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ドラゴンになりたいッ!!  作者: コロッとしたもの
第2章:「お、今度はちゃんとドラゴンだ!」
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第40話:(S氏)「アルフレッドは…色々とルーズなのだな」

執筆に時間がかかってしまいました…いつもより短めです(´・ω・`)

12月5日追記:終盤のセリフの主が分かりにくかったので修正しました!

第40話:(S氏)「アルフレッドは…色々とルーズなのだな」


――――――――――


 俺達がセントドレイクを発って数時間。ギレットへの道中にシク王が先代国王――前世のセク達について話してくれてた時にその報せは突然届いた。


《二つ名:くすぶる業火【ATK+20% MAT+20% 火攻撃+20%】》


「あ……」

「どうしたのだ?」

「いや、何でも…ないよ」


 くすぶる業火。くすぶってるならまだ何もやらかしてはいないだろうけど、短気なアンジーなら何かするのは時間の問題か…けどアンジーはゼッドを連れて一体全体何を企んでるっていうんだ?

 今あいつがどこにいるのかすらも分からない状態でこっちにまで飛び火するような事ならそれこそ厄介な事になる。セントドレイクの人たちには悪いけど少しだけ急いでもらおう!

 そう思って進軍ペースを上げるようシク王に頼んではみたものの、やっぱり数千人規模の大軍をホイホイ動かすのは無理があるそうだ…まあ冷静に考えればそうなんだけど。


 そのまま夜になり、さすがに夜動くのは目立ちすぎるので休むことに。俺はシク王に招かれ同じテントで有難く寝かせて貰うことになった。でも正直アンジーの二つ名が変わってからは何が起こるのか気が気じゃない…ストレスで胃に穴が開きそうだ。


「大丈夫かアルフレッド、昼から様子がおかしいぞ」

「ごめん、大丈夫だから心配しないで」


 言ってる自分ですらコレ絶対心配させるパターンだなとは思いつつもテントから抜けた俺は野営地の中を歩き回ってみる。リザードマンの兵士たちは見張りについたり装備のチェックをしてり、酒を飲みながら談笑していた。

 森林地帯と荒野の中間ほどの環境にある野営地。その喧騒から離れた小さな丘に上がってゆっくりと座ると夜風が翼膜に当たって火照った体が冷やされ気持ちいい。


「あー涼しい…あれ?シク王?」


 俺の後を追ってきたのか丘を上がるシク王が目に入った、全身を覆う鱗が光を反射して綺麗…だけど目立つな。そのまま隣に座り込むと俺と同じように翼をめいっぱい広げて涼みながら、お互い何も言わないままその時間を過ごしていく。


 ――コレって何か話した方がいいのかな?昔話はもうほとんど終わってるし今はこれと言って話題も無いんだけど、微妙な空気の中ずっといるよりはマシなはず。ここは勇気を出して…


「えっと――」


 言い出したはいいけど先が思い浮かばない。うう、気まずい…


「と、鳥が綺麗だね」


 自分で言い出しておいてなんだけど、一体何言ってるんだろう俺。苦し紛れに月をバックに飛ぶ鳥の群れを指さしながらしどろもどろしている様を見て、シク王も察してくれたのか「ああ、綺麗だな」なんて合わせてくれてる…うう、穴があったら入りたい。


「アルフレッド、初めに聞いた時から気になってはいたのだが『案山竜壊し』…ギレ・モリトールとはどのような関係なのだ?」

「ギレと知り合ったのはほんの数日前だよ、まだ関係という関係じゃない。まぁ、なんて言うか…「前世」でご先祖さまのカラスに酷い事しちゃってね?

 その事をギレに自首したら急に態度変わって一緒に行動するようになったんだ」

「烏…昔母が話していた事があったな、確かあの時のアルフレッドは案山竜(かかし)で…あっ」


 そこで彼も察したのか声を詰まらせてしまった。なんていうか…ホントごめんね。

 それからはお互い何も言えないまま微妙な空気がただただ過ぎていく。空を飛ぶ鳥の群れを眺める位しか出来ない俺はヘタレなのか?


「ギレはどうして態度を改めたのかな?」

「ふん、自分の愚かさにでも気付いたのだろう。ともあれ我々に関与しないと約束したのならばそれに越したことはない、これからの進軍も捗る筈だ」

「それなら何より」

「では我は休む。アルフレッド、お前も夜更かしは程々にな」


 軽く返事をしてからは引き続きまったりと涼みながら空を見上げる…うん、空気も澄んでて綺麗だ。


『おい』


 突然ブーちゃんがオーブ越しに真剣な声で呼んだ。どうしたんだ一体?


『さっきから飛んでるあの群れ…おかしくないか?』


 そういえばさっきから見えてる鳥の群れ、月をバックにしたまま俺の視界に入りっぱなしなんだよな。普通見えなくなる筈なのに何なんだろう、嫌な予感がする。

 いや、現にこっち目掛けて急降下してるじゃないか!?このままだと――


『避けろ!』

「そう言われても…わわっ、[情報解析]!」



――――――――――――――――――――――


ガルーダ・クロウ【ランクB】 Lv11/50


 名前:レミー・モリトール


二つ名:リボンスの尖兵【ATK+200% DEF+200% AGI+200% 被回復量-50%】


 状態:闇駆け【夜間限定AGI+100%】


 HP:900/900

 MP:550/550

ATK:2550(+1700)

DEF:2175(+1450)

MAT:535

MDF:560

AGI:3600(+2700)


スキル:[ステータス閲覧][発声][闇駆け][風魔法Lv6][闇魔法Lv6][ロングダッシュLv4]


――――――――――――――――――――――



 慌てて回避した場所は既に巨大な鉤爪によってズタズタになっていた。おー怖い怖い、やっぱり殺しにかかってる奴のプレッシャー半端ないって!


「成程な やはり貴様が 噛んでたか」

「レミー!」

『後続が突っ込むぞ、気をつけろ!』


 レミーに続き鉤爪を突き立てたカラス達が次々と襲いかかる!ゴロゴロと地面を転がりながら避けてはいくけどあまりにも多勢に無勢、限界なんてすぐそこだ。くそっ、[アイテムスロット]発動!


【アイテムスロット:発動します(消費MP:154)...】

【[竜革の財布]:[ロック烏の風切羽]:[バックパック]】


『不発ではないか!次の発動まで耐えられるのかアル!?』

「出来るか出来ないかじゃなくて、出来なければあっという間にほぐし身なんだ!選択肢なんて無いよ!」


 とはいえ眼前に迫るロック烏の大群…流石にまずいかも。でもやらなきゃいけない状況なんだもん、仕方ないじゃないか!


「まずはコイツでどうだ!?[サンダーブレス]!」


 進化した時に手に入れてた[ブレス中級]、そのうちのひとつである雷属性のブレスは口から電撃を放射する至って普通の攻撃なんだけど…

 見た目とは裏腹に激しい発光だけで電撃ダメージ自体はほとんど入ってる印象がない、目くらまし程度にしかならない残念な奴だったか。


「今のうちに援軍頼まないと――」

「死ね」


 そのブレスの切れ目を狙って突っ込んでくるレミーの目には殺意がありありと見て取れる。…あれ?これってかなり不味いんじゃないかな?

 ブーちゃんがなにか喚いてるけど、何故か俺の体はほとんど動かずただ目と鼻の先にあるレミーの尖った嘴を見つめているだけだ。ああ、避けなきゃ、けど体が追いついてない――


『さっさと避けろ荻野ッ!!』

「[アイテム――ダメだ間に合わな…」


 バランスを崩した体勢のままの俺の眼前に迫った鉤爪はそこでピッタリと止まって、直後にレミーは何者かに組み敷かれて地面に這いつくばっていた。


「どうやら私の知らない所で動きがあったらしいな」

「ギレ!やっと来てくれたか!」


 背後から組み敷かれていたレミーはギレの名を聞いて「裏切り者め」と罵倒しているが、当のギレは終始落ち着いた雰囲気のままレミーの首に鉤爪をあてがう。おかしいな、確かゼッドの話だとモリトール一家の中でも一番竜族に対する恨みが強い奴な筈だけど…アイツの思い出補正か何かなんだろうか?


「落ちたものだなレミー、よもや私怨に駆られて一家の団結を蔑ろにしようなど」

「カアァ…貴様らに 何が分かるか 腰抜けめ!」


 掴まれている間に魔力を溜めていたのだろうか、[ロングダッシュ]補正による渾身のスタートでギレの拘束を振り払うとそのまま距離を取ったままじっと俺達を見据える。既に騒ぎを聞きつけてかセントドレイクの兵士たちもこっちに向かってきていた、ここまで来ればもう俺たちに負けはないだろうな!いやー危なかった危なかった。


『ついさっき死にかけてたお前が何を言ってるのか…はぁ』


 しばらく黙っていたレミーだったが悔しそうに一声鳴くとその場から飛び去る。


「忘れるな 決して貴様らを 逃がしはしない…」

「はっ、字余りしてるぜ?」


 流石に振り切れたAGI相手に追いつける自信は無いからね?今は援軍が間に合っただけでもよしとしないと!

 レミーの取り巻きは既に他のモリトール家の烏達によって拘束され、筆頭のギレから以後は俺達の援護に回るよう「きつーく」説教を受けているその目には涙が溢れていた。うわぁ…かわいそうに、アレだと2時間コースは堅いな。


「アルフレッド、何かあったのか…む、まさかそのカラスが?」

「ロック・クロウ族でありモリトール一家の大黒柱、ギレ・モリトールです。俺達の援軍として来てくれました!――って痛い痛いつつくのヤメテ!?」


 自己紹介を済まされたしまったギレは俺の頭を嘴で連打し、改めてシク王と挨拶を交わす。

 ギレが連れてきた援軍はおよそ100、10羽の烏が10組に別れてギレの後ろで待機している。ギレとシクとの話し合いの末、精鋭部隊としてギレが連れてきた烏にリザードマン兵が騎乗し先行してフーリエの斥候の排除に向かうとの事らしい。

 ただギレからも気になる事があったらしく、どうやらここに向かうまでの間に一切斥候の姿を確認出来ず、また攻撃も仕掛けられなかったとの事だ…何だか嫌な予感がする。


『アンジーの二つ名の事もある、何が起こっても対処出来るよう今はゆっくり休め』

「うん、そうするよ」


 細かい事は分からないから俺はシク王とギレのサポートに回るべく、万全の体調にすべくテントに設置されたベッドへと体を預けた――ベッド硬い、ふかふかが恋しい…



 とは言いながらも普通に眠れた!特に寝違えもしなかったしコンディションはバッチリ、今日なら何でも出来そうな感じがするぞ。


「起きたかアルフレッド、食事を摂ったら先行部隊は直ぐに出発だ。お前もそちらに同行してくれ…我も後続を従えてフーリエ自治区へと向かう、食事が終わったら我の天幕まで来るのだぞ」

「分かった、んじゃメシ貰うね!」


 とはいってもやっぱり行軍中だからか食事は干し肉とパンと水…ボソボソなのも辛いところ――あ、干し肉うまい


             ・

             ・

《ドラコ・マーグラヴィーンのレベルが10になりました》

《二つ名:放火犯【火攻撃+50%】》


「ぶはっ!?」

「おい、汚いぞ!」

「ご、ごめんよ」


 イヤイヤイヤちょっと待て、アンジーは一体何やらかしてるんだ!?放火犯って確か前世の俺が貰った称号にもあったよな…まさか

 ①アンジーがフーリエの斥候にバレる

 ②昨夜のギレが斥候に会わずに合流する

 ③アンジーと斥候が戦闘になって森に火を放つ

 ④( ゜Д゜)ウマー


「…じゃなくて!!」


 大急ぎでシク王の所に向かうと既に先行部隊の準備は整っていた。ギレは不満そう文句を垂れる…


「やっと来たか。ただでさえ寝坊したのに食事もゆっくりなのだな…お前が居ないと出発も出来ないのだぞ?もう少し一体感を大事に――」

「ごめんなさいシク王、みんな!直ぐに出発からギレもよろしくね!」


 寝坊してるなら言ってくれればいいのに…とか自分勝手な言い分は色々あるけど今それは仕舞っておいて、大急ぎで出発した俺達先行部隊はフーリエ自治区へと真っ直ぐ突き進むのだった。


 アンジー、大丈夫だよね…ね?


――――――――――


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