第6話:寄生プレイは嫌われるけど、してる方は結構必死
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第6話:寄生プレイは嫌われるけど、してる方は結構必死
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「どらぁ!」
イフが勢い良く腕を振ると、町を襲っていたゴブリンの肉体は簡単に四散していく。おうふ、俺着ぐるみでよかったわ。多分人間だったら吐いてる。
【ウェアドラゴンのレベルが8になりました】
「うぉらぁ!」
イフが勢い良く腕を振り上げると、町を襲っていたオークは遥か上空へ打ち上げられていく。ふんわりと空を舞う豚はまるでUFOに連れ去られているかのようだ。
【ウェアドラゴンのレベルが12になりました】
「そいやっ!」
俺が体内温度を上げると、イフの疲労が少し回復する。その勢いでイフの猛攻は更に加速する。
【ウェアドラゴンのレベルが15になりました】
【称号:効率重視を入手しました】
いやー、経験値って本当においしいですねぇ
「いや、お前は少し位働け」
「いやー、働いてるじゃないですかぁ」
「こんな無いに等しい補正掛けてドヤ顔するよりも[被服補正]のスキルレベル上げて少しは補正量上げろ!」
ん?その言い方だと俺とイフとでスキルの体系が違うようだな。
「残念だけど、経験上俺のスキルレベルは進化しないと上がらないみたいなんだ」
「ゴミめ」
「養分吸ってやろうか?」
「畜生っ!」
その憂さを晴らすかのように、町を襲っていたサハギンをブレスで焼き払い焼き魚を量産していく。なんと、ブレスの際には俺の口とイフの口が連動するように開閉するのだ!何このハイテク。
大分魔物の数が減ってきた所で、市民の一人が街の門を指差した。
「あ、あそこにやたら大きいのがいるぞ!」
門の前には、巨大でぷるぷるした青い半透明のスライムが――
「その程度で!」
イフがブレスを見舞うと、あっという間に蒸発してしまった。
【ウェアドラゴンのレベルが22になりました】
結局、イフのおこぼれだけでここまでレベルが上がってしまった。いやぁ、うまいうまい。
「なぁ、アル」
「何?」
「小説ではこういう時、大体裏で誰かが糸を引いてると思うが…」
確かに、考えてみれば急にいつもの何倍もの魔物が攻め込んでくるなんて考えにくい。となると…
「叩きに行っちゃう?」
「面倒事は少ないほうがいい、先の為にも叩いてしまおう」
「んじゃ出発!あ、イフの鼻が頼りだから頑張ってね」
「ああ、任せろ」
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「どういう事だ、以前の3倍の数を送ったのにほとんど被害が出てないではないか…っ!」
黒いローブに身を包んだ男が苛立った声をあげる。
「くそっ、このままマスターの所へは帰れないどころか新入りにすら足元見られてしまう、せめて――」
黒ローブが言い切る前に、あらかじめイフから分離していた俺はチャック全開でスタンバっておく。
「――あの召喚士だけでも始末しておかないと…!」
「お前がローズに一体何の用だ?」
「誰だおま」
更に言い切る前に、俺は黒ローブを無理矢理体に被せ、イフが中に捩じ込み、そのまま俺はチャックを閉めた。
「な、何だこれは!?」
「これが何かは自分の身をもって確かめろ!」
すかさず[被服吸収]を発動する。しばらくは「なにをするー」とか色々喚いていたけど、直に動かなくなり吸収された。
【ウェアドラゴンのレベルが23になりました】
【ウェアドラゴンのレベルが24になりました】
【ウェアドラゴンからドラゴニャータへの進化が可能になりました】
「危なかった…ローズも狙いに入っていたのか」
イフが深刻な顔で呟く。ひとまずローズの所に戻ったほうがいいな。
「よし、戻ろうぜ!」
「ああ、そうだな」
でもここまで物事が発展してしまったら、この先面倒事は絶対に降って湧いてくる。だから備えは万全に越したことは無いだろうな…
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「ただいまー」
「お、帰って来たね。アル、レベルはどこまで上がったんだい?」
ローズは何事もなさそうに俺に成果を聞いてくる。
「ふふふ、なんと(結構ギリではあるが)最大まで上昇して進化出来るようになったぞ!」
「お、早速見せてくれよ」
「いいよー」
【ウェアドラゴンからドラゴニャータへ進化しますか?】
OK、進化するぞ。それにしてもドラゴニャータか…ん、ドラゴニュートじゃなくて?なんだろ、すっごく嫌な予感がしてきたぞ?
俺の全身は焼けるような熱さに見舞われ、全身が縮んでいくような感覚に襲われた。どこの少年探偵だよまったく…
【ドラゴニャータへの進化が完了しました】
【スキル:念動力Lv4を取得しました】
【スキル:痛覚軽減Lv4を取得しました】
【スキル:被服補正Lv2を取得しました】
【スキル:被服吸収Lv2を取得しました】
【スキル:ダメージヘイトLv2を取得しました】
【スキル:火魔法Lv1を取得しました】
【スキル:氷魔法Lv1を取得しました】
【スキル:HP自動回復Lv1を取得しました】
【称号:叩かれ屋を入手しました】
【称号:クラスチェンジャーを入手しました】
「……」
「えーと――」
イフもローズも、リアクションに困った顔をしている。ど、どうなったんだよ!こっちまで不安になるじゃないか…
そう思って近くの鏡で確認してみると、明るい赤、黄、オレンジの太い横縞模様の「紙風船で出来たような外見の竜のような何か」になっていた。コレって一体何なんだ?
「ああっ!」
この姿を見て何か思い出したのか、イフが声を上げた。
「ピニャータだ!あの…えぇと」
今度はそのピニャータが何なのかの説明に困っている。ピニャータピニャ…あ、思い出した。
「思い出したわ、要するにキャンディー入りの紙風船みたいなものだった気がする」
称号の[叩かれ屋]も、確か目隠しして吊るされたピニャータを棒で叩いてぶっ壊す、日本でいうスイカ割りみたいなものだな。
「へぇ…」
イフがつついていると、爪が立ってしまい俺の腹が裂けた。
「ぐわー!お、俺の腹から内臓があばばばば」
「キャンディーだろ」
「あら、意外と美味しいわね」
ってローズはなに平然と食べてるんだ、逆に怖いぞ。なんてテンパってる間に、裂けた傷は元通り直っていた。
とりあえずステータス確認しておこう。
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ドラゴニャータ【ランクF】 Lv1/4
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:163/165(+15)
MP:219/220(+20)
ATK:66(+6)
DEF:69(+9)
MAT:165(+15)
MDF:157(+7)
AGI:88(+8)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv4]↑[ダメージヘイトLv2]↑*[HP自動回復Lv1]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv4]↑[被服補正Lv2]↑[被服吸収Lv2]↑
[火魔法Lv1]↑[氷魔法Lv1]↑
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服]*[効率重視]*[叩かれ屋]*[クラスチェンジャー]
補正:[ HP+10%]↑ [ MP+10%]↑ [ATK+10%]↑ [DEF+15%]↑
[MAT+10%]↑ [MDF+ 5%]↑ [AGI+10%]↑
[火攻撃+90%] [火耐性+20%] [水攻撃+30%] [水耐性+30%]
[氷攻撃+20%] [氷耐性+30%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+20%]
[風攻撃+20%] [風耐性+20%] [土攻撃+20%] [土耐性+20%]
[光攻撃+20%] [光耐性+20%] [闇攻撃+50%] [闇耐性+20%]
[対虫系+10%]
[取得経験値+70%]↑ [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+20%]
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「ロンデラ、最大レベルがやたら低いんだけど…」
『ああ、それはクラスが変わったからです』
「クラス?」
『はい、アルさんの進化は本来ウェアドラゴンで止まるのですが、そこから別の進化ルートに乗り換えることで更なる成長が可能になります。クラスを変えながら称号による補正で強くなっていく…といったところでしょうか』
「手っ取り早く進化すればスキルレベルも上がるし称号ももらえるし、美味すぎるな!よしローズ、前の経験値バンクで俺のレベル上げてくれ!」
すると一瞬静かになった。
「感心しないな」
冷ややかな目をしたイフの第一声は、俺の心にグサリと刺さる。
「第一、その経験値バンクは俺が進化したときに低いレベル帯で困らないようにするためにローズが準備してくれたんだ。何が悲しくて二度もお前に経験値なぞやらなければいけない?」
「正直なところ、あたしもちょっと気が引けるねぇ」
ローズまでも消極的になってしまっている。
「でもさ、イフがちょっとつつくだけで破れるようなボディじゃぁどうしても戦ってレベルを上げるのに無理が出てしまうし…それに上げるといっても3だけだからさぁー」
猫なで声でローズの革ブーツに縋りつき、靴を舐めるような動作を取る。ローズは大きくため息をつき、ボリボリと後頭部を掻いた。
「ったく…仕方ないね、これが最後だからね」
「さんきゅー!」
うへへ、ゴネ得。
【称号:怠け者を入手しました】
【称号:上司の靴磨きを入手しました】
うるせー!こうでもしないと進化できないんだよ文句あるかっ!?
ローズが前と同じようにオーブを当て、経験値を流し込む。
【ドラゴニャータのレベルが2になりました】
【ドラゴニャータのレベルが3になりました】
【ドラゴニャータのレベルが4になりました】
【ドラゴニャータからストロードラゴンへの進化が可能になりました】
「うっし、早速…」
「ちょっと待て」
「何だよイフ?」
イフはいきなり俺の横っ腹を切り裂いた!
「ぬわーっ!」
「ひとまずそのキャンディーは置いていけ、それ位してもらわないとこっちは大赤字なんだ!」
俺の腹からは際限なくキャンディーが流出していく。ローズはそれをせっせと籠に詰めていた。
【称号:キャンディー工場を入手しました】
「オーケイ、これ位の量を売ればそこそこの生活費は確保できるはずだよ」
ああ、なるほど…そういうことか。まぁそれくらいならむしろ受け入れないと罰が下りそうだ。
「んじゃ、アタシはこのキャンディー売ってくるから留守番よろしくね」
それにしても、召喚士なのに俺のキャンディー売らないと生活費に困るって…俺の召喚士のイメージからどんどん遠ざかっていくな…
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「アル、さっさと進化しろ」
「さっきはちょっと待てとか言ってたくせに」
「いいから」
ワンコがうるさいのでしぶしぶ進化することにする。
【ドラゴニャータからストロードラゴンへ進化しますか?】
OK、進化しよう。
俺の体は大きく膨らむような感覚に包まれる。けど…なんていうかアレだ、中身が伴ってない感じだな。嫌な予感がする…
進化が終わると、俺の体は竜の形をとったカカシに変わっていた。まぁストローって付いてたしこんなものだな。
【ストロードラゴンへの進化が完了しました】
【スキル:念動力Lv5を取得しました】
【スキル:痛覚軽減Lv5を取得しました】
【スキル:被服補正Lv3を取得しました】
【スキル:被服吸収Lv3を取得しました】
【スキル:ダメージヘイトLv3を取得しました】
【スキル:火魔法Lv2を取得しました】
【スキル:氷魔法Lv2を取得しました】
【スキル:HP自動回復Lv2を取得しました】
【スキル:ブロウガンLv1を取得しました】
【称号:ただのカカシを入手しました】
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ストロードラゴン【ランクE】 Lv1/16
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:287/287(+37)
MP:299/299(+39)
ATK:77(+7)
DEF:80(+10)
MAT:209(+19)
MDF:199(+9)
AGI:88(+8)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv5]↑[HP自動回復Lv2]↑[ダメージヘイトLv3]↑
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv5]↑[被服補正Lv3]↑[被服吸収Lv3]↑
[火魔法Lv2]↑[氷魔法Lv2]↑
*[ブロウガンLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー]*[怠け者]*[上司の靴磨き]
*[キャンディー工場]*[ただのカカシ]
補正:[ HP+15%]↑ [ MP+15%]↑ [ATK+10%] [DEF+15%]
[MAT+10%] [MDF+ 5%] [AGI+10%]
[火攻撃+90%] [火耐性+10%]↓ [水攻撃+30%] [水耐性+30%]
[氷攻撃+20%] [氷耐性+30%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+20%]
[風攻撃+20%] [風耐性+20%] [土攻撃+20%] [土耐性+20%]
[光攻撃+20%] [光耐性+20%] [闇攻撃+50%] [闇耐性+20%]
[対虫系+10%] [対鳥系+10%]↑ [対獣系+10%]↑
[対高Lv系-10%]↓
[取得経験値+60%]↓ [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+20%]
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称号詳細――
[神の依代]:女神である私の依代となる以上、やはり何かしらのボーナスは与えないといけないでしょう。[全属性の攻撃・耐性+20%]
[空調服]:夏も冬も、コレで万全!ただ、空調服って本来はちょっと違うんですけどね…[火耐性+10%][氷耐性+10%]
[効率重視]:無理に自身の能力だけで戦おうとせず、その場で一番経験値を稼げる方法をとることはいいことですよ…時と場合によりますが。[取得経験値+20%]
[叩かれ屋]:ピニャータとなった者は常に棒で叩かれる宿命を背負うのです。[DEF+5%]
[クラスチェンジャー]:布地から植物素材へ生まれ変わった者。まだまだ成長はこれからです![全パラメータ+5%]
[怠け者]:安易にバンクに縋ろうなんて向上心が無いですね、個人的に気に入らないのでお仕置きです![取得経験値-10%]
[上司の靴磨き]:権力者に縋りついて生きていくのはどの時代でも変わらないものなのですね…[対高Lv系-10%]
[キャンディー工場]:せっせと身を粉にしてキャンディーを生産していく様はまさしく社畜です。[HP+5%][MP+5%]
[ただのカカシ]:んんwwwただのカカシですなwww[対鳥系+10%][対獣系+10%][火耐性-10%]