第20話:様式美は用法・用量を守って正しくお使いください
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第20話:様式美は用法・用量を守って正しくお使いください
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半鐘の音が敷地中に鳴り響き、ギルドのメンバー達が続々と広場に集まっていく…現在100人程集まっている所だ。
「マスター、どうやらあっち側もこういう事態を考えてたみたいだぜ!」
防壁の上で、ショーンが指した方を見てみるとそこには大量の魔物達が配備についているところだった。
今回はやたら数が多い…地上からはゴブリンとオークの混成軍団、空からは翼竜とガーゴイルの混成軍団、それにそれらのさらに後方にはブーちゃん位の大きさの紫色の竜が居座っている。
てかその竜、ブーちゃんと違ってたてがみが付いてて綺麗にセットされてる。前に出してワックスで固めて、先端だけ固めてない状態になってる。多分「フッ」とかカッコつける時にあの垂れた鬣を手で払うんだろうな。
――あ、今「フッ」てした。ブーちゃんに比べてスタイルも曲線的で美しいし顔立ちも整ってる。動作からしても、竜族の中では結構ハンサムの部類なのだろう。
「ブーちゃん、アイツ知ってる?」
「奴の名はトランザッパー、我と同じ竜王の銘を持つ者だ」
「へえ、竜王か。身体の色からして…雷竜王といった所?」
ゆっくりと頷くと雷竜王の方を一瞥し、俺に向き直った。
「奴の相手は我がしよう、その方がお前達からしても有り難いだろう?」
「そうだな、宜しく頼むよ」
グルードが防壁の上に登り、大きく咳をした。集まったギルドメンバー全員が彼に向く。
「よーしお前ら、今俺達の上に立っている国はどこだ?言ってみろ!」
「「聖サーラ王国です!!」」
グルードの質問にメンバー達は大声で一斉に返してきた。統率が非常によく取れている、組織力の高さが伺えるな。
「次、以前俺達を養ってくれたリンカネート皇国を滅ぼした国はどこだ?言ってみろ!」
「「サ、聖サーラ王国です!!」」
あれ、メンバーの一部に動揺が見え始めた。もしかして次のグルードの言葉って…
「よし次!黒ローブばっかり着て胡散臭い、今から俺達が戦う国の名を言ってみろ!」
しばらくざわついていたが、どうやらメンバー達も腹を括ったらしい。一斉に声を張り上げて答えた!
「「聖サーラ王国です!!」」
グルードはうんうんと満足そうに頷き、声を張り上げた。
「よーしお前ら、早速戦闘態勢に移れ!見ての通り最強の援軍もついてる、今以外に無き皇国の仇を討つチャンスは無いと思え!」
最強の援軍ってのはブーちゃんとローズの事なんだろうな、そこに俺は含まれてないんだろうなー…実際二人に比べたらまだまだだし仕方ないか。
ローズは防壁に上がり、大まかな方針についてグルードと話していた。
「グルードだったね。それで、今回はどう戦うつもりなんだい?」
「ああ、それなんだが」
グルードは雷竜王の方を顎で指しながら髭を撫でる。
「まずあのデカブツを何とかしないとまずい、先に落とさないと後が辛くなるな」
「じゃぁ、ソレを見越して作戦会議でもしましょ」
二人が防壁から降り、俺達と合流した。まぁブーちゃんがあのデカブツの相手をするのは変わらなかったので、ついでに俺も同行することにした。
[被服補正]でブーちゃんの能力を超強化すれば、それほど時間も掛からずに対処できると思う。早速ブーちゃんに装備されるとしよう。
前回のドラゴーレムだった時とは違い、腕輪状になるのは一緒だけど形状が腕時計みたいになってる。ブーちゃんの腕に腹這いで抱き着いたみたいになっているが…背中の発条はそのままだった。
「ブーちゃん、補正量はどんな感じ?」
「相当強化されているな。火属性の攻撃力が2倍以上に…それにATKも8割近く上昇されている。うむ、これは心強い」
【称号:マジックアイテムを入手しました】
よし、予想通りブーちゃんの強化も出来ている。これならすぐに済みそうだ。
「うっし、んじゃブーちゃん早速出発し――」
「そうはさせないヨ!」
突然、ブーちゃんの胸に巨大な足が飛んできた!突然の事に対応できなずモロに受けたブーちゃんは派手にぶっ飛んで防壁に衝突する…うわあ、痛そう。
その飛び蹴りをかましたのは紫の鱗に垂れた鬣を持つ雷竜王トランザッパー。…てかあの長距離を一瞬で飛んで来たのか、AGI半端なく高いんだろうなぁ…
雷竜王は目を閉じながら自慢の鬣を「フッ」と払い、得意気にしている。うん、アレ切り落としたい。てか改めて近くで見てみたら雷竜王、完全に顔がチャラ男じゃねーか!
「その程度のスピードでこのボクに挑もうなんてね、フッ――」
やっぱりブーちゃんも腹が立っていたのか、また目を閉じて「フッ」と鬣を払った時に遠慮なく握り固めた拳を鳩尾に抉り込ませた!
お、効いてるぞ。雷竜王は「うぶふぅ」とか言いながら膝をガクガク揺らしている!心なしか鬣の元気も無くなった様に見えるな。ざまぁ。
「どうした、自慢の鬣が萎れておるぞ」
「ぶふぅ…ふ、フッ、今のは油断し――」
また目をつぶって「フッ」としたので今度は顔目掛けて回し蹴りを叩き込む。ブーちゃんってなにか武術の心得でも持ってるのかな?フォームがすごく綺麗だ。顔面へモロに受けた雷竜王はまとめてあった荷物の山にぶつかっていった。
「か、顔はヤメテ…」
「ふん、この程度で我に挑もうなど、笑止千万!」
ホントは俺の補正のおかげでもあるんだけどね。そこは内緒にしておいてね。
雷竜王はさっき自分が言った事を返されてかなり機嫌が悪くなっている。今更だけどここで暴れられたら拠点に被害が出てしまうな…
ブーちゃんに頼んでみると彼も理解したのか怯んでいる雷竜王の翼を両腕で掴んで飛び立った。そのまま拠点からかなり離れた森の近くまで運び、乱暴に投げ捨てる。
「ぐえっ!…フッ、どうやら墓穴を掘ったようだね」
「ご愁傷様」
「ボクじゃなくて、キミ達がだよ!さぁ、空模様もいい具合になってきた所で本気を出すとしようかな」
雷竜王が全身から放電すると、それに当てられた雲は雷雲になり、天気は大荒れになった。その中で雷竜王は余裕の表情で鬣を払う。
「この雷雨こそがボクのフィールドなのさ。そのスピード、とくと味わうがいい!」
雷光と共に奴の姿が消え、ブーちゃんの背中に拳で鉄槌を打ち込む。
「がぁっ!?」
「もう一度言うよ。その程度のスピードでこのボクに挑もうなんてね、100年早いんだヨ!」
雷光に紛れブーちゃんに次々と連打を浴びせていく。このままじゃやばいかもしれない…
「さあ、どうしたんだい?さっきの威勢はどこへいったのかな?」
「未だここにあるぞ」
どうやらブーちゃんは諦めても手も足も出ていなくも無かったようだ。タイミングを計っていたようで、攻撃の合図である雷光に合わせて打ってきた雷竜王の腕を見事に掴んだのだ!
「ようやく捉えたぞ、全く…世話の焼ける奴だ」
そう愚痴りながらブーちゃんが空いた右腕で正拳突きの構えを取る。
「[ヴァルカンフィスト]!!」
ブーちゃんの右腕に魔力が集まり、熱となる。しかし雨のせいかあまり威力がありそうには思えない。
「(まずいな、MPが足りぬかもしれん)」
「(え、マジで?どうすんの?)」
「(どうにかして我にMPを送ってはくれないか)」
ええ、送るってどうやって?けどこのままだと決定打に欠くし…仕方ない!気分だ!気分だけでどうにかするしかない!
ひとまずはブーちゃんにMPを送るイメージ、それを保ち続けよう。何か起きるかもしれない!うおおおおお、MP送れええええ!!!
【[――――――Lv―]を――します】
――ぇぇぇえええええ!!あ、やべ、見逃した。
と思った瞬間、俺の背中(今は腕時計でいうベゼル部分)の発条が激しく回転した!ブーちゃんの拳を纏う魔力の量が突然跳ね上がり、その右腕の炎は降ってくる雨すら蒸発させる。
「え、ちょ、何その右手、なんで雨降ってるのにそんな燃えてるの?ちょっ、それは――」
火竜王ブレイドは、静かに息を吐き、拳を腰まで引く。
「――唸れ我が拳、受けよ我が奥義!はぁっ!」
火竜王の右正拳が、雷竜王の腹に深々と刺さる。みしみしと骨の軋む音が、その重さを物語っていた。
「【烈火――」
拳が半回転し、雷竜王の腹を容赦無く抉り込んでいく。
「轟、吼――、拳】!!」
瞬間、火竜王の拳に蓄積された魔力が爆発し、きりもみしながら雷竜王の身体は遥か彼方に吹き飛んで行った。焼け焦げた軌跡が火を噴きながら地面に彼方まで続いていた。
「…思いつきにしては悪くないネーミングだったね」
「言うな。今になって恥が出てきた所だ」
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アル達が雷竜王を連れて離れると同時に、聖サーラの斥候部隊との戦闘も開始された。大声で吼えながら突撃してくるゴブリン達をギルド部隊が切り進んでいく。
「地上戦の方ははっきりいって杞憂だったな。ローズ、悪いが上空の奴らを減らしてくれないか?」
「いいわ、軽く魔法で撃ち落してやれば良さそうね」
ローズが詠唱して魔法を展開しようとした時、どこからか何かが近づいてくるのをイフの耳が捉えた。
「注意しろローズ!大型の何かがかなりのスピードで接近している、コレは不味いぞ――」
「―――ぁぁぁあああああああぶべらっ!?」
素っ頓狂な断末魔が聞こえてきたと同時に激しい衝撃と衝突音が防壁の外側から響き渡り、山積みにされた武器がガシャガシャ音を立てて崩れていく。
「何があった!?ショーン、報告しろ!」
先に防壁の確認に向かっていたショーンは唖然とした顔で下を指差した。
「マスター、ローズさんも…これ見てください」
慌てて確認に向かった二人が目にしたのは、防壁の下で腹を焦がして気絶した雷竜王の姿。それはアル達二人の勝利を確約するには十分すぎる成果だった。
「おお、やってくれたみたいだな!これで心置きなく攻めに転じる事ができるぞ…よしお前ら!雷竜王が倒れた今、俺達を阻むものは一切無くなった、後はお前らで好きなように動いても構わんぞ!」
グルードも無事に事が進んで一安心といった所だろう、胸を撫で下ろしながらメンバー達に突撃の指令を出す。
響き渡るメンバー達の怒号の中、空の向こうからは火竜王が悠然とこちらに向かって飛んできていた。
――――――――――
「ローズ、無事に倒せたぞ!」
意気揚々と戻って来た俺達を見ながらローズは何も言わずに下を指差すので、恐る恐る見てみるとそこには防壁に激突し気絶した雷竜王が転がっていた。
なんていうか、ほんとゴメン。防壁、かなり崩れちゃってるし。
「今からリーダー格叩きに行くからさ…ブレイド、あんた乗っけてくんない?」
「うむ、いいぞ。アリス、お前は空にいる羽虫共を片付けろ」
さっきの戦いのテンションがまだ残ってるのかな?上から目線で話されたアリスが物凄く不機嫌になってる。その不機嫌な顔のままアリスは飛んで行った。――ブーちゃん、後でたっぷりしばかれるな。
アリスに続いて俺達もリーダーを叩くべく出発した。地上の様子は特に問題も無く、ギルド側の圧倒的優勢のままだ。程なく飛ぶと、お馴染みの黒ローブが数人立っているのが見える。
「あれが頭っぽいな!ブーちゃん、ブレス!」
「言うまでも無い!」
雨で多少火力が落ちているものの、ブーちゃんの強烈なブレスが地表を焼き払う。
「やった!?」
いや、それ言っちゃったらさ、やってないパターンに入っちゃうから…なんて思っていると炎がかき消され青色と水色、2頭の竜が姿を現した!…パッと見ではどっちがどっちか分からん。
「なんだ、あっち側も召喚したのかい…見た感じ、竜王クラスっぽいけど――」
「水竜王フロライン、それに――氷竜王エルクールだ。相性は最悪といってもいい」
ブーちゃんの声が少し低くなった。まさかのダブル竜王、ちょっとコレきつくない?天気もまだ雷雨のままだしブーちゃんのコンディション悪いままだよ?
「仕方ない、一番相性が悪そうな水竜王はアタシが相手をする。ブレイドが氷竜王の相手を!」
「う、うむ…」
あ、あれ?ブーちゃん、物凄く調子悪そうなんだけど…もしかしたらブーちゃんとアイツの間に何かあったのかな?
結局はそのままブレイドとエルクールが正対する所にまで至ってしまった。
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発条竜【ランクB】 Lv1/24
名前:アルフレッド
状態:被服
HP:1330/1330(+630)
MP:805/805(+345)
ATK:598(+338)
DEF:731(+391)
MAT:455(+195)
MDF:858(+418)
AGI:437(+187)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv8][HP自動回復Lv5][ダメージヘイトLv6]
[ラッキーショットLv2]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv8][被服補正Lv6][被服吸収Lv6]
[火魔法Lv5][水魔法Lv2][氷魔法Lv5][雷魔法Lv1]
[風魔法Lv2][土魔法Lv1][光魔法Lv1][闇魔法Lv1][転移魔法Lv1]
[ネイルガンLv4]
[ロングダッシュLv3][ホーミングLv2][MPチャージLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]
[火炎放射器][高性能カカシ][解体業者][戦車][怪獣][送迎バス][事故車][道路清掃車]
[軍団長][一城の主][火竜王の鎧][パワードアーマー][転生者www][ハイブリッド車]
[エアコン][漬物石][周回飛ばし][拘束具][拷問器械][処刑台][不発弾][背番号1]
[大根役者][地元の英雄][司令官][袋の鼠][背水の陣][逆転の貴公子][伝説の賭博師]
[ルームライト][8月31日の悪夢][レトロフューチャー][見習い賢者]
[トランスポーター][称号バーゲンセール]*[マジックアイテム]
補正:[HP+90%] [MP+75%] [ATK+130%] [DEF+115%]
[MAT+75%] [MDF+95%] [AGI+75%]
[火攻撃+200%] [火耐性+50%]↑ [水攻撃+50%] [水耐性+50%]↑
[氷攻撃+70%] [氷耐性+45%]↑ [雷攻撃+40%]↑ [雷耐性+35%]↑
[風攻撃+50%] [風耐性+40%]↑ [土攻撃+45%] [土耐性+40%]↑
[光攻撃+50%] [光耐性+40%]↑ [闇攻撃+90%] [闇耐性+40%]↑
[対虫系+10%] [対鳥系+40%] [対獣系+40%] [対構築物系+20%]
[対人間+50%] [対高Lv系+10%] [対低Lv系+10%]
[取得経験値+80%] [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]
[遠距離射程+70%]
[MP消費量-10%]
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称号詳細――
[マジックアイテム]:装備した物を魔力で強化するアイテム…ってこれ、完全にただのマジックアイテムですね。[全属性の耐性+5%]




