第3話:出処不明の商品は大体安物
第3話:出処不明の商品は大体安物
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「で、あんたの名前は?」
「アルフレッド。長いからアルでいいよ」
そう言った途端、イフがブッと噴き出していた。な、何故に…?
「あと、あんたの製作者は誰なのかしら?」
「誰って…ここから5分くらい歩いたところの主婦に」
そう言った途端、今度はローズが噴き出した。
「ちょ、ちょっと待って!主婦ごときにゴーレムなんて作れるわけ無いでしょう!?仮に作れたとしても魂を吹き込むなんて魔術に詳しい人じゃないと出来やしないわよ!」
「って言われてもなー、生まれちゃったもんはしょうがないし」
そこで気になった事がひとつ、おーい神(仮称)いる?
『なんでしょうか?』
いやね、俺の出自とかってばらしてもいいのかな?
『うーん…』
しばらく考えた素振りを見せていたが、案外軽い返答だった。
『まぁそこは個人の自由といいますか、特に規制はしておりません』
まぁ無理に打ち明けることでもないし、今回は適当にはぐらかすか。
「プピー」
「はぐらかすな」
早速イフから突っ込まれたが、何度聞かれてもプピーの一点張りだ。
「ていうか俺も分らないからさ、ローズが調べてくれたら有り難いんだけどなぁー…」
こういう時は博識の方に委ねるのが一番手っ取り早い。まぁ実際はただの居候する口実なんだけどな。
「まぁ個人的にあんたの事は少し気になってたし、しばらくはここで過ごすといいわ。その間のデータは取らせてもらうけどね」
よし、これで当面の拠点は確保できたぞ!
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「ところでローズ」
「何かしら?」
「一応俺魔物だしさ、経験値稼いでレベル上げて進化したいわけよ」
「で、何が欲しいんだい?」
お、やっぱり勘付いてくれたか。
「敵倒して経験値稼ぐためにもさ、魔法を教えて欲しいんだけど…いいかな?」
「なんだ、そんなこと」
ローズはおもむろに立ち上がると俺の額に手をかざして小声で詠唱する。しばらく経つと、ローズの表情が微妙なものになった。
おいおい、まさか…
「まぁ、その…あれだ。魔力はあるんだが、属性適性が全く無い。魔法は諦めてもらうしかないわね」
な、なんだってー!? てかちょっと待て神(仮称)、念動力、俺使えるんだけど
『念動力と魔法は術式が全く異なります。MPを消費するには変わりませんが…』
そうか、ということは魔法は諦めるしかないのか。[念動力Lv2]なんていうポンコツスキルでMPを持て余すしかないのか。
暖炉から見下ろすと、イフが「ざまぁ」といった目で俺を見上げてニヤニヤしてた。よし、あの犬後で殺す。
「うーん…あ、そうだ。ちょいとコイツで…」
ローズが懐から親指くらいの大きさのオーブを取り出した。
「ちょっ、ローズ!それって」
イフがそれを見るなり慌てて声を上げる。え、何なのソレ?
「あ、コレは所謂経験値バンクみたいな感じでね。ホントはイフ用のものなんだけど経験値ちょっと位なら大丈夫でしょ」
「ローズが良くても俺がダメなんd」
イフが言い切る前に、俺の額にオーブが当てられ、そこから力が流れ込んでくるのがわかった。
【ドラグドールのレベルが2になりました】
【ドラグドールのレベルが3になりました】
【ドラグドールのレベルが4になりました】
【ドラグドールのレベルが5になりました】
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【ドラグドールのレベルが14になりました】
【ドラグドールのレベルが15になりました】
【ドラグドールからウェアドラゴンへの進化が可能になりました】
【称号:二束三文の安物を入手しました】
経験値おいしぃぃぃぃぃ!けどなんか物凄く不名誉な称号も頂いてしまった。
大丈夫な称号か?[燃えるゴミ]みたいなマイナス効果は欲しくないぞ。
「凄いね、イフのいつも狩ってるモンスター1匹分しか経験値使わなかったわ」
「フッ、ゴミが」
「おい今何つった!?」
なんて張り合ってはみたけど、実際ゴミ扱いされたしゴミとしての称号も持っちゃってるからなぁ、図星。
「うっし、とりあえずレベル最大な事だし進化するぞ」
「おっ、ワクワクするなぁ」
【ドラグドールからウェアドラゴンへ進化しますか?】
YESッ!よろしくな!ウェアドラゴンと聞くと竜人の線もあるんじゃないか!?期待できる!
ローズが注目する中、俺の体が物凄く熱くなる。火耐性は確かに低いけど、ソレとはまた別の熱さだ。全身が大きく膨れ上がる感じ、床との距離が離れていくので体が大きくなってきているのがわかる。
最終的にはローズとほぼ同じぐらいの高さに成長した。おお、もしかしてマジで竜人きたか!
【ウェアドラゴンへの進化が完了しました】
【スキル:念動力Lv3を取得しました】
【スキル:痛覚軽減Lv3を取得しました】
【スキル:被服補正Lv1を取得しました】
【スキル:被服吸収Lv1を取得しました】
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ウェアドラゴン【ランクE】 Lv1/24
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:70/70
MP:94/94(+4)
ATK:30
DEF:30
MAT:68(+3)
MDF:65
AGI:30
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv3]↑
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv3]↑*[被服補正Lv1]*[被服吸収Lv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
*[二束三文の安物]
補正:[ MP+ 5%] [MAT+ 5%]
[火攻撃+50%] [火耐性-10%] [水耐性+10%] [闇攻撃+10%]
[対虫系+10%]
[取得経験値+50%] [進化必要レベル-20%]↓
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「着ぐるみ…だな」
「着ぐるみね、結構かわいいじゃない」
そう言われ鏡を見てみると、遊園地に出現しそうなデフォルメされた竜の着ぐるみが立っていた。目は魚のソレからつぶらな黒一色になっている。背中を見てみるとチャックが付いていた。
着る方のウェアかい!期待させといて結局はそっちのウェアかい!まぁ3頭身から5頭身にはなったから妥協しよう、うん。
「弱そうだな」
イフは相変わらず口がひどいが、そこは華麗にスルーする。
一応、曲がりなりにも竜人っぽい見た目になったので飛ぼうとしてみたが、ウンともスンとも…てかコレって
『はい、スキルのレベルは上がりましたが自身の重量も相当上がったようですね』
チクショーッ!空を飛べたのは数分だけかよ!これでまた地べた暮らしだよまったく!
「ローズ、[被服補正]なんてスキル手に入ったんだが」
彼女なら何かしら知ってるはず、と思ったらローズはおもむろに俺の背中のチャックを下ろし始めた!
「ちょっ、何!?」
なんかものすごい羞恥心が沸いてくる。ズボンのチャック下ろされてる感覚だ。
「[被服補正]って、要するにあんたを装備してる人の能力に補正かけるんじゃないかしら?」
「成程な」
ローズが俺を着ている間にステータスをチェックしていたらとんでもないものを見つけてしまった。
おい神(仮称)、[必要進化レベル-20%]ってどういう事だよ!?
『はい、端的に説明すると成長上限が下がります。進化は早くなりますが、その分強くはなりません』
ま、マジかよ…それって一番ダメなやつじゃないか、強くならずに安直に進化したらそれこそモブ認定受けることになってしまう!
『他の称号で巻き返すしかありませんねぇ』
何てこった…この先大丈夫なんだろうか、強烈に心配になって来たぞ。
「アル、とりあえず着てみたけど…ほとんど変化が無いね」
「ローズも[ステータス閲覧]使えるのか」
「アタシが…というよりも全員が使える、といってもいいと思うわ」
「そっか…んで、上昇幅はどの位?」
「火攻撃に5%ほどプラス補正がかかってるだけ。それ以外は何も」
【称号:パワードスーツを入手しました】
今の俺のステータスと比べると、どうやら[被服補正Lv1]では俺の補正値の1割が上乗せされるみたいだな。
「チャックを下ろされてひとつになるとか、けしからんぞ」
知るかっ!そういう文句は現行犯のローズに言えっ!
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ウェアドラゴン【ランクE】 Lv1/24
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:73/73(+3)
MP:94/94(+4)
ATK:31(+1)
DEF:31(+1)
MAT:68(+3)
MDF:65
AGI:31(+1)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv3]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv3][被服補正Lv1][被服吸収Lv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物]*[パワードスーツ]
補正:[ HP+ 5%]↑ [ MP+ 5%] [ATK+ 5%]↑ [DEF+ 5%]↑
[MAT+ 5%] [AGI+ 5%]↑
[火攻撃+50%] [火耐性-10%] [水耐性+10%] [闇攻撃+10%]
[対虫系+10%]
[取得経験値+50%] [進化必要レベル-20%]
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称号詳細――
[二束三文の安物]:まぁイフさんとのレベル差もあるのでしょうけど…これで価値が決まってしまうなんて不遇ですね[進化必要レベル-20%]
[パワードスーツ]:着用した人を強化するスーツ。近未来的なものでしたらもっと格好良いデザインになったのでしょうけど、この世界ではコレが限界でしょう。[HP+5%][ATK+5%][DEF+5%][AGI+5%]