第7話:爬虫類系のキャラはなぜか風当たりが強い
第7話:爬虫類系のキャラはなぜか風当たりが強い
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「ただのカカシですな」
「イフ、それただ言いたいだけだろ」
俺の外観を鏡でチェックしてみるが、見事なまでにカカシだ。頭部は布で包まれ竜のそれを模し、インクで描かれた顔は目が点になっていて愛嬌がある。上半身も竜の形をしてはいるが農民が着てそうな長袖の茶色い服を着てご丁寧に軍手もつけている。
下半身も深緑のズボンを履き茶色の革靴。尻尾は何も着せられておらず、藁の身体が露出していた。これはまさしく…
「んんwwwただのカカシですなwww」
「結局お前も言うのかよ!」
そりゃぁこんな見事なまでにカカシしてたら言っちゃう。
「[ブロウガン]のスキルか、どんなものかな?」
とか何となく考えながら[ブロウガン]のスキルを発動すると、俺の手首の袖と軍手の隙間から見える藁から何かが飛び出した!
「危なっ!」
筒状の断面をしている藁から人間の小指ほどの太さの針が、イフの足元に突き刺さった!おおぅ、今のは悪かった。
「[ブロウガン]って要するに吹き矢だ、それ位予想しろ脳味噌カカシ!」
の、脳味噌カカシって。またすごいこと言ってきたなイフ…
「ま、これならレベル上げも出来そうだな」
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「ただいまー…ってうわっ!」
「おかえりー」
「アル、カカシになったのか」
「うん」
「よし、なら仕事だ」
え、ちょっと待って何その流れ?いきなり仕事ってどゆこと?
「よしアル、付いてきて」
ローズに付いて行くと、だだっ広い農場に到着した。ローズが近くのベルを鳴らすといかにも成金ですと言ってる服装をしたデブ…ふくよかな中年男性が歩いてきた。
「これはこれはローズさん、お待ちしておりました。こちらに来られたという事は害獣駆除の目処が立った、というわけですかな?」
「ああ、こいつが番をしてくれるよ」
そういってローズは俺の背中をぐいぐい押す。ちょ、もしかして――
「では、契約通り1週間設置した後に効果次第で契約の延長を視野に入れるということで」
「ああ、それでいいよ」
マジか。
「ちょ、ローズ」
「ひとまずは使った経験値分はしっかり働いてもらうからね」
うぐぅ、やっぱりバンクに頼りすぎるのはよろしくなかったか。
「じゃ、後は任せたよ」
「じゃぁな、アル。また来週」
そういって二人ともさっさと帰ってしまった。この薄情者ーっ!
「召喚獣のアルだったか、さっそく一晩この畑を守ってもらうぞ。最近は結構な数が被害にあってるのでな、私の農場を荒らす輩に制裁を食らわせてやれよ!」
そのままオッサンもどこかに行ってしまった。こ、心細いんですけど。
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時間は流れ、ついに初日の夜に差し掛かる。
【称号:夜間警備員を入手しました】
お、称号までくれるんなら今夜はしっかりと警備させてもらうぞ。
「ほら、こっちだよ」
「うう…暗くて怖いよぉ…」
「大丈夫だって、ボクがついてるからさ」
「う、うん」
少し遠くで二人組の話し声が聞こえてきた。そっと接近してみる。
「持ち帰れるだけにしておけよ、見つかったらそれを置いてでも逃げるんだ」
「ホントに大丈夫かなぁ?」
二人の姿が見えてきたが、太い尻尾、鱗に包まれた表皮、それにトカゲの頭。
リザードマンか、初めて見たな。けど二人とも着ている服が相当みすぼらしい。
『アルさん、この世界についてなのですが』
お、何?
『この世界での獣人の社会的地位はあまりよろしくありません。差別の対象になったり、奴隷にされたりしています』
と、なるとあの二人も結構きつい生活してるんだろうな。
『そうですね…』
ロンデラの声が少し悲しそうだ。とりあえず、二人の様子をもう少し観察してみよう。
「兄さん、ドラゴンがいるよ!?」
「ああ、あれはカカシだから大丈夫」
「…動いたりしないよね?」
「藁で出来た人形だから大丈夫さ。さぁ、早く盗って帰ろう。父さんを心配させちゃいけない」
残念だけど、俺は動くし仕事だから帰しもしない。ゆっくりと二人が後ろを向いている間に接近していく。盗った野菜は家族に分けるのだろうが、それをただ見届けるだけでは[ただのカカシ]だからな。しっかりと「仕事」はさせてもらおう。
俺は藁同士が擦れて音が立たないようにゆっくりと歩み寄っていく。
「に、兄さん…今あのカカシ動いた」
「なにビビってんだよ、カカシが動くわけないだろ」
まずい、リザードマン妹が勘付き始めた。そろそろこっち側から確保したほうがよくなってきた。こっそり近づいて…
「誰かに尾けられている…?」
「兄さん、怖いよぉ…むぐっ!?」
はい、妹トカゲちゃん確保。俺のカカシボディ、なんと身体が縦に裂け彼女を丸ごと食べてしまったのだ!なんていうか…そう、アイアンメイデンみたいな感じで。
「あれ…さっきまでいたのに!?」
ではでは、兄ちゃんトカゲも確保しますか。そっと歩み寄ろうとしたが、運悪く近くの草むらに引っかかってしまい大きくガサガサと鳴っってしまった。
「だ、誰だ――って…か、カカシ!?」
ごめんねー、驚かせちゃって。ちょっとおにいさんと一緒にお出かけしようか。
【称号:ホラーカカシを入手しました】
「う、うわああああ!?[アクアカッター]!」
「いてっ」
おうふ、兄ちゃん魔法使えたのか。俺の左肩ちょっと切れちゃったよ。実際全然痛くないけどな!
「お…おおお前、俺の妹をどこへやった!」
「ひとまず確保してから。話はそれからね」
「ちくしょぉっ!」
兄ちゃんトカゲは[アクアカッター]を連発する。俺の体はかなりの量が削れたけど大したダメージにはならず、無事に確保することが出来た。
いやぁ、[HP自動回復]さまさまですな。俺の体内で兄妹も無事再会できたようで何よりだな。ふひひ…
「に、兄さん」
「ぶ、無事か!どこか怪我は!?」
「し、してないよ…ごめんなさい、私がしっかりしてたら…」
「いいんだ、お前が無事ならそれでいい」
兄弟愛ってやつか。いいねぇ…まぁ、だからといって他人の野菜を盗んだらダメだけど。
初仕事を終え、意気揚々と持ち場に戻っていると、遠くにやけに黒い雲が見えた。
「黒い雲…てか見えないはずなんだけどな、こんな夜中に」
近づくにつれて、その雲は大きくうねり俺の受け持っている農場に向かって来た。なんだろ、アレ…
さらに近づくと、それは鳥の大群だということがわかった。
「ははん、鳥さんの分際で畑を荒らそうってか?だが残念、俺がいるからにはそんな事させないぜ!」
なんて言ってた1分前の俺を殴りたい。持ち場に戻った時にはすでに200羽ほどのいわゆるカラス…なんだけど、カラス型の魔物の大群に囲まれていた。
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ストロードラゴン【ランクE】 Lv1/16
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:300/300(+50)
MP:299/299(+39)
ATK:80(+10)
DEF:84(+14)
MAT:209(+19)
MDF:199(+9)
AGI:88(+8)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv5][HP自動回復Lv2][ダメージヘイトLv3]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv5][被服補正Lv3][被服吸収Lv3]
[火魔法Lv2][氷魔法Lv2]
[ブロウガンLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ]*[夜間警備員]*[ホラーカカシ]
補正:[ HP+20%]↑ [ MP+15%] [ATK+15%]↑ [DEF+20%]↑
[MAT+10%] [MDF+ 5%] [AGI+10%]
[火攻撃+90%] [火耐性± 0%]↓ [水攻撃+30%] [水耐性+30%]
[氷攻撃+20%] [氷耐性+30%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+20%]
[風攻撃+20%] [風耐性+20%] [土攻撃+20%] [土耐性+20%]
[光攻撃+20%] [光耐性+20%] [闇攻撃+60%]↑ [闇耐性+20%]
[対虫系+10%] [対鳥系+20%]↑ [対獣系+20%]↑
[対高Lv系-10%]
[取得経験値+60%] [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]↑
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称号詳細――
[夜間警備員]:深夜の警備ならお手の物。といっても身体に無理が無いように努めてくださいね[HP+5%][ATK+5%][DEF+5%]
[ホラーカカシ]:B級ホラー映画に出てきそうなカカシ。実際こんなカカシ出てきたらB級どころの怖さではないんでしょうけど…意外と補正量は大きいです[HPMP吸収率+20%][火耐性-10%][闇攻撃+10%][対鳥系+10%][対獣系+10%]