心を癒していった。アンナがいたからアンジェリカはこうして立つことが出来る。アンナはアンジェリカのすべてだった。そして逆も。当然アンナもこの塔を出ることはなかった。厳密に言えば食事の用意等で侯爵家へと入ることはあったが、基本的に塔の中で過ごしていた。


両親はアンジェリカを病弱だと偽り社交界デビューもさせなかった。こんな塔に閉じ込めていても少しは情があるのだろうか。16歳の誕生日にはデビュー用と思われるドレスが届けられた。


「もう、私のことなんて忘れてしまったと思っていたわ。ちっとも嬉しくはないのよ。私って冷たい人間だったのね」


笑いながら言ったがアンナは悲しそうな顔を見せただけだった。




アンジェリカは塔から朝日が昇るのと夕日が落ちるのを見るのが日課となっていた。


「今日は来なかったわね。どこかへいってしまったのかしら」


朝日が昇ると同時に小鳥がパンくずをもらいに来ていたのだが今日はまだ来ていなかった。


「私のことが嫌いになってしまったのかしら。それは、、、少し寂しいことね」


しばらく外を眺めていたが室内へと戻る。塔の中でやることといったら刺繍か読書くらいなものだ。アンジェリカの刺繍の腕は相当なものになっていた。たまに掃除の真似事をするがアンナに止められてしまう。


「本でも読みましょうか」

といって、取り出したのは自分が題材になったような話だった。


「中身も確認しないで私の元へ届けさせるなんて適当すぎない?」

誰に聞かせるわけでもないがアンジェリカは呟く。


定期的に本や刺繍に使う布や糸が届く。こんなもので愛されてるとはもう思わない。期待するだけ無駄なことは早いうちに気が付いていた。


『塔に閉じ込められたお姫様を王子様が助けにきました。めでたしめでたし』


(私なら王子様じゃなくてもついていってしまうわ。その時はアンナも連れていってくれる事が条件ね)



時間が経ち夕日を見ようと窓に目を向けると、いるはずのない小鳥がいた。朝日を見る窓辺は反対側になるからだ。今日は遅かったのねと話しかけようと近付くと異変を感じた。


「どうしたの!ケガをしているじゃない!」


小鳥は寝そべるようにして羽から血を出していた。すぐに手当てをしなければとアンナを呼んだ。アンナは傷口を洗い消毒をする。傷は幸い深くはないようだった。


「アンナ、ありがとう。これを使って」


アンジェリカは礼を言って傷口を縛るため小鳥の刺繍を施したハンカチを渡した。


「こんなに素敵なものをいいのですか?」


小鳥の刺繍を指差して言った。

「いいのよ。ほら見て。このハンカチはこの子のものよ」


小鳥は看病のかいがあったのか傷口は完全には塞がってはいないものの食欲もあり元気になっていた。よほど気に入ったのかいつも小鳥の刺繍のハンカチの上で寝ている。


「ほら見て。新しいハンカチよ。」


小鳥の刺繍を施した新しいハンカチを小鳥の前に広げると羽をばたつかせた。気に入ったようだ。


小鳥がやって来てから数日がたった。別れも近い。が、アンジェリカは窓を開けることが出来なかった。窓を開けて小鳥を外へ出してやることがどうしても出来ないのだ。今日こそはと思うのだが。自分は閉じ込められ塔から出ることはかなわない。自由に飛び立てる小鳥が羨ましかったし、一人は寂しかった。


「だめね。小鳥さんごめんなさい。これじゃ私と同じね。あなたを閉じ込めてるのと変わらないわ。さぁ」


といって窓を開けたが、小鳥が飛び立つ様子はなかった。それをみてほっとしてしまうアンジェリカだった。


「そんなにハンカチが気に入ったの?じゃぁ私と小鳥さんの刺繍はどう?」


そこには小鳥を頭にのせたアンジェリカが刺繍されたハンカチがあった。小鳥は今まで以上に気に入ったようで羽をばたつかせた。


「自分を刺繍するなんて思ってもいなかったわ。今度はアンナをモデルにしようかしらね」





次の日小鳥はそのハンカチと共に消えていた。


「きっともう来てはくれないわ。私が閉じ込めてしまったからね」


「アンジェリカ様、またすぐにご飯をもらいに来ますよ。」


「寂しいわ」


普段は寂しいなどとは決して言わないアンジェリカもこの時は素直な気持ちが出てしまった。


二日たっても、三日たっても小鳥が来ることはなかった。




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