第37話:(A氏)「前言撤回、やっぱ通用したわ!」
ようやく掲載出来ました!かなり時間が掛かるようになってしまいましたね…もっと頑張らないと…
次回更新は6月中になりそうです
第37話:(A氏)「前言撤回、やっぱ通用したわ!」
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「貴様…この国にまだ何か用か、先の黒竜といい貴様といい親の顔が見てみたいものだ!それにシキ、こんな下郎をなぜ連れてきた!」
転移したシキ女王とともに扉をくぐるとシク王の怒号が謁見の間に鳴り響いた。相当怒っているのだろうか青黒い鱗ばった顔が赤みを帯びており、握られた拳は外目でもわかるくらいに固く握られている。
正直ここまでの反応は予想通りだ。さぁ、本題はここから…噛むなよ、俺!
「先の件では本当に申し訳なく…ついては謝罪のためにこちらへ参上した次第でございます」
慣れない敬語とか使うとマジで噛みそうになるんだよな、シク王の隣に座ったシキ女王は「しっかりしなさい」と目で訴えてるいる。…結構なプレッシャーなんだよね、それもそれで。
「シク、我らの前に置かれているその箱が彼らからの「誠意」。まずは受け取ったら?」
「…ふん」
シキ女王に言われて渋々と玉座から立ち上がり、棺桶…じゃなくて木箱へと歩を進める。俺は一応距離を取って頭を下げておこう。
四肢を地に着けて頭を下げたその姿はまさに「ふせ」のポーズ。体の作りが四足歩行のそれだから仕方ないにしても、俺のプライドが少しずつ崩れ去っていく…うう、これがプライベートだったら普通に立ち上がってるんだけどなぁ。
けれどその箱には近づきながらも触れることなく、俺に開けろと顎で指図してきた。一瞬殴りそうになったけど、シキ女王がうんざりしながらも「今は我慢するのです」と宥め本当に仕方なくその箱の蓋に手をかける…
「まずはこちらです」
蓋を開けて中のガントレットから取りだしてシク王に掲げた。さて、どんなリアクションするかな――わぁっ!?
その篭手を手に取るや否や、シク王は足早に玉座に立て掛けてあった槍を手に取るとアルの喉元に突き立ててきた!
「貴様、その篭手はどこで手に入れた、言ってみろ!」
「ろ、ローゼンヘイムで作りました」
「ぬかすな!このシク、貴様のそのような安い嘘を見破れないとでも思うか?
この篭手はヨルムンガンディアの王である蛇竜王の鱗、看過出来ない程我は馬鹿ではないぞ!」
そういいながら穂先で俺の顎をぐいと上げる。うん、コイツ後で絶対殴る。
「まっ…まずはシク王、その箱の中にあるものをぉ…」
「ふん!」
不機嫌そうに尻尾を叩き鳴らす彼の様子に見かねたのかシキ女王が立ち上がると箱の中から槍斧を取り出して彼へと差し出した。
「まずは相手の誠意を受け取ることを意識したらどうでしょう?」
「このような下郎の誠意など高が知れ――」
ほどなくしてシク王の小言は消えた。槍斧を手に取ったまま絶句する姿はある意味痛快でもある。
そりゃそうだよな。蛇竜王と地竜神の素材、さらには稀少鉱石がふんだんに使われた一品なんだ、テレジアの鱗だけでギャーギャー喚いてたシク王にとっては相当な物だろう。
無言で硬直してた彼だけど、ようやく正気に戻ったのかゆっくりと俺に話しかけてきた。
「…貴様は一体何者なのだ?」
さっきの威勢は完全に影を潜めてはいるものの、今度は嫌疑の目で俺を睨んでる。シク王もしぶといな、こんな奴相手に信用されるのも逆に嫌だな…いやいや、まずは信用を得ないと本末転倒なんだ、流されちゃダメだ!
「誰かって言われても、多少顔の広い…ただのドラゴンだよ」
もう敬語で話すのも疲れたのかタメ口に切り替わっちゃってるし。けれどそれを気にかける様子もなくシク王は
後ろを振り返る。
シキ女王はシキ女王で「ようやく気がつきましたか」と言いたげにため息をひとつついていた。
「まさかシキ、お前はこいつが誰か知っているのか…!?」
聞かれたシキ女王は首を横に振りながらも俺に目配せしてきた。うん、そうだよね…これから頼み事をするんだから、こちらから名乗らないと失礼なのは明らかだ。それにシキ女王にもまだちゃんと名乗っていなかったし。
「じゃ、改めて自己紹介を――」
そういいながら右手を胸に当て、首をゆっくりと曲げて頭を垂れる…些か芝居臭いけど、これからちゃんと信用してもらうにはこれくらい雰囲気出さないといけないから仕方ない。
「俺の名前はアルフレッド。千年前の前世では金竜王として暮らしてた、今はただのドラゴンだよ」
「まさか、あなたがあの金竜王!?」
「金りゅっ――」
そこまで言いかけた所で俺とシキ女王を二度見するシク王。ようやく分かってくれたか、これでやっと派兵の相談が出来る…
「おいシキ、金竜王とは何だ」
まさかの知らない発言に俺もシキも盛大にズッコケた…この女王、意外とノリがいいぞ!
当のシキはシク王にいい加減我慢の限界だったのだろう、苛立ちを見せながらシク王を玉座へと引き戻し、何をするんだと文句を垂れ彼の顎をがっつりと掴んだ!これには流石のシク王も弱々しい声が漏れる…
「アルフレッド、少し時間を頂いても?」
「うん、構わないよ」
それを聞いて手の力を緩めた彼女は少し呼吸を整えると、ゆっくりと言い聞かせるように続けた。
「父様や母様の恩竜に対してなんて事を言うの…まさかあの話を忘れたのですか」
え、ちょい待ち。シキ女王は何の事言ってるんだ?
「…すまん、忘れていた。しかし思い出したとてあの話はただの作り話ではなかったのか?」
「作り話かどうかは彼に直接聞けばいいかと、そうでしょうアルフレッド」
…いや、そうでしょうとか言われても。
「あなたが金竜王ならばこの質問にも答えられる筈――」
そう言ってゆっくりと玉座へとついた女王は俺を見見据える。ここに来ていきなり面接ムードか、緊張するのはあまり好きじゃないんだけど…ガブラスタを助けるためだ、頑張るしかない!
「金竜王には二竜の息子がいましたね。彼らの名前と…そうですね、鱗の色も答えて貰います」
二竜の息子、そう聞くと思い出すとしたら…白ちゃんと黒ちゃんしか思い浮かばないな。でも白ちゃん達はメタルボディだから鱗は持ってない、どちらかと言えばロックとQちゃんになってしまう。
「本当に鱗…の色で?もし鱗の色ならばあなた達の両親をただの――ただの法螺吹きと言わなければいけなくなりますが」
言い方はきつくても俺と白ちゃん達との絆にケチつけられるとなれば俺も黙ってはいないからな、それこそ本当の親子のように付き合ってきた二竜ならば尚更だ。
けれどシキ女王はまるでその答えを待っていたかのようにふっと笑みをこぼすとゆっくり頷く…
「そうですね、では『体の色』と訂正します」
「やっぱり俺を試してたな」
「その事はお詫びします、しかしこれは我らが父上や母上…王族の誇りに関わりかねない事なので」
互いに分かり合っているかのように話し合う俺とシキ女王の空気に、いまひとつ掴みきれていないシク王が困った目でシキに訴えかける。
「とにかく質問の答えだ。二竜の名前は白ちゃんと黒ちゃん、名前のまんま白と黒の飛竜だよ。まぁ機械仕掛けの体だから鱗の色というよりはボディーの色なんだけどね」
「そっ…そんなっ、話と全く同じではないかっ!?」
それを聞いたときのシク王の顔といったら見てて気持ちいいくらいにビックリした顔を拝ませてくれて。
その顔に免じて許してやらないことも無いぞ?…多分。
「そのを聞いた上での話にはなるんだけどさ…セクとサキ、この名前に聞き覚えって――ないかな?」
セクとサキ。リザードマンであるふたりと出会ったのは、俺が初めて転生した1000年前のロンドの街…まだ機械の体ではなく藁と服で出来た、ただのカカシだった頃。ローズの生活費を稼ぐためのバイト先で出会ったあの時のふたりは、野菜泥棒をするだけの弱々しい兄妹でしかなかった。
そういえばあのバイト中にセク達と協力してカラスの大群と戦ったんだよなー…で、結局それが元で今までギレ達モリトール一家と竜族がいがみ合う結果になるというね。
その後に向かったセク達の故郷で白ちゃんと黒ちゃん、そしてあの時は火竜王であったブーちゃんと出会い、翌日別れた後は――
『(里が滅ぼされ、多くの同胞が奴隷に駆り出された…のだったな)』
確かにブーちゃんの言う通りにはなってしまったけど、その後は当時の雷竜王であるザップや水竜王のフローラとの旅の途中で偶然見つけることが出来た。あの時に何故か名前を呼ぶと災難が起こる真っ赤な騎士、トマトちゃんことルイスとも出会ったんだよね。
それからはさっきシキ女王が言ってた白ちゃんと黒ちゃんにセク達が搭乗してレベル上げに励んだり、アルカンの街での籠城戦でも…
『(アル、やはりこやつらは)』
「(うん、多分…)」
「あなたがその名を知っているならば話は早いでしょう。セク、サキ…ふたりは我らがセントドレイク国の建国者であり、そして我らの父であり母でした」
「…やっぱりな。それにしてもあのふたりが国王にまでなったんだな、きっと相当頑張ったんだろうね――看取ってやれなかったのが残念だよ」
俺は気付かなかったけど、途端にシクとシキの面持ちが暗くなったのをブーちゃんはどうやら見逃さなかったらしい。
『どうやら亡くなったのは別の何かが原因らしいな』
「っ!?誰ですか!」
急に聞こえてきた全く別の声にふたりの緊張が高まる。
「あー、ゴメン。紹介がまだだったね…いいかな?」
全身を覆わんばかりの翼に付いたオーブ、そのうち赤く光るひとつが瞬きながら声を発する…
『いい、我が話そう…我が名は火竜王ブレイド、魂のみの存在となってしまったが、アルフレッドとは旧知の仲にあたる』
始めは訝しげだった双子王だったけどブレイドの名を聞いた瞬間気づいたのだろう、「あなたがあの…!」と深く頭を下げた。
「ブーちゃんは魂だけの存在にはなってしまったけど、それでもこの世界に来てくれたんだ。たまに助けてもくれる心強い友だよ」
ブーちゃんは恥ずかしげに声を詰まらせてるけど、実際命を助けて貰っているからね。心強いって気持ちにも嘘はないよ。
それからしばらく、二竜の王は色々と話し合っていたけど意見がまとまったのか、ついに俺達にこれからの方針が告げられた。
「先程の無礼の数々、どうか許して欲しい。この槍斧と篭手、有り難く使わせて貰う」
「(わぁ、さっきの雰囲気はどこへやら…)使わせて貰う――ということは!」
「はい。我らセントドレイク国は準備が整い次第、風竜神との約定に則りギレット高地へ派兵します。行軍指揮はシク、留守は我…シキが執りましょう」
「うむ。アルフレッド、あなたが作ったこの武具があれば兵達の犠牲も最小限に押さえられるだろう。これほど心強い事は無いのだ。
ただ、全く無くなる訳でも無いのだ。兵力が落ちている間にこの国が攻め込まれないか心配であることも現状だ、特にアレク連峰に縄張りを持つモリトール一家がいつ――」
ロック、あんたの情報は正しかったよ。モノ渡した途端にやたらペラペラ喋るようになったな、大層なご身分だよホント…まぁリアルに大層なご身分なんだけど。
「ゴメン、言い忘れてた事があったわ。さっき出たモリトール一家の事なんだけど、モリトール家筆頭のギレが竜狩りから手を引く事を約束したよ」
あまりにさらっと出てきたトンデモ発言に、シク王もシキ女王をええっと声を上げて俺を見直した。
…あれ?ギレはちゃんと部下を説得してくれるよね?…やばい、急に自信無くなってきたぞ、この話終わったら速攻で確認取らないといけなくなったな。
「では、これからの派兵についてはこちらに一任させて貰います。アルフレッド、あなたは出発までゆっくりと過ごしてください」
「アルフレッドよ、先程までの無礼、本当に済まなかった。だがこれも我らが国民の為を思っての事、どうか理解して欲しい」
「うん、今思えばアンジー…あの黒竜があなたに突っかかった時、あそこまで怒ったのも国民を大切にしているが故だったと思うよ。彼女も彼女なりにケジメをつけて欲しかった事を解ってほしい」
アンジーを話題に上げて気分悪くするかなと一瞬思ったけど、意外と穏やかな様子で頷いた。
「そうだな…彼女に言っておいてくれ、逆上して悪ったと」
【二つ名:セントドレイクの調停者【全パラメータ+20% ヘイト増加量-50%】】
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ドラコ・マーグレイヴ【ランクB】 Lv3/50
名前:アルフレッド(荻野祐一)
二つ名:セントドレイクの調停者【全パラメータ+50% ヘイト増加量-50%】
状態:骨折(微)【4/100】(DEF-10% AGI-10%)
HP:1048/1048(+349)
MP:1048/1048(+349)
ATK:699(+233)
DEF:630(+233)(-69)
MAT:1048(+349)
MDF:1048(+349)
AGI:630(+233)(-69)
スキル:[ステータス閲覧][発声][情報解析][アイテムスロットVer.2.00][ジョブマスタリー:ゴッドハンドLv5]
[ブレス中級][光魔法Lv5][治癒魔法Lv3][MP自動回復Lv4][簡易検査]
アイテムスロット状況:[竜革の財布:多頭竜ハイドラの鱗:多頭竜ハイドラの逆鱗:ロック烏の風切羽:時限式圧縮魔法爆弾:なし]
UQ:[火竜王の紋晶]
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二つ名詳細――
[セントドレイクの調停者]:すごいですよアルさん、だってひとつの戦争を止めたに等しいんですよ!?…あ、でも新しく戦争を持ち込んでしまったんですよね…んー、ノーカン!ノーカン!【全パラメータ+50% ヘイト増加量-50%】




