第22話:逆のパターンはそうあるものでもない
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第22話:逆のパターンはそうあるものでもない
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俺の立っている所はブレイドの爆発でクレーター状に陥没していた。逝ってしまった友を思い返していると、遠くから地響きが近づいてきた。
「あ…アル!」
「ローズ…か…」
そのローズの背後から、青色の竜…水竜王フロラインが一緒に走ってきた。ブレイドとほぼ同じサイズの竜が走ってくる様はかなり迫力があるな…
「火竜王さんの尋常でない質の魔力がこちらに流れてきたので慌てて来てみたのですが――」
「そういう事サ」
巨大な翼をはためかせ、雷竜王トランザッパーまでもが慌てて飛んできたみたいだ。ギルド本部の所にまでブレイドの力は届いたのか。ブレイド、お前は弱くなんてなかった…お前の力を認めてくれる奴はちゃんといてくれたぞ。
「ブレイドさんの魔力を通して…彼が死を覚悟し、自身の生命を燃やしてまで氷竜王を斃したのだと。そう伝わってきました…そして、アルさんへの想いも」
トランザッパーは爆心地となっている所で俯き、拳を握り締め微かに震える。
「何さ…さっきボクをあんなノリノリでぶっ飛ばしてたのに――」
隣にフロラインが寄り添い、二人で静かに目を閉じてブレイドの死を悼んでいた。
「待てよフロライン、『死を覚悟し』って…あいつは死ぬ事が分かってたっていうのか!?分かってて俺の無茶を受け入れたっていうのか!?」
フロラインは静かに頷いた。
「何故、俺はあの時[HP自動回復]を貸与しなかった?無理をしてでもブレイドを回復させていればあいつは死ななかったんじゃないのか!?何故――ぁあああっ!!」
突然、生まれて初めて味わうような激痛が全身に走った。
『[悪魔の取引]の反動です!相当無理をされたので…覚悟した方がいいのかもしれません』
「っがあぁああ゛っ!!!」
【スキル:被服吸収Lv6が使用不能になりました】
【スキル:被服補正Lv6が使用不能になりました】
「アル!どうしたんだい!?一体何が――」
【スキル:ラッキーショットLv2が使用不能になりました】
【スキル:ダメージヘイトLv6が使用不能になりました】
こ、これが反動だと…!?
『もし[HP自動回復]までも強化していれば…アルさん、もうこの時点で死んでしまっていたかもしれません』
何だって――
【スキル:MPチャージLv1が使用不能になりました】
【スキル:ホーミングLv2が使用不能になりました】
ブレイドは…俺を生かす為に自分を死なせたっていうのか?そこまでして、何故弱い俺を守ろうと――
【スキル:痛覚軽減Lv8が使用不能になりました】
【スキル:念動力Lv8が使用不能になりました】
【称号:ただの置物を入手しました】
[念動力]が使用不能になった瞬間、俺の身体は糸が切れた人形の様に地面に崩れた。[痛覚軽減]も使用不能になったので反動の痛み、地面に激突した時の痛みが全て俺に突き刺さる。
痛い。素直に痛い。泣きたいほど痛い。結局あいつに何もしてやれなかった自分が許せなかった。
ふと、ぶつかった地面…爆心地に何か白い物がめり込んでいるのが見えた。
「ローズ!ちょっと俺の顔の下、調べてくれないか?」
ローズが掘り起こしてみると…両腕で抱えるくらいの大きな卵のような物が出てきた。
「まさか…な」
「魔力の結晶とでもいいましょうか、卵であることは確かですね」
フロラインが卵を鑑定してくれたが、どうやら俺の手には余るものだったらしい。
「フローラ、竜神様に届けるかい?」
「そうですわね…」
「待ってくれ!!」
たまらず俺は叫んでしまった。俺にどうこうできるものではないと分かっていても、このまま持っていかれるのを黙ってみている訳にはいかなかったのだ。
「頼む…その卵、俺に預からせてくれ!」
「ですが、なるべく安全な場所で…」
「確かに俺は他の皆に比べて弱いし、今は動く事すら出来ないけど――」
ローズが心配そうに見ているが、俺だってあいつに何もしてやれないまま、完全に別れてしまう事なんて出来ない!
「けど、あいつは俺を唯一の友と呼んでくれた!死ぬのを分かってて俺にその身を委ねてくれた!せめて、せめてその恩だけでも返したいんだ!」
フロラインとトランザッパーは顔を見合わせたが、静かに目を閉じて頷いた。
「…分かりました。ひとまずはこの事を竜神様に報告して参ります」
「ありがとう、助かるよ」
フロラインはすぐに飛び立ち、竜神のもとへ飛んで行った。
「アタシ達はギルドへ戻りましょう、グルードやムートン達が心配だわ」
トランザッパーに乗せられ、俺達は空からギルドへ戻っていく…
ふと、彼が口を開いた。
「ボクはね…さっきブレイドに負けた時、不思議と羨ましい気持ちになったんだ」
俺は静かに彼の話に耳を傾ける。
「一生懸命で、身を委ねられる友を見つけて…竜王最弱と罵られているにもかかわらず、友と共にあそこまで勇敢に立ち向かう。――ボクには無いものだった。ボクなんかより、ずっとカッコ良かったよ」
「…ブーちゃん――」
ロンデラに聞いてみたけど、ブレイドとしての魂も、生駒健二としての魂も見当たらなかったらしい。転生はされず、本当に死んでしまったのだと聞かされた…
「ローズ!帰って来たか!」
進化して赤毛のモフモフになったイフが、心配そうな顔で出迎える。やはり他の皆にもブレイドの異変に気付いたようだ。
「アルフレッド、大丈夫か…?」
グルードが俺の隣でそっと聞くが、ブレイドの姿がどこにも見当たらない事で把握したのか何も言わずに優しく肩を叩く…
「ぷぴーっ!!」「プピーッ!!」
白ちゃんと黒ちゃんもまるで泣いてるように鳴き袋を鳴らしていた。
――――――――――
「ブレイドの魂が、約束の方舟により魂の楽園へと到達する事を祈り…皆、黙祷してくれ」
カ―――ン… カ―――ン…
あれほどけたたましく鳴っていた半鐘の音が、今はゆっくりと、静かに鳴り響く。ローズもイフも、胸に手を当てて黙祷する。テレジアは身体の構造上涙は出ないが、嗚咽が漏れんとするその口の動きで悲しんでくれている事が十分に伝わった。
白ちゃんも、黒ちゃんも。そしてギルドの皆が静かに目を閉じ、俯く。そこにアリスの姿は無かった…
「アルフレッド、ローズ達も…しばらくここで休め。お前たちに必要なのは休息だ」
今となってはその濃い髭にも愛嬌が出てきた所だ。とりあえず当分はこのギルドで休むことになった。俺は動けないのでギルドの書庫に設置されていた。
ふと、その扉がノックされる。
「アリスだけど、いいかしら?」
「ああ、いいぜ」
大きな扉を開け、アリスがそっと入ってきた。
「アリス…お前――」
「ブレイドの事、教えてくれない?」
「ああ、いいぜ」
俺はブレイドについて知っていることは全て教えた。リザードマンの集落での出会い、途中の村での三文芝居、そして氷竜王との命を懸けた戦い…その生き様を。
――ブレイドが転生者であった事は言わなかった。二人だけの秘密があってもいいと、俺は思う。
「けど…けど、俺は――今でも後悔してる。俺の為に、ブーちゃんは命張って戦ったんだ。もし、俺があの時無理をしてでも回復させていれば、と。今でも思うんだ」
「アル」
突然呼ばれて何かと思ったが、アリスはそっと呟いた。
「あなたの中で、決してブレイドを死なせないと約束して。あなたの中のブレイドまで死なせてしまっては…彼は完全に死んでしまう。せめて、あなたの中でだけでも…生かしてあげて」
「ああ…」
「あなたの中で彼が生きている限り、きっと彼も力を貸してくれるわ」
俺の中の称号、[☆火竜王の大親友]。もし、俺があいつを忘れてしまったら、この称号も消えてしまうのだろうか?
「ご、ごめんなさい、もう遅いからわたしは寝るわぁ。おやすみなさいね」
「ああ、おやすみ、アリス」
閉まる扉の隙間から、アリスの目に大粒の涙がたまっているのが見えた。
――――――――――
その後は何時間も悔やみ続けた。変えられない事実への後悔が、俺の胸をちくちくと刺す。その心の痛みは泣きたいほど辛かったが、泣く事も出来ない地獄のような時間が過ぎていくうち、窓の外がついに白んできてしまった。
「アル、おはよう」
「ああ…」
相変わらずのモフモフ。けど、そんなモフモフにも心が動かない。
「あ、アルさんにイフさん。おはようございます」
テレジアも開いたドアからするすると入ってきた――と同時に、ローズが開きかかっていた扉を勢いよく開いた!
「みんな!アリスを見なかった!?」
かなり慌てた様子から見ると、探したが見当たらなかったのだろう。
「プピ―――――ッ(団長―――――ッ)!!」
ローズと同じポーズで黒ちゃんが慌てて部屋に駆け込む。
「どうした!?」
「プピッ、プピィィィ(白が大変だ、誰か回復できる奴を)!!」
何事かと思い、ローズに回復が出来るミリガンを呼んでもらい、グルードに白ちゃんの元へと運んでもらうと…
「し…白ちゃん!!」
慌てて駆け寄ったローズが白ちゃんを抱きかかえ持ってきた。
――これはひどいな。中の綿がぐしゃぐしゃに潰れ、表面はズタズタにされていた。ミリガンが回復魔法を唱えるといくらか回復したのか、白ちゃんの意識が戻ったようだ。
「白ちゃん、聞こえるか!?一体何があったんだ?」
白ちゃんは震えながら俺の方を向いてくれた。
「ぷ…ぷぴぃ…(あ…アリスさんに、やられました…)」
「無理して鳴かなくてもいい、念話でいいから説明してくれ!」
白ちゃんは…アリスにボコられたにも係らず彼女を責めはしなかった。
「(アリスさん、昨夜は凄く泣いていました…物凄く。ブレイドさんの名前を何度も叫んでいました)」
きっとアリスは…ブーちゃんの事を、愛してたんだろうな――
「(そして…ブレイドさんを死なせたアルさんを…)」
そこで白ちゃんが黙ってしまった。そして、ゆっくりと続けた。
「(死なせたアルさんを、殺してやると…何度も叫んでいました。私は止めようとしたのですが、返り討ちに…そのまま何かを決めたように飛んでいきました)」
「そうか…」
「で、白ちゃんはなんて?」
俺はローズ達に概要を説明する。
「恐らく、アリスは「同志」を探しに行くだろう。以前、リザードマンの集落を襲った奴らを覚えているか?その親玉が、俺と敵対してる奴で…俺を殺そうとしているヤツなんだ」
そして、アンジーも黒ローブを着こなしていた。これだけで判断するのは早計かもしれないにしても…
「アリスとアンジーが出会ったら…大変なことになるな」
アンジーは転移魔法を使える転生者。火竜王を召喚するぐらいだ、成長速度を考えるとミリガンよりは使いこなせるはずだ。
「なあ、雷竜王」
「ザップでいいよ、アル」
ザップが鬣を払いながらこっちを見る。
「じゃあザップ、可能な限り今すぐでいい、俺達を乗せてここから逃げてくれ」
「…マジ?」
「ああ、アリスのリークで俺たちの位置がバレればここに敵の軍勢が転移されるのも時間の問題だ」
そういうことならと、ザップは俺達を背中に乗せて早速飛び立とうとする。
「アルフレッド!」
グルードが袋をローズに投げ渡した。中には食糧が入っていたらしい。
「悪いな、色々と面倒かけてしまって」
「はっは、いいって事。道中の無事を祈っているよ」
ザップの翼が大きくはためき、身体がふわりと舞い上がる。
「よーしお前らぁ!絶対に相手側には悟られるんじゃないぞ!戦勝ムードを偽装しろ!」
「蔵の酒をありったけ出せ!最期の宴だ!!」
ショーンの掛け声と共にギルドの皆が声を張り上げた。ミリガンは泣きながらローズと握手する…
「少しでも遠くに逃がせるよう、こちらも一生懸命抵抗します。ご武運を」
そのままザップは猛スピードで空を駆けて行く。ほとんど見えなくなるほどギルドが小さくなった辺りで、聖サーラの大軍が転移されたのが目に映った。
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発条竜【ランクB】 Lv15/24
名前:アルフレッド
状態:衰弱
HP:250/1866(+998)
MP:57/805(+540)
ATK:1235(+877)
DEF:1152(+672)
MAT:754(+494)
MDF:1126(+602)
AGI:528(+250)
パッシブスキル:[×痛覚軽減Lv8][HP自動回復Lv5][×ダメージヘイトLv6]
[×ラッキーショットLv2]
スキル:[ステータス閲覧][発声]*[悪魔の取引]
[×念動力Lv8][×被服補正Lv6][×被服吸収Lv6]
[火魔法Lv5][水魔法Lv2][氷魔法Lv5][雷魔法Lv1]
[風魔法Lv2][土魔法Lv1][光魔法Lv1][闇魔法Lv1][転移魔法Lv1]
[ネイルガンLv4]
[ロングダッシュLv3][ホーミングLv2][×MPチャージLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]
[火炎放射器][高性能カカシ][解体業者][戦車][怪獣][送迎バス][事故車][道路清掃車]
[軍団長][一城の主][火竜王の鎧][パワードアーマー][転生者www][ハイブリッド車]
[エアコン][漬物石][周回飛ばし][拘束具][拷問器械][処刑台][不発弾][背番号1]
[大根役者][地元の英雄][司令官][袋の鼠][背水の陣][逆転の貴公子][伝説の賭博師]
[ルームライト][8月31日の悪夢][レトロフューチャー][見習い賢者]
[トランスポーター][称号バーゲンセール][マジックアイテム][堅実派][レンタル業者]
[契約者][限界突破][竜王を斃した者][☆火竜王の大親友]*[ただの置物]
補正:[HP+115%]↑ [MP+90%] [ATK+245%] [DEF+140%]↑
[MAT+190%] [MDF+115%] [AGI+90%]
[火攻撃+300%] [☆火属性攻撃無効] [水攻撃+50%] [水耐性+50%]
[氷攻撃+70%] [氷耐性+45%] [雷攻撃+40%] [雷耐性+40%]
[風攻撃+50%] [風耐性+40%] [土攻撃+45%] [土耐性+40%]
[光攻撃+50%] [光耐性+40%] [闇攻撃+120%] [闇耐性+70%]
[対虫系+10%] [対鳥系+40%] [対獣系+40%] [対構築物系+20%]
[対人間+50%] [対竜系+50%] [対高Lv系+10%] [対低Lv系+10%]
[取得経験値+80%] [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]
[遠距離射程+70%]
[MP消費量-10%]
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称号詳細――
[ただの置物]:懐かしいです…転生したての時もこの様に動けずにいたんですよね。[HP+5%][DEF+5%]




