第14話:男泣きは気の使い方に困る
第14話:男泣きは気の使い方に困る
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アリスの言っていた村の門が見えてくると、ローズは伸びをしながら大きな欠伸をした。2時間掛かるところを4時間も掛けてしまえば疲れるのも当然だろうな、ホントごめん。
「やっっっっっっと着いたよ全く!もう今日は速攻休んでさ、次の目的地探しは明日にしよう!」
「あ、ああ…」
やたらイフの元気が無い、テレジアが心配そうに見ているが…
「うぷ――」
「が、我慢できなくなったら無理をしなくてもいいんですよ!?」
「大丈夫だ、一晩寝ればマシになるだろう…」
どうやらイフは完全に酔ってしまったらしい。まぁ俺が無理して悪路を飛ばしたのもあるだろうけど。うん、ごめんねー。
「おーい、今日この村に泊まりたいんだけどいいかな?」
ローズに聞かれた門番は、猛スピードで接近してくる俺にびっくりしたのかいきなり弓で撃ってきやがった。
「そ、村長に伝えるんだ!皆を避難させろ、いいな!?」
「ちょっと待って、コイツは味方だから安心して!」
「な、なんだそうなのか…」
「騙されるな!そうやって村に入ったところを――」
門番達は完全に俺を見て敵だと思い込んでしまったようだ。どうにかこのサイズを変えられ…そうだ!
「みんな、進化するから俺から降りてくれる?」
「ああ、その方が良さそうだね!」
ローズ達全員が俺から降りたのを確認し、進化を始める。
【トロイドラゴンからドラゴーレムへ進化しますか?】
早いところ進化して門番の誤解を解かないとまずい気がするしな、さっさと済ませてくれ。
俺の体がいつものように光に包まれ、サイズがどんどん小さくなってきているのが分かる。最終的には2メートル強にまで小さくなった。
「ゴーレムに進化しんたんだね」
「ああ、予想してた土くれの塊じゃなくてちゃんとした石造りの辺りに意匠を感じるよ」
「ふふ、それ本人が言うことかしら?」
俺の身体は磨かれた大理石のように表面が非常に滑らかで、なおかつ見た目も美しい。深い藍色とでも言おうか、この色?
鏡のように反射する体表を覗き込んでみると、普通にドラゴンの顔つきだった。雰囲気的にも8頭身をキープしてるな。
【ドラゴーレムへの進化が完了しました】
【スキル:念動力Lv6はスキル:念動力Lv7に統合されました】
【スキル:痛覚軽減Lv7を取得しました】
【スキル:被服補正Lv5を取得しました】
【スキル:被服吸収Lv5を取得しました】
【スキル:ダメージヘイトLv5を取得しました】
【スキル:火魔法Lv4を取得しました】
【スキル:水魔法Lv1を取得しました】
【スキル:氷魔法Lv4を取得しました】
【スキル:風魔法Lv1を取得しました】
【スキル:HP自動回復Lv4を取得しました】
【スキル:バリスタLv2はスキル:カタパルトLv3に統合されました】
【スキル:ロングダッシュLv2を取得しました】
【スキル:ホーミングLv1を取得しました】
【称号:漬物石を入手しました】
【称号:周回飛ばしを入手しました】
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あれ?ロンデラ、ちょっといい?
『何でしょうか?』
さっきのメッセージ、念動力あたりがなんか不自然な気がしたんだけど?
『アルさん、今なんて読みましたか?』
え、読みも何も普通に念動力じゃないの?
『実は前回の進化あたりから念動力ではカバーしきれない重量になっていたので、今回の進化から念動力に変えさせて頂きました』
それって何か違いってあるの?
『はい、以前アルさんがドラグドールだった頃に自身を浮かせて飛びましたよね?その自身を浮かせたりする力を全て自身の四肢を動かす為だけに集中させたのが念動力です。むしろこちらでないとアルさんは腕一本動かす事も難しいかもしれません』
マジか。そんなに俺重くなったの?
『あ、いえ…少なくとも前に会った火竜王なら軽々と運べるレベルですね』
逆にわかりにくい説明、有難うございました。乙。
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「な、何だコレ!急に小さくなったぞ!」
「これなら俺でも入って大丈夫?」
「しかも喋った!?」
「お、結構小さくなったもんだな」
「かっこいいです、アルさん!」
進化した俺に興味深々の二人の顔が俺の身体に映りこむ。
「喋る魔物がこんなに沢山…これは一体?」
「アタシはローズ、召喚士をしてる。んで、彼らはアタシが召喚した魔物だよ」
「ぷぴぷぴー(よろしくー)」
「プピ(うむ)」
ふわふわのムートン達が前に出てくれたお陰で、物々しかった面子にも柔らかい印象が――実際に柔らかいけど、あくまでも今回は印象の話――まぁ、要するに門番達もムートン達を抱いてモフってる訳だ。
「とりあえず今夜はこの村で休みたいんだけどさ、宿まで案内してくれても?」
「はい、では案内しましょう」
門番達も警戒を解いてくれ、俺達を宿まで案内してくれた――
「――で、やっぱり俺達は馬小屋かよ畜生めっ!」
「まぁこの見た目ですし、仕方ありませんね」
「贅沢言うな、野宿を回避できただけでも有り難いと思え」
イフはすでに干草の山で休んでいる。…これ、燃えたりしないよね?
「けどさ、何で俺達は馬小屋で!ムートン達はローズと相部屋なんだよ!一番それが納得いかねぇ!」
干草のブロックをべしべしと叩くと細かい草がどんどん舞い上がり、イフが鬱陶しそうにフンと鼻を鳴らした。
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「夜も遅いのによくここまで辿り着いたな、お疲れ」
「ああ、早速だが宿を手配してくれないか?」
黒いローブに身を包んだ男が門番に案内され、村唯一の宿に着いた。
「いらっしゃい」
「とりあえず1泊だけ頼む」
「あいよ、コレ部屋の鍵ね」
男は鍵を受け取ると、部屋が並ぶ廊下を歩いていく。男は自分が取った部屋の扉をスルーし、ローズの居る部屋の扉の前に立った。
「ぷぴー☆(まてまてー)」
「プピー♪(捕まえてみろ)」
「ぷぴ?(あれ?あの人…)」
「プピ、プーピー…(ローズの部屋でござるな)」
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「ふむ、この部屋だな」
黒ローブの男が小声で詠唱すると、ドアノブに小さな魔法陣が現れる。数分後、ノブについていた鍵がカチャリと鳴った。
「ふぅー…――」
男はダガー片手に深呼吸し、部屋のドアノブに手をかけた。
一拍間を置き、男は勢いよくドアを開ける!
「死ねっ、ローズ!」
――ところが、ベッドの上にローズは居なかった。近くの窓が開いたままで、さらに布団が乱れている。
「クソッ、気付かれたか――」
「プピィィ!(刺客、死すべし!)」
「――え?」
既に男の首元には深々とナイフが刺さっており、そこから大量の血が流れていく。黒いぬいぐるみの腕に仕込まれたナイフは恐らく[盗賊の心得]によるものだろう。
「ついにここまでやるようになったんだね、あの国は」
背後から聞こえるローズの声は、冷たく、そして哀れみに満ちた声をしていた――
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「おかしい、もうそろそろ仕事を終わらせてこっちに合流するはずなのに…」
あの男と同じ黒ローブに身を包んだ女が、苛立った声で呟いていた。ローズが宿泊している建物から100メートル程離れた酒場には、今は彼女しかいない。
「まさかアイツ、しくじったんじゃ――」
「ぷぴぃぃぃー!!(ローズさんには手出しさせません!)」
「なっ!?」
謎の音に振り向いた瞬間、強烈な閃光が彼女の目を眩ませた。
「何コレ!?一体どういう事!?」
「ハイごめんねー、ちょっとゆっくりお話しようか」
彼女の全身の自由が突然利かなくなり、視界は闇に閉ざされた。
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【称号:拘束具を入手しました】
いやー、マジでびびったわ。ムートン達の念話?っていうのかな、あれがいきなり入ってきてびびったわ。
いきなり「近くに黒いローブ着た人いたら殺せ」とか物騒すぎますよ黒ちゃん。白ちゃんも「仲間がいるはずだから」と俺を叩き起こして引っ張り回すもんだからマジでびびった。
「それにしても黒ちゃんに白ちゃん、今回はお手柄だったな」
「ぷぴー♪(それほどでもー)」
黒ちゃんからも「プピ」とだけ返って来た。なんかイフみたいだな。
「アル、そっちはどうだい!?」
俺のいる酒場のドアを蹴破ってローズが駆け込んできた。
「ん、今は俺の中に閉じ込めてる」
「それがいい、色々と問いただしたいことがあるからね」
ローズは近くに転がっていた椅子を乱暴に手繰り寄せてどかっと座る。
…珍しくローズがキレてる。下手したら俺より先に手を下すんじゃないかって位にキレてる。おお、怖い怖い。
「さて、中のあんた、聞こえてんだろ?」
「ふん、この程度の拘束、わたしの――」
「はい吸収~」
すかさず[被服吸収]を発動させると、すぐに女は大人しくなった。
【称号:拷問器械を入手しました】
「で、用件は?」
「誰が言うっての、殺そうとしてる相手にさ」
「ふーん、やっぱアタシを殺す気だったんだね。で、誰の命令だい?」
「誰が言うかっての!分かってる?今のあな――」
「はいMP吸収~」
なんと[被服吸収]のスキルが5に上がったお陰で、HPとMPを選択して吸収できるようになったのだ。いやぁ、便利だねぇ。
「あぅー…」
中の人もMPが枯渇して完全に集中力が無くなった様だ。今なら何言っても答えてくれるんじゃないかな?
「で、誰の命令だい?」
「めいぇい――じゃなくれぇ――しょうきん――いっぱいかかってぅかぁ」
「あんたの国で?」
「うんー」
どうやらローズは何処かの国では賞金首になっているらしい。まぁ、彼女には思い当たる節があるからそんな事聞いたんだろうけど…
「そうか、よく分かったよ」
ローズは少し悲しそうな顔をしたが、すぐに元の顔に戻した。
「アル、吸収して」
「いいのか?」
「ええ、さっさと済ませて」
「――アル、明日の朝すぐにここを出るよ、いいね」
【ドラゴーレムのレベルが2になりました】
【ドラゴーレムのレベルが3になりました】
【称号:処刑台を入手しました】
俺は何かを聞きたかったが、それは聞いてはいけないものなんじゃないかって恐れが邪魔してしまう。沈黙だけが、そこには存在していた。
「ロォォォオオオ―――――ズ!」
だいぶ遅れて、イフが酒場に駆け込んできた。息は完全に上がって今にも吐きそうな位だ。
「遅ぇよ!もう何分経ったと思ってんだよ!もうムートン達が解決して…」
「ろ、ローズ、本当にすまない――本当にっ…俺は――!」
俺の文句を他所に、イフの眼からは大粒の涙がとめどなく零れ落ち、しきりに悔しそうに地面を前脚で殴る。ここまで感情を爆発させるイフは見た事も無かった。
…ローズの事、本気で思ってくれてんだな。改めてイフの思いの強さ、分かった気がするよ。
流石に今回は茶々を入れる気にもなれなかった。さめざめと泣くイフを背に、俺はひっそりとその場を後にした。
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ドラゴーレム【ランクC】 Lv3/12
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:960/960(+360)
MP:630/630(+180)
ATK:409(+199)
DEF:488(+224)
MAT:375(+125)
MDF:618(+254)
AGI:278(+72)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv7]↑[HP自動回復Lv4]↑[ダメージヘイトLv5]↑
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv7]↑[被服補正Lv5]↑[被服吸収Lv5]↑
[火魔法Lv4]↑*[水魔法Lv1][氷魔法Lv4]↑*[風魔法Lv1]
[カタパルトLv3]↑
[ロングダッシュLv2]↑*[ホーミングLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]
[火炎放射器][高性能カカシ][解体業者][戦車][怪獣][送迎バス][事故車][道路清掃車]
[軍団長][一城の主][火竜王の鎧][パワードアーマー][転生者www][ハイブリッド車]
[エアコン]*[漬物石]*[周回飛ばし]*[拘束具]*[拷問器械]*[処刑台]
補正:[HP+60%]↑ [MP+40%]↑ [ATK+95%]↑ [DEF+85%]↑
[MAT+50%]↑ [MDF+70%]↑ [AGI+35%]
[火攻撃+170%] [火耐性+35%]↑ [水攻撃+30%] [水耐性+35%]↑
[氷攻撃+30%] [氷耐性+35%]↑ [雷攻撃+20%] [雷耐性+25%]↑
[風攻撃+30%] [風耐性+25%]↑ [土攻撃+25%] [土耐性+25%]↑
[光攻撃+20%] [光耐性+25%]↑ [闇攻撃+60%] [闇耐性+25%]↑
[対虫系+10%] [対鳥系+40%] [対獣系+40%] [対構築物系+20%]
[対人間+50%]↑ [対高Lv系-10%] [対低Lv系+10%]
[取得経験値+80%] [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]
[遠距離射程+40%]
[MP消費量-10%]
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バハムートン(白)【ランクB】 Lv3/50
名前:なし
状態:通常
HP:170/170
MP:290/290
ATK: 95
DEF: 70
MAT:150
MDF:180
AGI:100
スキル:[ステータス閲覧][光魔法Lv2][僧侶の心得Lv1][MP自動回復Lv1]
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バハムートン(黒)【ランクB】 Lv4/50
名前:なし
状態:通常
HP:310/310
MP:180/180
ATK:185
DEF:130
MAT: 90
MDF: 65
AGI:175
スキル:[ステータス閲覧][闇魔法Lv2][盗賊の心得Lv1][HP自動回復Lv1]
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称号詳細――
[漬物石]:ゴーレムの進化記念です。落ち込むついでにどうぞ。[DEF+10%][MDF+5%][AGI-5%]
[周回飛ばし]:植物素材から鉱物素材へと生まれ変わる者。この調子でどんどん進化しましょう![全パラメータ+5%]
[拘束具]:相手の自由を奪うのは戦いの基本!そこからの連携を見出してこその…ええと、何なのでしょう?[DEF+5%][MDF+5%][全属性の耐性+5%]
[拷問器械]:うわぁ、えげつないことするんですね…これ現世でやったら確実に捕まりますね。[ATK+5%][MAT+5%][対人間+20%]
[処刑台]:遂にアルさん、越えてはいけない一線を越えてしまったのですね…残念です。[ATK+20%][対人間+30%]




