第13話:(G氏)「わらわの為に働くのじゃ!反対意見は認めんぞ!」
この先5話ほどの更新は短めの話が続きます。
第13話:(G氏)「わらわの為に働くのじゃ!反対意見は認めんぞ!」
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俺たちが真っ暗の通路を突き破った先には、風竜神がいた。
いや、俺だって自分が何言ってるのか分からないよ?けど実際にいるんだから仕方ないと思うんだよね。
「もしやわらわを助けに来てくれたのかの!?」
「え、あの、えっと」
口調は年取った感じだけど声が異常に若い、人間からすれば多分まだ中学生程度の歳っぽい雰囲気がある。
「お願いじゃぁ、助けてくれんかのぅ…」
そんな潤んだ瞳で見られると――うう、細長いはずの竜の瞳がまんまるになってるし。
「とりあえず何したらいいのかな?」
「わらわについているこの得体の知れぬ枷を早く外すのじゃ!もうかれこれ500年、この状態でずっと我慢しておるのじゃ、頼む!」
巨大な飛竜がガチャガチャと身に着けられている枷を鳴らす様はかなりの迫力だな、けれどそれだけ必死だって事も窺える。
けど…外すにしても巨大飛竜を捕える枷なんて、強度は相当なものだろう。少なくとも今の俺ではそう簡単に外せる代物じゃないのは確かだ。
「ところでおぬしらは一体誰なのじゃ?わらわが治めていたこの地におぬしらのような種の竜はいなかったと思うのがのう…」
「えーと、俺達は――」
気絶から覚めたアンジーを見ると『何でもいいだろ』なんて目で言ってる感じがする。ひとまず無難な受け答えだけにしれおこうかな。
「お隣のヨルムンガンディアから来た行商竜?です、以後よろしく」
「疑問系なのが気になる所じゃが…しかしそのような所から顔を出しているという事はおぬしら、シクとシキに話を聞いたのであろう!?」
シクとシキ?ああ、そういえばちょっと前に聞いたような気が――
「いえ、ここに来たのは単なる偶然です。セントドレイク側にコンタクトはまだとっておりませんので」
急に俺とアンジーの間から顔を出したミスティが話を続けてくれた。てか急に狼の顔が壁から飛び出してくるのって思った以上にシュールな光景だな、風竜神も俺たちが出てきたとき同じような気分だったんだろうな。
「なんじゃ、つまらんのう…」
「あーそうそう思い出した!確かセクとサキが興した国だったか?」
「ほほう!そこの白いのは知っておるのかの、もしやおぬし――」
興味津々な視線を俺に突き刺してくる風竜神も中々の圧力。ちょっと返答ミスったかなぁ、どう答えるのが無難だったりするのかな?無闇に俺が転生者だってバラすのも良くないだろうし…
「歴史オタクかの!?」
いや違う。けどここで変に否定しても逆に怪しまれそうだ、ここは素直に肯定しておこう。
「うむ、歴史は良いぞ!後学の為にもこの世界の成り立ちを探求するのも――おっと、話が逸れたの。いや実はのう、もしもわらわに何かあった時はギレット高地の代弁者を通してあの双子王に報せが届くようにしておったのじゃが…
500年近く経っても助けが来ぬあたり、あちら側でも何かよからぬ事があったようじゃの」
そういえば俺達が通ってきた穴、やたら直角に曲がってたし方向を見極めながら掘っていたとするなら――
あの穴はちゃんと風竜神を助け出すためにセントドレイクの奴らが掘っていたのかもしれない。
『俺達がここに来るまでに通った穴の入り口には誰もいなかったぜ、すでに廃村だったな』
「なんという事じゃ…」とがっくりうなだれる風竜神。頼みの綱を断たれた彼女の目にはうっすらと涙が…と思ったすぐ後にさっきと同じまんまるの瞳で俺達を見つめてきた。
「誰か双子王にこの事を知らせてくれんかのぅ」
うう、そんな目で見られても逆に困るぞ。
「きゅぅーん…」
そっ…そんな甘えた声出されたらもう断れないじゃないかっ!正直甘えた仕草されてもその姿から溢れ出す風竜神の圧力が大きすぎて逆にそのギャップがプレッシャーになってる。そんな状態で断ったりした日には何をされるかわかったものじゃない!
「どうする?」
『俺はどっちでもいいぜ』
「テレジア様は「調べてきて」としか言っていませんでしたし、無闇に行動しても問題が増えるだけでしょうね」
相談してる最中に風竜神が「鬼!」とか「竜でなし!」とか泣きそうな声で言ってるけど…俺、やっぱり捕まってるのを目の前にして回れ右出来るほどのメンタルは持ち合わせてないな。
「えーと…風竜神様?ひとまずセントドレイクに応援を頼んでみますので、もうしばらく我慢して頂けたらいいのですが…」
その時の彼女の色めき立ちようといったらもうね、あれほど嬉しそうな顔をする奴は初めて見た気がする。
「今はおぬしらだけが頼りなのじゃ、よろしく頼む…おっとそうじゃ、餞別にこれをやろうぞ!」
ガブラスタが長い首を曲げて肩口に生えた小さな羽根を1本抜いて俺に渡してきた。どれどれ、どんな効果が付いてるのかな?
【風竜の飾り羽:レア度R:MPコスト70:スロット揃い時効果[1個:全パラメータ+30% AGI追加20%(30秒)
2個:全パラメータ+30% AGI追加20% スキル:[ロングダッシュLv3]一時解禁(45秒)
3個:全パラメータ+50% AGI追加50% スキル:[ロングダッシュLv5]一時解禁(60秒)]
一部の風竜種に生える小さな飾り羽。装備した者のAGIを20%加算すると同時にスキル[ロングダッシュLv2]を付与する】
「ありがとうございます、風竜神様」
「その過ぎた畏まり方どうにかならんのかのう…まあよい、双子王に宜しく言っておくのだぞ!」
見送るガブラスタを背に俺達は壁から顔を抜いて元来た道を戻り始めた。さてここからセントドレイクまで何日掛かるのか、そもそもここから無事に抜け出せるのかが怪しいところだ。
「では急ぎましょう。わたくし達が侵入した事はほぼ相手側に知られています、警備が厳重になる前になるべく早くここから脱出しなくては――」
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「さっきから騒々しい、一体何があったのかしら?」
アル達がセントドレイクへ出発した数分後に地下牢の階段から一人の女性が下りてきた。背丈は低くツインテール、まるで風竜神の写し身のような出で立ちをしている。
身の丈近くもある大きな杖を突きながら風竜神が囚われている格子の前に立つと、その杖は風竜神を繋いでいる枷と連動して仄かな光を放つ。
「ふん、独り言じゃ。貴様なぞに関係など無いわ」
「あなた、今それを言える立場だと思って?」
そう言って持っていた杖で大きく地を突くと風竜神を捕えている枷から電撃が走り、風竜神もたまらず苦悶の声を漏らした。
「があぁっ…」
全身の力が抜けたようにがっくりと崩れた彼女はその人間を怨めしそうに睨みつけるが、人間の方は格子越しに余裕の表情を浮かべている。
「人間風情がよくもまぁ、そのような忌々しい物を作ったものじゃな」
「ふふ、すべてはわれらの崇高なる機竜神様の賜物です。機竜神様は私達に永遠の栄光と発展を齎し、あなたたちのような野蛮な竜種に打ち勝つ術を授けてくださいました」
「――500年経って今初めて聞いたのう。貴様ら人間の口から機竜神の名が出るとは思いもしなかったぞ」
ふと、真っ直ぐ並んだ大小3つの穴が仰々しく語る彼女の目に入った。地下牢であるこの場にふさわしくない、その不自然に真っ直ぐ並んだ穴は風竜神の巨躯に負けずその存在感を発揮している…
「…何アレ」
格子を開けて穴に近付き覗き込むと、何も見えないものの風が通り髪が揺らいでいる。
「――この穴、何かしら?」
「知らんのぅー?」
とぼける風竜神を一睨みすると、先程よりも大きくその杖を地に突いた!ひときわ大きな光が風竜神を包み、その体が強烈な痛みで一気に捩れる。
「ぐああぁぁああぁぁっっ、がああっ!!」
「トカゲ野郎の隊は大昔に叩き潰したってのに、一体どうやって…」
「ニーナ様!緊急事態です!!」
「うるさいぞヘンドリクセン!風竜神様と呼べ!」
「も、申し訳ありません。しかし昨夜、二対の翼を持つ獣竜が領内に侵入したのでその報告を――」
「このたわけが!」と怒号と共に持っていた杖で地下牢に駆け込んできた男、ヘンドリクセンの顔を強かに殴りつける。大きく吹き飛ばされた彼は派手に倒れこむが、すぐに持ち直しその女性…ニーナの前に跪いた。
「昨夜来たと言いながらなぜその報せを今言うのかしら。一体何時間経ったと思って?もういいわ、自治区全域に緊急配備!その獣竜は見つけ次第すぐに殺しなさい!」
「はっ!」
ヘンドリクセンは短く返事するとすぐに地下牢から駆け上がって見えなくなった。その様を見ていた風竜神は嘲るようにニーナへと語りかける…
「ふん、無能な部下を持つと偽風竜神も大変じゃのう。どれ、本物の風竜神であるわらわが教鞭をとってやってもよいのじゃぞ?」
「黙れ…黙れ黙れ黙れッ!!お前はもう黙っていろ!!」
「あぐっぅ…うぅぅ…ああああっ!!」
逆上し何度も杖を突き、地下牢に風竜神の断末魔が響き渡る。ぐったりとした風竜神の意識は徐々に消え、身を縛っている枷に身を預けるように倒れこんでしまった。
「(悔しいが、わらわの命運はおぬしらの双肩に掛かっておる。くれぐれも頼んだぞ仔竜達よ――)」
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入ってきた通路を抜け、俺達は双子王に協力を仰ぐべくセントドレイク国に向けて歩を進める。とはいえまずはここフーリエ自治区から脱出する事が先決だし、ミスティに頼んで急いでもらうことになった。
まぁ昨日の様にバテる事は無いだろう、高地ということもあってか吹き抜ける風も比較的涼しいし太陽も今は雲にうっすら隠れてる。絶好の脱出日和とはまさにこの事と言っても過言ではないな。
「ミスティ、ここからセントドレイクまではどれ程かかるんだ?」
「そうですね…今わたくしは目印となるアレク連峰に向かっています、そこまでは「何事も無ければ」日没を過ぎたあたりに到着します」
ああ、言っちゃった。「何事も無ければ」…これでもう何かある事が確約されたも同然、無事に生きて出られるかどうかすら怪しくなってきたぞ?
『何はともあれ時間が無ぇんだ、邪魔する奴は片っ端からブッ飛ばせばいいだけの話だろ』
「そうですね、今回は風竜神のためにも悠長には構っていられません。急ぎで行きますのでロープはしっかりとお願いします」
「今回はミスティが持っている方が良さそうだし…さっきもらった飾り羽、あれミスティが持っててくれよ」
「わかりました」とミスティの首もとのモフモフに風竜の飾り羽を埋め込むと、昨日よりも更に速いスピードで草原を駆け出した。
うぉ、想像以上に加速がすごい、あっという間にあの大樹をも通り過ぎてるし。
あまりの急加速に俺もアンジーも掴まるのに必死で声を出すことも出来ない!やっべぇ、「風になる」って話をよく聞くけどこういう事だったのか!もしこれで検問とかがあったら即アウトのレベルだなコレ。
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「ふあぁ…あー、今日も退屈…もとい平和だなぁ」
ガスタの里から北西15キロ地点、草原に建った小屋の窓から一人の警備兵が欠伸をしながら午睡に浸ろうと大欠伸をしている。風に揺られた草がさわさわと心地良い音を立てて睡魔を煽る…そんな中小屋の扉を勢い良く開けてもう一人の警備兵が駆け込んできた!
「風竜神様から緊急配備の指令が出たと転移急使から連絡が入ったぞ!」
「緊急配備なんて数百年前にあったっきりだと昔話で聞いてたけどさー、まさか今来るなんて思いもしないよね」
「ともあれ一番速い[転移魔法]使いの急使を寄越すんだから余程の緊急事態だって事には変わりないぞ」
「だね。…で、緊急配備って何するの?」
「確か小屋の中にマニュアルがあったはずだよな」
小屋の壁には…自然豊かなガスタの里には相応しくない、重厚な機械仕掛けのパネルが壁一面に据え付けられている。その操作方法が書かれたマニュアルを警備兵達は真剣に睨むのだがすぐにうち一人がその冊子を床に叩きつけた。
「分かるかこんなの!」
「すげぇよなー、何百年も前のアルカニア人はこれ普通に使えてたんだもんなー…ポチっとな」
パネルの隅に配置されていた少し大きめの赤いボタン、それが押されると小屋の前方に堅固な金属質の壁が地下から大きな音を立てながら少しずつせりあがる。
「それにしても何があったんだろうな?」
「さあ、それを知った所で何って話だしさー…――っ!?」
突然、門番達のいる小屋の隣を何かが猛スピードで過ぎ去っていく。巻き起こる突風が小屋を大きく揺さぶり、その中を駆け抜ける黒い影に門番達はただただ茫然と見つめる事しか出来なかった。
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『やべぇぞミスティ、あれ見てみろ!』
アンジーが指した先、前方にはなぜか鉄の壁が何も無い草地からせりあがっているのが見える。そもそもここ草原…ていうか異世界だぞ、あまりに機械的過ぎて全然この世界にかみ合ってない、一体この千年で何があったんだ!?
徐々にせりあがる壁はミスティの跳力どころか俺達の翼を使っても超えられる気がしない位に高くなっている。俺達ここから出られるのか?
「これは少々まずいですね、お二竜は翼の準備をお願いします」
そう言った直後に進行方向を急に変えた先、他と比べてまだ低い段階に留まっている壁が前方に見えた。
確かにそれ以外の壁はほとんど上がりきって越えられそうに無いけど…すでにハァハァと舌を出しながら懸命に走るミスティの体力は相当消耗してるはずだ。
「今です、翼を展開してください!」
「よしきた!」『任せな』
昨夜と同じ要領で翼を傾け高度を上げると同時に徐々に壁へと接近していく。近くで見ると予想以上に壁の上がるスピードが速いな、越えられるかどうかは本当に微妙なラインだ。くっ…頼む、越えてくれっ!
「あぅっ!!」
結論から言うと壁は越えられた。ホントにギリギリのラインで越えることが出来たんだけど、越える際に何か鈍い音が背後から聞こえたのは気のせいじゃなかった。ミスティの左後脚が少し変な方向に曲がっているように見えるしそれに…
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ウォルヘイム【ランクC】 Lv18/40
名前:ミスティ・アレクサンダーソン
状態:骨折(中)【60/100】(AGI-70%)
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これは参ったな、やっぱりぶつけた時にやってしまったみたいだ、着地後も痛めた足を引きずりながら駆けるあたりかなり無理が掛かっていると見て間違いないだろう。
[情報解析]先生、骨折治すにはどんなスキルが必要なんだ?
【骨折:その名の通り骨を折っている状態。効果中は骨折箇所に関わるパラメータが大きく減少する。
時間経過によっても回復はしていくが、[治癒魔法Lv4]で習得する[リカバー]によって一定量の回復が可能。
もちろん、うまく接げていない状態で発動すると骨もずれたままで固定されてしまうので注意が必要です】
[治癒魔法]のスキルレベルはまだLv1、今の俺に彼女の骨折を直すのは無理だとしても…応急処置なら出来るはずだ!
自分のポケットから短槍を取り出し、それをアンジーに渡す。…どうしてアンジーかって?アイツの方が腕力あるからだよ!
短槍をアンジーに手頃な長さで折ってもらうとそれを副木にしてミスティの骨折箇所を覆う…覆う――布がそもそも無いな。
ミスティの背嚢から布質なものが無いかを探ってみると、なぜかタオル状の何かが見付かった。仕方ない、一応これ使って足を固定しておこう。
『(ああ、ソレな)』
「(なんでそんな小声なんだよ)」
『(俺があの虎野郎の店漁ってる時な、あまりに綺麗な褌があったもんで背嚢にコッソリ入れといたんだよ)』
ミスティはバテバテの状態で走ってるからなのか気付いてないし…このまま言わないでおこう。
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