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ドラゴンになりたいッ!!  作者: コロッとしたもの
第1章:「で、結局ドラゴンじゃないのね・・・」
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第45話:普段大人しい奴がキレた時の気迫は異常

今回と次回は少々短めになります。

第45話:普段大人しい奴がキレた時の気迫は異常



――――――――――



「あの…白さん、すぐ戻るって言っていましたよね?2時間も掛かるなんて…何か見つけたのですか?」


 陣営近辺で待機しながらセクが白ちゃんに詰め寄る(といっても心の中でではあるが)。白ちゃん達はどうやら調べに行った天幕の中で何かを掴んでいたようだ。


「(実はあの天幕の中に、聖サーラ王国軍の配置や大まかな工程についての情報がありました。それによると…どうやらアンジーさんが合流し次第、今あそこに集結している大軍をアルカンの街付近まで一気に転移させるらしいのです)」

「(うむ、初めは団長殿にこの事を報告しようとも考えたのだが…団長殿の事だ、他の皆に無理を強いて突っ込む事やもしれぬ)」


 もし、このまま距離を取ったまま何もしなければ街にいる皆に危機が迫ってしまう。この状況でセクが出した結論はただひとつ――


「サキ、いつでもいける?」

「大丈夫だよ兄さん。みんな一緒なら、きっと大丈夫」

「(…仕方ありませんね。くれぐれも無理はせず、常に相手の射程外から攻撃するように意識してください)」


 心を決めたセク達は陣営から距離を取り、自身の射程ギリギリの約3km地点に待機する。これから砲撃を開始する二人に緊張が走る中、黒ちゃんが精一杯鼓舞した。


「(やるからには完膚なきまでに叩きのめせ、半端に残すと敵に反撃を許すことになろう…いくら拙者達が強いといえど、あの数の差を覆すだけの力は持ち合わせておらぬ)」


 兄妹は顔を見合わせゆっくりと頷き、両翼(りょうて)両脚を地面に付けて砲撃体勢をとる。


「(拙者の[ダークシェイド]は影が無ければ無力、このような平地で陽が昇ってしまえば非常に危険だ、日の出までに決着をつけるのでござる!)」

「行きましょう、兄さん」


 直後に鳴り響く轟音と共に戦闘が始まった!敵陣営に降り注ぐ砲弾が敵陣営を容赦なく蹂躙していく…敵兵の叫びは着弾音でかき消されていった。


【白竜砲ミツハのレベルが41になりました】

【スキル:雷魔法Lv9を取得しました】


【黒竜砲ヤツハのレベルが42になりました】

【スキル:ロングダッシュLv9を入手しました】


「ぐ…何だ?おい新人、何が起こっている!?」

「やばいッスよ先輩!全然見えない所からの敵の攻撃ッス、しかもムチャクチャ強いタイプの!!」

「何だと!?」


 魔道士の男は黒霧狼(ウォルヘイム)を2体呼び出し、すぐさまそれに飛び乗った。どうやら簡易的に呼び出したせいなのか、輪郭があまり安定していない。彼は新人を手招きしながらすぐ乗るよう急かす。


「こんな所でくたばってたまるか!お前も乗れ、さっさと|アルカン攻略部隊(あっち側)に合流するぞ!」

「はっ…はいッス!けど防壁にぶつかって事故なんて俺は嫌スよ!?」

「心配するな、防壁は一通だ!出る分には問題ない!」


 彼の気が急いているのもあるのか、黒霧狼(ウォルヘイム)達も先程の比じゃないスピードで平地を駆け抜け一瞬で見えなくなった。


 二人が脱出してしばらくはセク達も大軍相手に果敢に戦っていたが、時間が経つにつれて元々ただの一般市民だった兄妹と敵国兵士との戦闘経験の差が徐々に現れていく。

 兵士達はアルカン攻略の為に準備していた巨大バリスタをセク達目掛けて一斉に発射し、迫り来る矢の雨に上手く対応出来なかったセク達は回避も出来ずにその猛攻に晒されてしまう。二人の身体は見る間に傷だらけになり、このままでは時を待たず死んでしまうのは明らかだった。


「(ぬぅ…ッ、こちらの回復速度よりも受ける傷の方が大きすぎる。この危機を脱するにはやはり「アレ」しか無いやもしれぬ)」

「どうすればいいのですか!?黒さん、教えてください!」


 黒ちゃんは少し考えたが、背に腹はかえられないといった様子でサキ達に提案してきた。


「(あくまで仮説の域を出ない物ではござるが…その…)」


 彼には珍しい自信が無い切り出し方に不安を覚えた二人を白ちゃんが慌ててフォローする。そんな白ちゃんも少し落ち着きがないように思えるが…?


「([変形合体]スキルです。実を言うと、私達では【双竜砲ナーガン】以外の形態を取る事が出来なかったのです。けれど今はサキさん達がいます、あなた達ならばきっと…この危機を打開する事も不可能ではありません!)」

「私達だからこそ、出来ること――」


 白ちゃんでも、黒ちゃんでもなし得なかったことを、こんな自分達が出来るのだろうか…と一瞬脳裏をよぎったが、それに勝って心を突き動かしたのはさっきまでの戦いだった。

 サキは確かに今朝まで老人に連れ去られそうになるくらい弱かった。だがすでに彼女は警備兵を大量に殺している、どれだけ自身が後悔したことであれ彼女がした事には変わりないのだ。


 サキは心を決めたのかセクに向き直り、大きく頷く。


「兄さん、やりましょう。私達ならきっとできるはず!」

「そこまで言うならやるしかないね、ボク達はずっと一緒だよ!」


 二人は両翼(りょうて)をしっかりと掴んで互いに見つめ合う…覚悟を決めた二人は降りかかる槍の雨を見据え、高らかに叫んだ!


「「行くよ、[変形合体]!」」


 白竜砲と黒竜砲のボディが分解され混ざり合い、白竜砲の両脚は右前脚と右後脚に、黒流砲の両脚は左前脚と左後脚となる。翼は二対となって連結されたボディに定着する。そして白と黒の尾が伸び、二つの首が前方に繋がった。そしてボディの両側面に、彼らの象徴でもある巨大な砲がしっかりと付けられる。


 セクとサキ、二人が憧れたのはフローラ達…竜王の姿。そのイメージが双頭竜の姿となって具現化された瞬間だった。


「「顕現――【双克金竜アルテマキナ】!」」


「(こんな合体があったなんて…これがサキさん達の――)」

「(セク殿、サキ殿。お見事でござる!)」


 合体を終えたセクとサキが互いに見合わせ、何も言わず頷いた。どうやら二人の間での意思疎通も出来ている様子だ。


「(身体は任せたよ、兄さん)」

「(攻撃は任せるね、サキ)」


 合体を通して得られた強さは、先程まで彼らを追い詰めていた大軍を蹂躙するには十分だった。降りかかる槍の雨も完全無視し振り下ろされる鉤爪は巨大バリスタを容赦なく破壊し、両側面から放たれる砲弾は設置されていた天幕を跡形も無く吹き飛ばした。


「(食らえ、[アク―― いや、これは!?…兄さん!!)」

「(ボクも感じてるよ!この力は…!)」


 双頭竜の両前脚――つまりセクの左手とサキの右手を握り締めると、内部に魔力が収束していく。そのまま両前脚を高らかに掲げ、二人が声を揃えて叫んだ!


「「[メイルシュトローム]!」」


 [水魔法LvMAX]で習得する最高位水魔法、[メイルシュトローム]。発動した双頭竜を中心として、巨大な洪水が包囲していた大軍に襲い掛かった。包囲していた聖サーラ軍には打つ手も無く、その奔流に巻き込まれ、そして全てを洗い流していく――


 発動して数分後、そこに一切の音が存在することは無かった。ただ、静寂だけが平地…だった場所を支配している。辺り一面はすでに平地から湿地へと化していた。



【白竜砲ミツハのレベルが58になりました】

【スキル:雷魔法LvMAXを取得しました】

【スキル:HP自動回復Lv2を取得しました】

【スキル:魔動エンジンMk.Ⅱを取得しました】


【黒竜砲ヤツハのレベルが59になりました】

【スキル:ロングダッシュLvMAXを取得しました】

【スキル:MP自動回復Lv2を取得しました】

【スキル:魔動エンジンMk.Ⅱを取得しました】




「ぬゎんじゃぁこりゃぁぁああああ―――っ!!?!?」




 突然、何も無く静かなはずの湿地に大音声が鳴り響いた。慌てて二人が振り向いてみると、そこには黒いローブで覆われた少女が立っていた。


「あなたは…誰?」


 サキの声に気付いた少女が振り向くと、やたら不機嫌そうな顔で二人を睨んできた。どうやら振り向きざま、履いていたブーツに水が浸み込んできたらしい。


「ここで軍隊と落ち合う予定だったんだけどさぁ、何にも無いってどういう事よ。コレ、アンタ達がやったって事でいいの?」


 気だるそうに話しかける少女に、二人は警戒しながら頷いた。途端に彼女の顔が邪悪さに満ちた笑みへと変貌していく。


「へぇぇ、そんだけ強いんなら…経験値もたんまり持ってるんだろうな。んじゃ、あたしの為にさっさと死ね。[エクスプロード]」


 そう言って彼女が右手を掲げるとそこに巨大な火球が出現した。その熱で湿地の水分は蒸発し、そのまま下の草地をも焦がしていく…


「(セク殿!奴こそがアンジー、団長殿の敵でござる)」

「(彼女を倒せば防壁も解除されるはずです、ここが正念場ですよ!)」


 初対面だったセク達は自分達とそう歳も変わらない少女に一瞬躊躇いながらも前進したが、アンジーはその隙を逃さなかった。


「16連射で様子見といった所だな」


 [エクスプロード]の火球を残したまま火・水・氷・雷・風・土…六属性総てのバレット魔法が発動され、それぞれの属性ごとに16発ずつ…計100発近くという夥しい量の魔法弾を双頭竜に打ち込んだ!あまりの突然で膨大なダメージにセク達の思考が止まり、その間も彼女の攻撃は止む事無く続けた。


 あっという間に双克金竜の身体はボロボロになり、立つ事さえ出来ない程にまで衰弱してしまう。圧倒的なレベル差、セクやサキだけでなく白ちゃんや黒ちゃんまで、彼女には勝てないと本能で理解していた…


「んだよ、ちょっと名人ばりに突っついただけじゃねぇか。その程度終わっちまうなんて見掛け倒しにも程があるぜ全く。こんな勝ち方したんじゃ飯も酒も不味くなっちまうよ」


 そのまま自身より遥かに大きいはずの、横たわった双頭竜を冷ややかに「見下ろし」、そのまま待機させていた巨大火球を振り下ろす。


「ま、肩慣らし程度にはなったけどな。面倒だしこのままアルカンもチャチャッと落として、さっさと帰って冷たい生中でも呑むか」


 セクとサキは、アルと初めて出会った時の事を走馬灯のように思い返していた…




 その直後、アンジーの火球が何者かに吹き飛ばされて彼方に飛んで行き、着弾した所で大爆発を引き起こした。あそこに何か居たのなら、それはもう生きてはいないだろう。


「ああっ?誰だ一体!?」

「おいおい、「誰だ」なんて随分な挨拶じゃねぇか」


 そこにいたのは、表面がグズグズになってはいるものの、鋼鉄製の身体が覗く朝の光に反射してオレンジ色に光っている金竜王だった――



「俺の家族(・・)を随分とまあ世話してくれたみたいだな。なら覚悟は出来てんだろ、ええ?アンジー…いや――」


 怒りに満ちた金竜王は、わなわなと震えながら搾り出すように口を開いた。



八王子美咲(はちおうじ みさき)さんよォ…っ!!」



――――――――――――――――――――――


白竜砲ミツハ【ランクS】 Lv58/99


 名前:白ちゃん


 状態:搭乗/合体


 HP:130/2710

 MP:460/5020

ATK:1925

DEF:1925

MAT:3765

MDF:4620

AGI:2510


スキル:[ステータス閲覧][光魔法LvMAX][僧侶の心得LvMAX][MP自動回復LvMAX]

    [変形合体][分離][魔動エンジンMk.Ⅱ][信号弾][雷魔法LvMAX][HP自動回復Lv2]


――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――


黒竜砲ヤツハ【ランクS】 Lv59/99


 名前:黒ちゃん


 状態:搭乗/合体


 HP:240/5480

 MP:5/3120

ATK:4680

DEF:3120

MAT:1950

MDF:1950

AGI:3810


スキル:[ステータス閲覧][闇魔法LvMAX][盗賊の心得LvMAX][HP自動回復LvMAX]

    [変形合体][分離][魔動エンジンMk.Ⅱ][ステルス][ロングダッシュLvMAX][MP自動回復Lv2]


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