第13話:わが子の成長は誰だって嬉しいもの
第13話:わが子の成長は誰だって嬉しいもの
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ローズ達とリザードマンの集落に滞在した明け方、火竜王ブレイドとの戦いの傷を[HP自動回復]で癒していると朝焼けの中を何かがこちらに向かって飛んで来るのが見えた。
「ローズ、アレ何だと思う?敵ではなさそうな感じなんだけどさ」
「お、来たね!あいつはアタシが呼んだんだよ」
ローズは黄色い犬笛のような物をちらつかせる。コレで呼んだみたいだな。
「なんだ味方なのか、呼んだなら呼んだって言ってくれればいいのに」
「ゴメンゴメン、忘れてたよ。まだアルは知らないんだったね」
ローズと話している間にそれは地上に降り立った。俺よりもふた回りほど小さい黄色い飛竜がローズに翼を振る。
「ハァイ、ローズ!久しぶりね、元気にしてたぁ?」
「おかげさまでね、アリスも元気そうで一安心よ」
あー、こいつがアリスか。そういえば定期的に情報を持ってくるって昨夜言ってたもんな…という事はこの先の目的地を決めるために必要な情報を貰うって事か。
「あら、木竜…ではないわねぇ、どちらさまかしら?」
「えっと、紹介するよ。コイツはアル――えーと、そういえばアルの種族って何なの?」
俺は前脚を出しながら自己紹介をした。
「ローズから聞いてるよ。俺はトロイドラゴンのアルフレッドだ…って言っても、竜族じゃなくてゴーレムの類なんだけどな。とりあえず、よろしく」
俺が出した前脚の意図を理解してくれたのか、彼女も翼を前に出して握手をしてくれた。
「定期的に情報持ってきてくれてるんだろ、ローズに呼ばれてきたって事は何かいい物持ってるんじゃないか?」
アリスはふふんと得意そうに鼻を鳴らすと、肩に掛けてあった鞄の留具を足で器用に外して中から一枚の地図を出してきた。
「いつもの街からの音じゃなかったから念のために持ってきてたけど、どうやら役に立ちそうで安心したよ」
「流石アリスね!ちなみにココから一番近い大きな街ってどれくらいかかるかしら?」
「ロンドの街ならここから30分もかからないけど?」
「そこから出てきたの。それ以外だとどの位かしら?」
ロンドの街から出てきたって事は、俺の生まれた街、ロンドって名前だったのか。
聞かれたアリスは困ったようにローズに提案してきた。
「ロンドの街以外の大きな街となると…ここから飛んでも6時間はかかるわねぇ。徒歩となったらもっと時間が掛かっちゃうわぁ」
飛んで6時間!?時速40キロで飛んだとしても240キロか、徒歩だと50時間くらいは掛かりそうな距離だな。
あ、でも今ここにはブレイドがいるんだった!それなら6時間も掛からずに到着できそう――
「む、アリスではないか」
「あらぁ火竜王サマともあろうお方がどうしてこんなド辺境にいらっしゃるのかしら?」
「色々っ…色々とあったのでな!」
「ま、大方また誰かに騙されて召喚されたんでしょうけど」
ブーちゃんよ、完全にバレてるぜ。アリスもブーちゃんについては知ってたんだな、流石情報通。
「そうそう言い忘れていたわ。火竜王サマはすぐに出発ね、竜神様からの呼び出しだそうよぉ」
「ぬう、何と…仕方ない。ではアルにローズ、我は出発するのでな、旅の運を祈っているぞ」
ブレイドはそう言い残してそそくさと飛んでいってしまった。
――あれ?アシが無くなっちゃった。徒歩50時間コース決定?
「やっべぇ!本気でアシが無くなっちまったよ!ローズ、どうするつもりなんだ!?」
「大丈夫よ、村くらいの規模ならここから飛んで1時間位で着くからねぇ」
無茶苦茶テンパってる俺を宥めるように、アリスは補足してくれた。飛んで1時間なら徒歩で…大体8時間か。
「それでも長いわっ!」
「あら、あなたのその車輪は飾りなのかしら?」
アリスがニヤニヤしながら俺の足元の車輪を指した。やっべ恥ずかしい、さっきまで完全に忘れてた。車輪使えばもっと早く着くんだった。多分2時間もあれば到着できる距離だなコレ。
「ていうかアリス、アタシ達乗っけて連れてってくれない?」
ローズがそう聞いた瞬間、アリスは露骨に嫌そうな顔になった。
「勘弁して頂戴、面倒事はゴメンよぉ。とりあえずその地図はあげるから!じゃあね!」
そう言ってアリスもそそくさと飛んで行ってしまった。ううー、さっさと進化して運んでもらおうと思ったのに…
「進化は目処がついてからにして頂戴、貴重な移動手段なんだからね」
ローズにも釘を刺されてしまった俺は、げんなりしながら出発する。
「アルさん、ローズさん、本当に有難うございました!」
お、誰かと思えば妹トカゲちゃん…もといサキちゃん。
「他のみなさんも感謝していますが、私が代表してお礼を…」
「大変な目に遭ったのに滞在させてくれたんだ、いいってことよ」
「おいアル、さっさと出発しろ。燃やすぞ」
折角クールにキめてたのにコゲ犬に邪魔された。とりあえず腹が立ったから[被服吸収]でHPとMPを貰っておこう。
「くっ…何をするんだ!?」
「運賃。」
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リザードマンの集落を出発した俺達は、地図に記された村に向けて進んでいく。
嬉しいことに、AGIが上がったおかげで燃費が少し上がってる。相変わらず大食いな事と休憩が必要になる時間は変わらないが、1回に進む距離が大分延びてくれた。
「そうだアル、ちょっと翼広げてみて」
「いいけど…何するんだ?俺飛べないぞ」
ひとまず言われるまま翼を広げてみると、ローズが何かを詠唱し始めた。
――と、急に俺の後ろから猛烈な追い風が吹いてきた!帆のように風をフルに受け止めた翼のお陰で、俺の体が少しずつ前進していく。
【称号:ハイブリッド車を入手しました】
「へぇ、風力か。これなら燃費もさらに上がりそうだな」
追い風に乗って進む中、俺の中ではローズが暇つぶしにドール達を観察しているようだ。
「ぷぴー(そんなに見られたら緊張するのですが…)」
「プピ…(団長殿、ちょっといいでござるか?)」
だ、団長殿なんて照れる…けど、たった2人の上に立つ俺は団長って言えるのかな?ていうかござる口調って。聞いてて恥ずかしくなる。
「(どうした?)」
「プーピー…!(拙者、進化しそうでござる…!)」
「ぷぴ!?(え?私もなのですが!?)」
おおう、二人まとめて進化するのか。一応ローズに知らせておこう。
「――てな訳だからさ、あんまり刺激しないでくれよ?」
「OK、分ったよ」
しばらく静かになったかと思ったら、急にローズが騒ぎ出した。
「何コレ!?可愛すぎる!」
「ぷぴぃ~!(ひえぇ~!)」
「プ、プピ(そ、そんなに強く抱くな、苦しい)」
な、何だよ…そんな反応されたらどんな姿になったのか気になるじゃないか!
「ローズ、俺にも見せてくれ!」
「ハイ!」
物凄い反応スピードで背中のハッチを開くとローズが飛び出してきた。彼女の腕には高さ60cm、5頭身くらいのドラゴンのぬいぐるみが抱かれていた。
ふわっふわの外見をした、白と黒のぬいぐるみ…こ、これは!
「かわいすぎる!」
「でしょう!?」
「ぷぴ…(な、なんだか恥ずかしい)」
「プピッ(言うな)」
「ちなみにお前達、種族は何になるんだ?」
「ぷぴー…(えーと…)」
口頭ではあるが、大まかなステータスを教えてくれた。
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バハムートン(白)【ランクB】 Lv1/50
名前:なし
状態:通常
HP:150/150
MP:250/250
ATK: 85
DEF: 60
MAT:120
MDF:150
AGI: 80
スキル:[ステータス閲覧][光魔法Lv2][僧侶の心得Lv1][MP自動回復Lv1]
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バハムートン(黒)【ランクB】 Lv1/50
名前:なし
状態:通常
HP:250/250
MP:150/150
ATK:140
DEF:100
MAT: 75
MDF: 50
AGI:130
スキル:[ステータス閲覧][闇魔法Lv2][盗賊の心得Lv1][HP自動回復Lv1]
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バハムートじゃなくてバハムートみたいなムートン生地のぬいぐるみって訳ね。うん、かわいい。一応仮として白ちゃんと黒ちゃんで区別しておこう。
名前の欄が無しになってるし、区切りが付いたら名前を付けてあげるのもいいな。
「俺と同じウェアドラゴンにはならなかったみたいだな」
『どうやら突然変異種のようですね』
「へぇ、突然変異起きる時もあるんだな」
いわゆるミュータント的な何かを想像していると、空の向こうから大きなカラス型の魔物が飛んできた!
「ぷぴっ!(迎え撃ちましょう、黒さん!)」
「プピー!(うむ、行くぞ!)」
ローズの腕から逃れたムートン達が、あっという間に背中のバリスタを操作して魔物を撃ち落してしまった。
ちょっと前まで碌にハンドルも回せなかったのに…進化ってすごいんだな、改めて思わされたよ。
「ローズ、俺も何か役に立ちたいしさ…新しく魔法覚えさせてくれないか?パパッとさ」
前回と全く同じく、「だからそのパパッとが一番難しいんだって…」と文句を言いつつもちゃんと教えてくれるあたり、ローズはやっぱり凄いんだなと思わされる。
【スキル:水魔法Lv0を習得しました】
【スキル:風魔法Lv0を習得しました】
「よし、早速試してみるぞ!」
俺が水魔法の元となる魔力を体内に巡らせると、中にいたローズが文句を言ってきた。
「ちょっとアル、中途半端に床材が湿ってて気持ち悪い!服も座った所だけ濡れてる!」
「あ、でも私はむしろ心地いい感じがします」
「逆に俺は体力が削れていってるがな」
どうやら俺の身体は中途半端に湿っているらしいな、スワンプバイパーには心地よく、ヘルハウンドには不快なのも水属性ならでは…といった所か。
次に、風魔法の元となる魔力を巡らせる。
「そよ風が心地いいですね」
「窓が無い分ありがたいな」
どうやらそよ風程度だが風が吹いたらしい。込める魔力の量によっては風量も変えられそうだな。
…ん?という事は…
今度は氷魔法と風魔法を複合してみよう。
「っはぁー…、涼しぃー」
「やっぱり夏場はコレがないといけないですね…」
「逆に俺は体力が削れていってるがな」
【称号:エアコンを入手しました】
2回目ご苦労、イフ。おかげで称号も取れたことだし、このまま気分良く次の場所へ向かうことにしよう!
結局は移動以外にMPを注ぎまくったので休憩のペースが上がったのは言うまでもなく、目的地に着いたのは予定の昼間より大きく遅れた夕方前になった頃であった。
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トロイドラゴン【ランクD】 Lv24/24
名前:アルフレッド
状態:通常
HP:448/875(+310)
MP:104/596(+154)
ATK:311(+122)
DEF:387(+152)
MAT:344(+98)
MDF:514(+182)
AGI:255(+66)
パッシブスキル:[痛覚軽減Lv6][HP自動回復Lv3][ダメージヘイトLv4]
スキル:[ステータス閲覧][発声]
[念動力Lv6][被服補正Lv4][被服吸収Lv4]
[火魔法Lv3][氷魔法Lv3]
[バリスタLv2]
[ロングダッシュLv1]
称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]
[二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]
[神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]
[キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]
[火炎放射器][高性能カカシ][解体業者][戦車][怪獣][送迎バス][事故車][道路清掃車]
[軍団長][一城の主][火竜王の鎧][パワードアーマー][転生者www]*[ハイブリッド車]
*[エアコン]
補正:[ HP+55%] [ MP+35%] [ATK+65%] [DEF+65%]
[MAT+40%] [MDF+55%] [AGI+35%]↑
[火攻撃+170%]↑ [火耐性+30%] [水攻撃+30%] [水耐性+30%]
[氷攻撃+30%]↑ [氷耐性+30%] [雷攻撃+20%] [雷耐性+20%]
[風攻撃+30%]↑ [風耐性+20%] [土攻撃+25%] [土耐性+20%]
[光攻撃+20%] [光耐性+20%] [闇攻撃+60%] [闇耐性+20%]
[対虫系+10%] [対鳥系+40%] [対獣系+40%] [対構築物系+20%]
[対高Lv系-10%] [対低Lv系+10%]
[取得経験値+80%]↑ [進化必要レベル-20%] [HPMP吸収率+40%]
[遠距離射程+40%]
[MP消費量-10%]↑
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称号詳細――
[ハイブリッド車]:これぞ最新技術の結晶!…ではなく、ただのMP節約術だったり。[AGI+5%][MP消費量-10%]
[エアコン]:火魔法と氷魔法と風魔法さえあれば出来ちゃうなんてアラ不思議!どうしてこの世界の人はコレを思いつかなかったのでしょうか…?[火攻撃+10%][氷攻撃+10%][風攻撃+10%]




