第17話:エースピッチャーはモテ男の代名詞
11/29追記:称号[背番号1]のステータス反映を忘れてたので追加しました。
第17話:エースピッチャーはモテ男の代名詞
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ついに聖サーラ王国はローズを完全に捉えた。
今になって何故ローズの動きが知られたのか、何故ローズを追うのかなど…分からない事は沢山あるが、今のところ俺達に出来る事は限られているので今日もただひたすら街道を歩いていく――はずだった。
「ん?あれ…アリスだよな?」
俺が指した先から、アリスが猛スピードでこちらに向けて飛んで来ている。呼んだの?とローズの方を向くけど、ローズは首を横に振った。
アリスはかなり焦っているのか足を痛めるんじゃないかって位に乱暴な着陸をする。
「ローズ、大変よ!この先の村が魔物の群れに襲われているの、確かこの先の村に用があるはずだったんでしょう!?」
「な、なんですって!?」
確かにこれは一大事だ。次の村でもし補給できなかったら――
「なるほどな」
何かを掴んだのか、イフが頷きながら続ける。
「ローズ、事態は思った以上に深刻かもしれないぞ。今回も魔物を操っているのは『奴ら』だろう、そうなれば恐らく今回の目的はローズを干す事かもしれないぞ」
そこまで言われて俺も段々話が見えてきた。
つまりはこうだ。今まではローズに直接攻撃を仕掛けてきていたが、どれもイフや俺によって阻止され続ける。では次はどうするか?
直接向かってダメなら、間接的に殺せばいい。昨夜聞いた話の通りなら、襲っている村では少なからずローズ達の名が流されるはずだ。そうなれば俺達は村でのが休憩が出来なくなるし、下手したら村人から攻撃されるかもしれない。
アリスが背中を向けて座りながら、ローズに首で促す。
「早く乗って!早く対処しないと大変なことになるわ!」
「ええ、すぐに向かいましょう!イフ、テレジア、それに白ちゃんと黒ちゃんも乗って!」
ローズに続いてイフ達もアリスの背に乗り込んだ。…え、ちょっと、俺は?
「アルを乗せられるほどわたしは大きくないわ、後から着いてもいいからアルは徒歩でお願い!」
「徒歩ホ」
【称号:不発弾を入手しました】
全員に睨まれたので慌てて咳き込んで誤魔化した。
入手した称号は不発弾か。もしコイツが爆発してたら俺は一体どうなってたんだろうか。考えただけでも恐ろしくなる…
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アリス達が次の村へ向けて飛んで行った。あの調子だと30分も掛からずに到着するだろう。
「さてと、俺も走りますか」
俺は[ロングダッシュ]を発動させ、思いっきり地を蹴った。今までは他の皆と歩調を合わせてて自分のスピードが分からなかったが、いい機会だし今のうちに検証しておこう。
街道の横に並んでいる木々を目安にすると今の俺は時速30kmといった所だな。走るにしても物凄く速い!…けど。
「やっべぇ、[MP回復]とかあったら超欲しいレベルでMP減ってるし!」
思わず声が出るくらいに減っていた。5分程しか走ってないのにもうMPを3割以上消費してる。
これは休憩時間を考えると相当出遅れるぞ…村がピンチだっていうのに!
仕方なく[ロングダッシュ]を使わずなるべくMP消費を抑えて走っていると、前方に二人組が歩いているのが見えた。片方はロングソードを腰の左に提げた戦士、もう片方は白いローブに藜の杖を持ったヒーラーという極めて典型的な構成のパーティだ。
「うお、すっげぇ!ゴーレムが走ってる!?」
「ここまで速く走るゴーレムなんて見たことありません!」
「そんなにゴーレムが走るのって珍しいの?」
「「しかも喋った!?」」
あ、ついつい話に割って入ってしまった。けど、ここでもたついているわけにもいかない。
「ゴメン急いでるから話は後にして!」
「どうしたんだ、そんな慌てて?」
「この先の村が襲われているらしくてな、連れが先に向かってるけど予断は許されない状況だから急いでる訳!」
白ローブの女性が、毛先が少し丸まった栗色の髪を解かしながら俺に話しかけてきた。
「転移魔法で送りましょうか?私達もその村に用事があるので」
願ったり叶ったりとはまさにこの事、天恵だ!早速頼むと、藜の杖を中心に魔法陣が出現する。そのまま合図も無しにいきなり俺達は村の中心部に転移された。
「皆さん、冒険者ギルドから来ましたのでもう大丈夫です!後は私達にお任せください!」
ローブの女性が大声で知らせると、応戦していた村人達は「助かったぞー!」とかいってはしゃいでる。
「すみませんが、あなたにも少し手伝っていただけませんか?」
ここまで送ってくれた運賃も兼ねて、俺はこの村で魔物達と戦うことになった。
今回の魔物はゴブリンの群れ。以前ロンドの街でイフがぶっ飛ばしてたあいつだ。
「さて、と…何から始めようかな?」
今回進化したことで[バリスタ]と入れ替えで手に入れたスキル、[カタパルト]を検証してみよう。
[カタパルト]は俺も聞いたことがあるけど、どっちの種類なのかが分からない。今の俺の体は完全に石だから投石器の方だと思いたいが、射出機の可能性も捨てきれない。
ひとまずはやってみないと始まらないから手近の石を数個拾って[カタパルト]を発動してみる。すると、俺の脳内にある動きについての情報が流れ込んできた。
「――おいおい、まじかよ…」
俺は石を持った右手を肩ごとを意識するように後ろに引き下げる。左肩はそれにつられて上に揚がり、上半身は大きく右に捩れる。その上半身と連動するように、左足は根元から高らかに上に、右足は膝が曲がり力が入る。そのポーズはまるで…
「こんな所で投球練習が役に立つなんて、人生何があるかホント分からないな」
人間の高校生だった頃に、甲子園を見て始めた投球練習。そのフォームは、昔の熱血野球アニメの再放送で見た「メジャーリーグボール1号」のフォームそのものだった。
その限界まで捻った全身の反動から来る球速は圧巻の一言、放たれた石は魔物の群れに一直線に飛んで行き…ものの見事に貫通していった。
【ドラゴーレムのレベルが4になりました】
【称号:背番号1を入手しました】
「すっげぇ…貫通してやがるぜ…」
戦士の男がしげしげと眺める中、俺は石を拾っては投げを繰り返す。どうやら新規入手した[ホーミング]のお陰で、ある程度まで狙えばほぼ確実に一撃で相手の急所を貫通し続けられるというなんともひどい壊れ仕様になってくれたようだ。
【ドラゴーレムのレベルが5になりました】
よし、これなら十分に戦える…んだけどさ。なぁロンデラ、やたらレベルの上がりが遅いのは気のせいかな?
『いいえ、今回はいささか相手とのレベル差が大きいので…やはり称号の補正があれど雀の涙程度しか入ってきていませんね』
マジか。んじゃあ今囲っているこいつら全員屠っても大した経験値にはならないって事か…安い時給で働かされてる気分。
【ドラゴーレムのレベルが6になりました】
でも上がらないよりはマシなので、このまま倒していくことにしようかな。うん、仕方ない。
「あれっ!?なんでアルが先にいるの?」
声が聞こえた方を向くと、たった今アリス達が村に到着した所だった。
「街道走ってる途中でさ、こいつらに会って転移魔法で飛ばしてもらったんだよ」
「ど、どうも…」
白ローブは恥ずかしそうに会釈する。そんな様子を見ながら、戦士の男は手伝うなら手伝ってくれと喚いた。
早速ローズ達も参戦したんだけど…うわぁ、テレジアの戦い方がかなりエグい。巻き付かれてるゴブリンは関節という関節を極められてるし、その傍らでもう1匹のゴブリンは彼女に丸呑みにされてる。
もし俺が眠れるなら、絶対その晩の夢に出てくるわ。
「なあ皆、前回と同様ならさ…」
俺が皆に提案したのは、以前ロンドの街でイフが俺に提案してきたのと同じ事だ。
「今回は人数も多いことだし、4ヶ所に分かれて探しましょ」
ローズはアリスに貰った地図を広げながら村周辺を指していく。村の周辺はぐるっと森に囲まれているのでリーダーが隠れるとしたらこの森の何処かになるだろう。
分担の結果、俺とローズとイフは村の東側を、戦士と白ローブとテレジアは村の西側をそして村の北側と南側は…
「ぷぴぷぴーっ!(北側は任せてください!)」
「プピー、プピッ(南側は拙者が受け持とう)」
なんと白ちゃんが北側を、黒ちゃんが南側を担当することになった。けど、俺とムートン達の間で念話が通じるし連絡が早く済むのも非常にありがたい。
アリスは相当飛ばしていたのかバテバテだったので、ここで休ませることにした。
「んじゃ白ちゃん、準備いい?」
ぷぴぷぴ言いながら頷いたので、俺は白ちゃんを優しく掴む。
「え、ちょっとアル。何する気なの…」
「白ちゃん、いきまーす!」
「ぷぴいいいいぃぃぃぃぃー……」
俺は村の北側に向いて[カタパルト]を発動させた。白ちゃんの元々の重量が非常に軽いので、すぐに空気抵抗やら何やらで失速するだろうがそれでもあっという間に白ちゃんは先にある森の中へ消えていった。
「よし、次は黒ちゃんだな」
なんか首振ってプピプピ言って嫌がっているように見えたけど気のせいにしておこう。[カタパルト]でぶっ飛ばされた黒ちゃんは南側の森へ消えていった。
「アルさん、でしたっけ?」
「アルフレッドだ、よろしく」
「アルフレッドさん、いざという時の為に転移マーカーを付けておいてもよろしいでしょうか?」
転移マーカー?何それおいしいの?
俺のアホ顔を見た白ローブは説明を加える。
「私の転移魔法でいつでも呼び出せるようにするためのものです、すぐに終わりますので」
行き違いがあっても困るし、あっちがピンチなら呼び出されても損は無いだろうな。ひとまず俺がOKを出すと、白ローブが俺の身体に触れながらブツブツと詠唱した。
「これで大丈夫ですね。では、私達も急ぎましょう。転移!」
白ローブ達とテレジアも西側へ行ったので、俺達も村の東門から森へ急ぐ事にした。
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村の北側では、白ちゃんが着陸態勢に移っていた。徐々に高度が下る中、着地しようとしたがタイミングを計り違い地面に激突してしまう。
そのままころころと地面を転がり、前方の木にぶつかって止まった。
「ぷぴー…」
ピヨピヨと頭上で回っていた星をぷるぷると頭を震わせ取り払う。
「ぷぴぷー…(さて、どうしましょうか…)」
ひとまずは当初の予定通りに森を怪しい人がいないか探索していると、運が良かったのか5分足らずでそれらしい黒ローブ二人組を見つけた。
「どうやら援軍が来たらしいぞ」
「へぇ、援軍か。まぁ来たところで俺たちの仕事は変わらないしな…平常運転でいこうぜ」
「だな」
「ぷぴー…(団長、こちらに二人いました)」
そんな二人の会話を聞きながら、白ちゃんは団長に念話を飛ばした。
「(お手柄だな、白ちゃん!早速…ん?ああ、分かった。白ちゃん、そっちにローズが向かう。それまでは無理するなよ)」
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村の南側、飛ばされた当初は動揺していたものの、次第に落ち着きを取り戻した黒ちゃんは鮮やかな着地を決めていた。
「プピッ!(仕事でござる!)」
黒ちゃんは音も無く猛スピードで木々を飛び移っていく。途中白ちゃんの報告を聞きながら探していると、その数分後に黒ちゃんも黒ローブ二人組を発見した。
「あれ?反対側と連絡取れなくなってる」
「なんだ、通信魔法の不備か何かか?」
「分からないけどさ、とりあえずリーダーに報告しとこうか」
「賢明だな、そうしとこう」
黒ちゃんも団長に念話を飛ばす。
「プピッ、プピィ…(団長殿、二人発見でござるが…)」
「(ん、何だ?)」
「プピィー、プピッ(ここと北側にはリーダーは居ない様でござる)」
「(よし分かった、そっちにはイフを送る。それまでに…待ってもいいし、黒ちゃんなら倒すのも訳無いだろうな)」
そこで念話が途切れたので、黒ちゃんはひとまず「仕事」に取り掛かることにした。
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戦士と白ローブ、テレジアは森の西側を進んでいた。白ローブは彼女自身の体で休憩中のテレジアを撫でている。
「スワンプバイパーなんて初めて直で触りましたけど…思ったよりもひんやりしてるのですね」
「しっ!アレ!」
戦士が会話を切るように注意を促すと、少し開けたところに黒ローブが一人だけ立っていた。ローブの背にはウロボロスを象った紋章が縫い付けられている。
「あの紋章は…聖サーラ王国の紋章だな」
戦士と白ローブが見合わせて頷くと、その黒ローブの前に飛び出した!
「なっ!誰だお前ら!?」
「村を襲っているのはお前か?」
戦士が突き出した剣にも怯まず、黒ローブはふふふと不気味に笑う。
「ああそうだよ。だが、そんな事聞いたところでお前達の死は決まっているのだよ!――我が願いを聞き、応え、顕現せよ――『火竜王』!!」
すると、黒ローブの足元から発現した魔法陣から、真っ赤な鱗と甲殻に身を包んだドラゴンが出現した!
「貴様らに恨みは無いが、覚悟して貰おうか」
「ヤッベェ、これガチでヤバいパターンじゃないのか!?」
「大丈夫よ、こちらも…転移、来て!アルフレッド!」
「(む、アルフレッド?)」
白ローブの隣に転移用の魔法陣が展開され、そこから蒼い大理石のような物で出来た竜型のゴーレムが飛び出した!
「呼ばれて飛び出て――ってあれ?ブーちゃん?」
一瞬の沈黙。一気に空気が変な方向に流れてしまった。
「お、おぅ」「む、むぅ」
挨拶ともいえない微妙な暗号めいた挨拶を交わす中、黒ローブが叫ぶ。
「火竜王、こいつらを殺せ!」
「ウ、ウラミハナイガ、カクゴシロー」
あまりの滑稽さに思わず噴き出しそうになったが思いっきりブーちゃんに睨まれたのでひとまずは合わせる事にしよう。
「ノ、ノゾムトコロダー」
【称号:大根役者を入手しました】
うっせぇ!誰が大根だ!これでもエキストラ出演勝ち取ったことあるんだぞこっちは!
「ひとまず皆はどこかに隠れていてくれ」
小声で伝えると、戦士と白ローブ、テレジアが頷いて死角になっている草むらに身を隠したので、ひとまず黒ローブから距離をとるため逃げ出すフリをした。
「ウワー、ニゲロー」
「マ、マテー、ニガスカー」
どうやらブーちゃんも理解してくれたらしく、俺とブーちゃんでとにかく黒ローブが見えなくなる場所へ移動した。
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ドラゴーレム【ランクC】 Lv6/12
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:1008/1008(+378)
MP:630/630(+180)
ATK:450(+225)
DEF:527(+242)
MAT:375(+125)
MDF:654(+269)
AGI:311(+96)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv7][HP自動回復Lv4][ダメージヘイトLv5]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv7][被服補正Lv5][被服吸収Lv5]
[火魔法Lv4][水魔法Lv1][氷魔法Lv4][風魔法Lv1]
[カタパルトLv3]
[ロングダッシュLv2][ホーミングLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]
[火炎放射器][高性能カカシ][解体業者][戦車][怪獣][送迎バス][事故車][道路清掃車]
[軍団長][一城の主][火竜王の鎧][パワードアーマー][転生者www][ハイブリッド車]
[エアコン][漬物石][周回飛ばし][拘束具][拷問器械][処刑台]*[不発弾]*[背番号1]
*[大根役者]
補正:[HP+60%] [MP+40%] [ATK+100%]↑ [DEF+85%]
[MAT+50%] [MDF+70%] [AGI+45%]↑
[火攻撃+180%]↑ [火耐性+35%] [水攻撃+30%] [水耐性+35%]
[氷攻撃+50%]↑ [氷耐性+35%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+25%]
[風攻撃+30%] [風耐性+25%] [土攻撃+25%] [土耐性+25%]
[光攻撃+20%] [光耐性+25%] [闇攻撃+60%] [闇耐性+25%]
[対虫系+10%] [対鳥系+40%] [対獣系+40%] [対構築物系+20%]
[対人間+50%] [対高Lv系-10%] [対低Lv系+10%]
[取得経験値+80%] [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]
[遠距離射程+60%]↑
[MP消費量-10%]
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バハムートン(白)【ランクB】 Lv4/50
名前:白ちゃん
状態:通常
HP:180/180
MP:310/310
ATK:100
DEF: 75
MAT:165
MDF:195
AGI:110
スキル:[ステータス閲覧][光魔法Lv2][僧侶の心得Lv1][MP自動回復Lv1]
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バハムートン(黒)【ランクB】 Lv8/50
名前:黒ちゃん
状態:通常
HP:370/390
MP:140/220
ATK:245
DEF:170
MAT:110
MDF: 85
AGI:235
スキル:[ステータス閲覧][闇魔法Lv3][盗賊の心得Lv2][HP自動回復Lv1]
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称号詳細――
[不発弾]:強烈に寒いギャグも、取り繕いさえ出来ればその後の惨劇は回避できるものです![炎攻撃+10%][氷攻撃+20%]
[背番号1]:ゴブリンを貫通できるだけの球速があればエースだって夢じゃありません、女子にモテモテですね![ATK+5%][AGI+5%][遠距離射程+20%]
[大根役者]:ほ、本当にエキストラ出演なんてしんたんですか…?あまりにも棒読みでしたけど…[AGI+5%]




