第8話:ご利用は計画的に
第8話:ご利用は計画的に
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「クワーッ!」
おお、鳴き声は完全にカラスだ。そんなカラスだけど1羽1羽のサイズは翼を広げれば2メートルは超えるだろう、かなり大型のカラスだ。
「まぁこんだけの数倒せば経験値もがっつり稼げそうだな!うっしゃぁ、撃ち落してやんよ!」
俺はすぐに[ブロウガン]を連発する。両手の射出口の数は少なくとも各15個はあるから手数も申し分なく、1回の攻撃で4羽くらいは墜ちてくれる。
【ストロードラゴンのレベルが2になりました】
【ストロードラゴンのレベルが3になりました】
【ストロードラゴンのレベルが4になりました】
【ストロードラゴンのレベルが5になりました】
うん、低レベルだから上昇スピードも速いな。幸先もいいし、このまま殲滅できるか?
とは思ってたけど当然ながらそういうわけにもいかない。
「カァァーッ!!」
カラスの1羽がなんとブレス攻撃をしてきた!炎は俺の視界を完全に塞ぎ、元々燃えやすい俺の体に簡単に着火してしまう。
「あついあつい、超あつい!」
「うわっ!?急に燃えた!?」
「[アクア]!」
妹トカゲちゃんが中から消火してくれた。そりゃぁこんなカカシの中で蒸し焼きなんて嫌だろうな。
「消火サンキュー、多分この先何度か火を着けられるかもしれないから、その都度消火をお願い!」
「は、はい!」
うん、いい返事!火対策はコレでOKだし一気にカタをつけてしまおう。
着火ダメージを気にする必要が無くなったのでMPは[ブロウガン]に全振りで迎撃する。カラスの数は着実に減ってはいるが、やはり命中率が芳しくない。
【ストロードラゴンのレベルが6になりました】
【ストロードラゴンのレベルが7になりました】
【称号:固定砲台を入手しました】
お、称号ゲット。心なしか威力も上がった気がするぞ
「ギャァァッ!グワァ!」
カラスの1羽が周りのカラスにギャアギャア喚いている。何をするのかなー?
「ギャッギャ!」
「「カァッ!」」
カラス達が一箇所に纏まっていく。なんか猛烈に嫌な予感がする。今のうちにステータスを確認しておこう。
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ストロードラゴン【ランクE】 Lv7/16
名前:アルフレッド
状態:被服
HP:387/387(+77)
MP:333/333(+43)
ATK:98(+16)
DEF:102(+20)
MAT:209(+19)
MDF:222(+20)
AGI:90(+4)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv5][HP自動回復Lv2][ダメージヘイトLv3]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv5][被服補正Lv3][被服吸収Lv3]
[火魔法Lv2][氷魔法Lv2]
[ブロウガンLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ]*[固定砲台]
補正:[ HP+25%]↑ [ MP+15%]↑ [ATK+20%]↑ [DEF+25%]↑
[MAT+15%]↑ [MDF+10%]↑ [AGI+ 5%]↑
[火攻撃+90%] [火耐性± 0%] [水攻撃+30%] [水耐性+30%]
[氷攻撃+20%] [氷耐性+30%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+20%]
[風攻撃+20%] [風耐性+20%] [土攻撃+20%] [土耐性+20%]
[光攻撃+20%] [光耐性+20%] [闇攻撃+60%] [闇耐性+20%]
[対虫系+10%] [対鳥系+20%] [対獣系+20%]
[対高Lv系-10%]
[取得経験値+60%] [HPMP吸収率+40%]↑
[進化必要レベル-20%]
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ちょ、MAT全然増えてないしAGIの補正量下がってる!あ、[固定砲台]のせいか。MATが増えてないは多分種族的な特徴なんだろう。
カラス達が塊になって俺に突っ込んでくる。なんとか迎撃しようとするけど、[ブロウガン]に貫通性能はないので、表面のほんの一部だけしか削れない。
そのまま俺の体にカラスの大群がまとわり付いてきた!
「カァッ!」
「ギャァアッ!」
「くそっ、離れろっ」
手足をバタバタさせて振り払おうとするけど、カラス達はしつこく付き纏い俺の体とHPをどんどん削り取っていく。
このままじゃこっちがカラスの餌になってしまう…正直、コレはしたくなかったけど、他に方法が無い!
「…今から俺の体に火を着ける。ギリギリまで水魔法は使わないでくれ」
「そ、そんな無茶苦茶な!」
「そうでもしなけりゃ俺はバラバラにされて中のお前らはカラスの餌になるんだぞ!死にたくないならそうするしか残ってないんだよこっちは!」
ほんの一瞬静かになったが、兄トカゲの心は決まったようだ。
「わかったよ。どうしてもやばくなったら消火するからね!」
「それでいい」
俺は[火魔法Lv2]で習得した[ファイアブレス]を発動する。火力自体は大道芸人がやるようなものと大差ないのだが、幸いこっちには[火攻撃+90%]の補正が付いてる。実質2倍近い火力だ。
自分の全身に火を着け、大きく暴れ回る。カラス達もいきなり俺が燃えるものだからいい感じに怯んでくれた。
「よし、距離が開いた、[ブロウガン]!」
「もう限界…[アクア]」
【ストロードラゴンのレベルが8になりました】
【ストロードラゴンのレベルが9になりました】
カラスが串刺しになると同時に、俺の全身に回っていた火が消えた。ちょうどいい、二人にはもう少し仕事をしてもらおう。
「今からアイツらに[ファイアブレス]を見舞うからさ、もし引火したらさっきのように消火してくれ」
「は、はい…」
妹トカゲちゃんにも可愛らしい声ながら魔法に随分助けられてる。ここは男見せないとな!俺は[ファイアブレス]を発動しながら、お決まりのセリフを叫んだ!
「汚物は消毒だーっ!」
【称号:火炎放射器を入手しました】
【称号:高性能カカシを入手しました】
称号の補正も相まって、[ファイアブレス]の威力が大幅に上がってくれた。たまに口元に引火するけど、その度に[アクア]で消火してもらう。
【ストロードラゴンのレベルが10になりました】
【ストロードラゴンのレベルが11になりました】
【ストロードラゴンのレベルが12になりました】
【ストロードラゴンのレベルが13になりました】
今のブレスで7割近く相手の戦力を削れたのは嬉しい誤算だ、このまま一気に押し切ってしまおう!
「うおおおお!これで終わりだああぁぁ!!」
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【ストロードラゴンのレベルが16になりました】
【ストロードラゴンからトロイドラゴンへの進化が可能になりました】
「はぁ…はぁ…」
俺の受け持っていた畑はすでに焦土と化し、カラスの死体があたり一面に散乱していた。
HPもMPも、残り2割を切っていた。あぶねぇ…
なんて一息ついていたら俺に仕事押し付けてきたあのデブがやってきてしまった!
「さて、カカシはちゃんとしてくれたかな?」
「やべぇ、オッサン来ちまった!」
あのデブのことだ、こんな惨状見たらいきり立つに決まってる。
「おい、首尾はどうだ――アイエェェエエェ!?おいカカシ、これは一体どういうことだ!」
ほらぁやっぱりキレたぁ!もう名前でも呼んでくれない!
「首尾も何も、一晩中カラスの魔物と戦ってましたよ!あいつらブレス吐くから畑もこんなことに――」
「ええい!ただのカカシの分際で言い訳なんぞいい、どうせその魔物はお前が呼んだんだろう。クビだクビっ!二度とその面みせるな!」
――オッサンの超理論が炸裂し、俺は解雇となった――
この状況は非常にまずい、このままだと後6日は路頭を彷徨うことに…
「災難だったな、アル」
「イフ!」
「すこし気になって様子を見に来たが…また凄いことになったな」
「言うな…」
イフが来てくれたおかげで最悪の事態はなんとか回避できた。いやぁ、お犬様さまさまだな!街道を歩いていると、後から来たローズとも合流した。
「アル、1週間の予定じゃなかった?」
「クビだよクビ、大量の魔物に立ち向かったのにあいつらのブレスで畑は全滅。あとはお察しください。」
後から聞いた話、ローズも全く収入が無かったらしくオッサンをしばき倒したらしい。まぁ、あのデブなら殴られたところでどうって事無いだろう。
「そうだアル、魔物を倒したって事はレベルも結構上がったんじゃない?」
「お、そうだ!進化も出来るぞ!」
「楽しみだねぇ、さっそくウチに戻ろうか」
「おっと、その前に」
危うく忘れるところだった、あいつらを出してやらないとな。
俺が体を開くと、中からリザードマン兄妹が転がり出てきた。ちゃんと両手にはオッサンの野菜が抱かれている。
「あぅ…」
「お、お前ら誰だ!?警備隊に突き出すのか!?」
ローズは困ったように頭を掻く。
「うーん…アルはクビになったし、あのデブに引き渡したところで解決する問題があるわけでもないしなぁ」
しばらく考え込んでいたが、彼女は「ま、いっか」と顔を上げた。
「ひとまずは保留って所だね。すること無いならウチに寄ってく?」
意外な提案に二人とも目を丸くしていたが、一応ローズについていくことになった。
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「さて、始めるか」
ローズの家に戻った俺は早速進化を始める。
【ストロードラゴンからトロイドラゴンへ進化しますか?】
うっし、進化するぞ!名前から予想するに、多分子供が乗るような木馬だと踏んでいる。
おれの全身に力が漲り、徐々に大きくなっていく。ん、大きく…?
「ろ、ローズ、すっごい嫌な予感がする」
「え??」
今の身体より大きな木馬といったらそれこそ「トロイの木馬」並みの大きさしか予想できない。このまま室内にいたら…
「やばい、出られない」
「お、おいアル…もしかしてこの家より大きくなるのか…!?」
イフも狼狽しきっている。
「あ、あ…ダメ、でっかくなっちゃう…」
「ローズッ!すぐにここから出よう!」
「ああ、なんてこったい!」
二人が家から飛び出すと同時に、俺の体は天井を破ってしまった。リザードマン兄妹は震えながらその様子を見ていた。
【トロイドラゴンへの進化が完了しました】
【スキル:念動力Lv6を取得しました】
【スキル:痛覚軽減Lv6を取得しました】
【スキル:被服補正Lv4を取得しました】
【スキル:被服吸収Lv4を取得しました】
【スキル:ダメージヘイトLv4を取得しました】
【スキル:火魔法Lv3を取得しました】
【スキル:氷魔法Lv3を取得しました】
【スキル:HP自動回復Lv3を取得しました】
【スキル:ブロウガンはスキル:バリスタLv2に統合されました】
【スキル:ロングダッシュLv1を取得しました】
【称号:解体業者を入手しました】
【称号:戦車を入手しました】
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「なんかもう色々とすまんかった」
俺は大きくなった木製の身体を精一杯かがめて土下座する。今の俺は高さだけでも10メートルを越すまでになり、翼を広げなくても4メートル、広げれば15メートルは確実に横幅を取ってしまう。
俺の体は4足歩行の竜のような姿になり、すべてのかかと部分には大きめの車輪が付いている。あと、見た感じ頭身がかなり上がってるな…8頭身はあるんじゃないか?
と、色々と自分の身体を見回しているとある事に気付いた。今までと違って眼球が動くようになっているのだ!
今まではいわゆる「チラ見」が出来ず不便だったが、これで周囲を見渡しやすくなった。
「ま、まぁ…ここまで大きくなるなんて誰にも想像できなかったしさ、仕方ないよ」
「それにしてもデカいな…」
「うわああ!何だあれ!?怪獣が現れたのか!?」
まぁ「ゴゴゴ…」とかの効果音が一番似合いそうな登場しちゃったしなぁ、怪獣扱いされるのも無理ないか。
【称号:怪獣を入手しました】
「それよりもさ、アタシ達の住むところを確保しないとねぇ」
そうだ、ローズの家は粉々になってしまい、建て直すのも不可能だろう。
『アルさん、そんなあなたに朗報ですよ』
お、ロンデラか。朗報って何?
『実はアルさんの胸部、開くんですよ』
ん、開く?ちょっと試してみよう。
胸部を開けるイメージをしてみると、両前脚の付け根…胸の辺りから輸送機の扉のように上下に開閉した!
「へぇ、そこから中に入れるようになってるんだねぇ。また珍しいもの見せてくれるじゃないか」
『そこから中に入れます。ちなみに、中に入っている間には[被服補正][被服吸収]スキルの対象になりますよ』
「よし、そうと決まれば…ローズ、イフ」
そこまで言ったところで二人もどうすればいいかを把握してくれた。
「んじゃアル、少し待っててくれるかい?荷造りだけでも済ませてくるよ」
「何ともダイナミックな引越しだな」
「お前らはどうする?」
「え…私達ですか…?」
妹トカゲちゃんは兄のほうをちらりと覗くと、もう片方は頷く。
「もし良かっただけど、ボク達の集落に帰らせてくれないか?道案内はするよ」
「だ、そうだ。どうするローズ?」
荷造りを終えたローズは即決で快諾してくれた。
「ああ、外に出るならアテはあるに越した事は無いしな。案内頼んだよ」
「うっし、そうと決まればなる早で出発しよう。夕方までには目的地に着きたいし、距離が分らない以上出発は早い方がいい」
俺の胸の開口部からローズ、イフ、リザードマン兄妹が乗り込む。
感覚からして、どうやら俺の内部は二層構成のようだ。
一層目は俺の胸部から乗り込んだ所で、天井高は3~4メートル程。二層目はロフトの様な構造で、天井高は1メートル程しかないが、さらに上に伸びる梯子から、俺の背中のハッチを通して外に出られる仕組みだ。多分俺、子供には人気出るだろうな…
「アル、こっちの準備できたぞ」
「全員乗った?んじゃ、出発するぞー」
イフがGOサインを出したので、[念動力]を動力にして俺は前進する。普通に歩くよりはMP消費も少なくて済みそうだな。
ローズ家の跡地を背に、俺達は街を発った。
うん、これからは進化は屋外でしよう。ホント今更だけどさ…
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トロイドラゴン【ランクD】 Lv1/24
名前:アルフレッド
状態:積載
HP:607/607(+157)
MP:402/402(+52)
ATK:168(+48)
DEF:162(+42)
MAT:240(+40)
MDF:288(+48)
AGI:126(+6)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv6]↑[HP自動回復Lv3]↑[ダメージヘイトLv4]↑
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv6]↑[被服補正Lv4]↑[被服吸収Lv4]↑
[火魔法Lv3][氷魔法Lv3]
[バリスタLv2]↑
*[ロングダッシュLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]
*[火炎放射器]*[高性能カカシ]*[解体業者]*[戦車]*[怪獣]
補正:[ HP+35%]↑ [ MP+15%] [ATK+40%]↑ [DEF+35%]↑
[MAT+20%]↑ [MDF+20%]↑ [AGI+ 5%]
[火攻撃+110%]↑ [火耐性-20%]↓ [水攻撃+30%] [水耐性+30%]
[氷攻撃+20%] [氷耐性+30%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+20%]
[風攻撃+20%] [風耐性+20%] [土攻撃+20%] [土耐性+20%]
[光攻撃+20%] [光耐性+20%] [闇攻撃+60%] [闇耐性+20%]
[対虫系+10%] [対鳥系+40%]↑ [対獣系+40%]↑ [対構築物系+20%]
[対高Lv系-10%]
[取得経験値+60%] [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]↑
[遠距離射程+40%]↑
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称号詳細――
[固定砲台]:その名の通り、その場で敵を射撃で迎え撃てば獲得できます。マイナス補正はご愛嬌。[AGI以外のステータス+5%][AGI-5%][遠距離射程+20%]
[火炎放射器]:世紀末の名台詞を吐きながら火炎放射をすることで獲得できます。やはり名作の力は大きいですね[MAT+5%][火攻撃+20%][遠距離射程+20%]
[高性能カカシ]:カカシの域を超えた、高性能なカカシ。んんwwwただの高性能なカカシですなwww[対鳥系+20%][対獣系+20%][火耐性-20%]
[解体業者]:民家を一撃で粉々に…他人の家だったら刑事裁判モノですよきっと![ATK+10%][対構築物系+20%]
[戦車]:人を乗せて戦場を駆ける!ただ、兵装が全然物足りないのですが。[HP+10%][ATK+10%][DEF+10%][MDF+10%]