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ドラゴンになりたいッ!!  作者: コロッとしたもの
第1章:「で、結局ドラゴンじゃないのね・・・」
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第9話:夜襲をかけるなら少数精鋭に限る

第9話:夜襲をかけるなら少数精鋭に限る



――――――――――



「そういえば街の外に出るのってこれが初めてだな」

「目的地はここからどのくらいの距離が?」

「ここからだとちょうど向こうに見える山と山の中間辺りになります」


 といって兄トカゲが指したのはここから大体20kmはあるだろう山だった。とはいっても、車輪が付いてスピードが上がった俺なら1時間も掛からないだろう距離だ。


――――――――――


「なんかもう色々と申し訳ない」


 何故俺が謝っているかというと、なんと俺の車輪移動、物凄く燃費が悪かったのだ。4足歩行よりは消費が軽くても、それでも20分程でMPが2割を切ってしまうくらいに悪かった。

 ただ、かねてより心配だったMP回復のペースは当初の期待通り、割合回復だった様だ。回復率は現時点では1分毎に5%ほどといったところだ。

 それに今回取得した[ロングダッシュ]、これはMPを消費して一時的にAGIが上昇するスキルだったので実質燃費は変わらないにしろ、急ぎの短距離では大いに役に立ってくれそうなものだった。


 ひとまずはMPの回復待ちをしている間に他の皆は昼食をとる事にしていると…


「セク、サキ!無事だったか!」


 突然向こうから誰かの声が聞こえた。


「この声は父さん!」


 兄トカゲが声を上げた。向かってくるのもリザードマンだし、間違いは無いだろう。


【称号:送迎バスを入手しました】


「おおセク、心配したんだぞ!サキも…一体どこに行ってたんだ」


 この場合、彼らの事を話すべきか判断に迷ってしまうな。いや、言うべきだろう。まだ兄妹は幼い、ここで物事の善悪をはっきりさせておかないとこの先大変なことになるのは目に見えている。

 俺が二人と出会ったいきさつを話すと、なんと父トカゲはセクと呼ばれたリザードマンを強かに殴りつけた。


「セクっ…お前って野郎は!」

「でも、このままだと――」

「セク」


 父トカゲが、セクを諭すように頭を撫でる。


「親にとってはな、子供の無事がなによりの財産なんだよ。お前達が居なくなってる間、どれだけ苦しかった事か…もう、相談せずに勝手には行かないでくれ」

「はい…父さん」


 セクはかすかに潤んだ目で父を見据えていた。


「ところで…だ」


 父トカゲが俺に向き直る。


「この像は一体…?」

「父さん、彼は像のようだけど立派な魔物ですよ」

「なんと!」


 うう、改めて魔物呼ばわりされるとなんだか切なくなるな。


「ここから街までは時間もかかるでしょうし…よろしければ今夜は私達の集落で過ごしていただけませんか?子供達を送ってくれた礼をしたいのです」


 俺達は顔を見合わせたが特に断る理由も無いので彼の厚意に甘えさせてもらうことにした。



―――――――――――



「ふぅ、すっかり遅くなってしまったな」


 結局、礼と歓迎を兼ねて宴会が開かれ、深夜にまで及んだ。リザードマン達のほとんどは酔いつぶれ、ローズも寝てしまったようだ。

 宴会の最中とうって変わって今は虫の音しか聞こえない、静かな夜になっている。


「アル、ちょっといいか」

「なんだ?」


 ふと後ろを振り返るとイフがやや真剣な顔つきで俺を見ていた。


「近くに魔物の臭いがする。単独だが油断は出来ないぞ」

「え、マジで?」


 ちょっと静かにしてみるとすぐ脇の草むらが大きく揺れ、そこから3メートル程はある大蛇が飛び出してきた!


「来たっ、迎撃するぞ」

「任せた、番犬!」

「そう言うお前はまず働け!」


 振り返りざま、不意打ちでイフの[ファイアブレス]が俺を掠める。


「えと、これはどういう訳で?」


 なんと、混乱気味に突っ込んだのは大蛇だった。声の調子だと、多分メスだ。


「戦う気はありませんので、できれば攻撃しないで欲しいです…」

「お、喋れるのか…では聞くが、何でこんな所まで来たんだ?」

「私はただ仕事を辞めて飛び出しただけです。仕事の割に薄給ですし、上司のパワハラもひどかったので…ここに着いたのは偶然です」

「何の仕事だ」

「リザードマンの集落を襲う仕事」


 その瞬間イフのブレスが炸裂する。大蛇はすんでのところで回避した。


「その時点で偶然では無くなったな」

「ご、ごめんなさい、さっきの偶然は撤回します。けれど飛び出した先で知ってる場所はここだけでしたし、そういう意味では偶然かもしれません」

『むう、私と口調がかぶってますね』


 イフとロンデラは彼女を訝しげに見ていたが、この集落が襲われるという情報を掴んだのは大きいと見たのだろう。


「とにかく、詳しい情報を寄越せ」

「は、はい…」


 彼女からの情報では、リザードマンの集落をぐるっと包囲しているらしい。数は2000を超え、個々のサイズは最大2メートルちょい…


「って2メートルちょいって、ちっさ」

「小さくても油断は出来ません。色々なスキル持ちがごろごろ転がっていますので」

「この集落で相手にするにはこっちの数が足りないしあっちの数も多すぎる。到達する前に可能な限り数を減らしていかないとな」

「おうイフ、冴えてるなぁ」

「冴えているレベルでもないし、お前は無い脳味噌を少しでも働かせろ」


 口の悪い犬っころは置いといて、俺は自身のスキルを確認してみる。


「イフ、[バリスタ]なんてスキルが追加されたんだが…バリスタって何だっけ?」


 イフはわざとらしく大きなため息を…って蛇もしてるし!?


「要するに、大型の弓だな。大型といっても手持ちではなく設置型の弩だな」


 ワンコの説明ではいまいちパッとしなかったので、実際に[バリスタ]を発動してみた。

 両手足の先端、広げた翼、背中に大量の木製の弓のようなものが出現した。


「バリスタ…ですね」

「ああ、バリスタだな」


 イフと蛇はうんうんと頷いていた。ひとまず発動には成功したらしい。


「アル、そのまま動くなよ」

「ん、なに?」


 イフは俺の尻尾から背中に駆け上がり、俺の背中に設置されたバリスタをいじっている。

 きりきりと弦が張る音と、カタカタと木の歯車?の回転する音が聞こえた。


「よし、撃ってみるぞ」

「え」


 俺の返事を待たずに矢が発射された。放物線を描いてはいるが、矢が速いので軌道はほとんど真っ直ぐだ。


「アル、射程はどれくらいか見えたか?」

「うーん」


 正直どこまで飛んだかは途中で見落とした生で全く分らなかったけど、俺の体だからなのか、雰囲気でなんとなく掴める。


「雰囲気400メートル弱って所」

「まぁ、少し長い程度だな」


 多分[遠距離射程+40%]が効いたのだろうが、やはり単独の威力は物足りない感が出てきてしまうな。


「ちなみにそのバリスタ、全部でいくつあるんだ?」

「ん、両前脚に各2、両翼に各4×2の計16、後は背中に3だな」

「合計23か。無駄に多いな…それ、アルの意思では撃てるのか?」

「んー…」


 俺は「バリスタを撃つ」イメージを浮かべてみるが、そもそもどうやって撃つのか全然知らないから当然矢は発射されない。


「ごめん、撃ち方教えて」

「仕方ないな、まずは…」


 と、イフが話し始めたと同時に遠くから魔物の遠吠えが聞こえ、大群が押し寄せて来ているのが見えた。


「すまん、今は防衛線を張ることに専念しよう。ひとまず俺は[ファイアウォール]で防壁を張っていく」

「あ、それじゃ俺も!」


 実はウォール系の魔法、Lv3の段階で覚えられたのだ![氷魔法Lv3]で取得した[アイスウォール]を集落の半径100メートルを囲むように展開していく。


「私も何か手伝えないでしょうか?」


 蛇が申し訳なさそうに言ってきたので、ひとまず彼女にはローズを起こすように言った。大丈夫かなと自信が無さそうだったので補足しておく。


「心配するな。金髪ロングの人間だからリザードマン達の中で相当目立つ、すぐ探せるさ」


 彼女を行かせた後、俺はイフを背中に乗せて迫り来る魔物達目掛け全速力で前進した。



――――――――――



「おいアル、いきなり突っ込んでおいて何か勝算でもあるのか!?」

「ああ、当然だ」


 俺の身体は巨大だし[念動力]のスキルレベルも高くない。スピードが出る事はまず無いが、巨大だということはそれだけ質量があるという事になる。

 蛇からの情報では相手のサイズは大きくても2メートルちょいと聞いているので、サイズ差は相当なものだろう。ということはだ…



「なるほどな、コレはひどい」


【称号:事故車を入手しました】

【トロイドラゴンのレベルが2になりました】

【トロイドラゴンのレベルが3になりました】


 つまり、ただ体当たりするだけでいい。それだけで俺の元には経験値が来るわけだ!いやー、うまいうまい


「あ、やべぇ」

「どうした?」

「俺、とんでもないこと思い付いた!」


 俺の前胸部は輸送機のドロップゲートみたいに前に開くのだが、この前胸部を開いたまま敵に突っ込めば小さな魔物達(あくまで俺を基準にしてだけど)はドロップゲートの上を転がって体内に入る。

 そのまま前胸部を閉じて[被服吸収]を発動すればアラ不思議!


【トロイドラゴンのレベルが4になりました】

【トロイドラゴンのレベルが5になりました】

【トロイドラゴンのレベルが6になりました】


「HPとMPの心配が無くなったぜ!」


 [ロングダッシュ]と併用すれば、常時MP補給の効く今の状況ならこのサイクルのペースもかなり速くなってくれる。


 ひとまずはこの勢いのまま、俺は魔物の群れをガッサーとさらえていく。


【称号:道路清掃車を入手しました】


 いやぁ、うまいうま――


「シャーッ!」


 蛇型の魔物の一匹が、いきなり俺に炎を吐いてきた!もちろん、木製でなおかつ火耐性がマイナスの俺の体には簡単に着火してしまう。


「うわっ!やべぇ」

「おいアル、消火はどうするのだ?」

「えーと」


 うん、消火器は俺の身体には設置されていませんよ?


「…ない?」


 やばい、今考えれば相当まずい事態になってる。イフも俺の頭をべしべしと叩き続ける。


「一旦集落に戻れ!誰かに消火してもらわないとまずいぞ!」

「わ、分ったから叩かないで!」


 戻る途中に[氷魔法]を試してみたが、延焼を抑えるのが精一杯だった。気温を下げても焚き火が消えないのと同じなのか?

 結局、集落に戻ってローズに消火してもらう頃には全身が黒く煤け、どこかの民芸品みたいになっていた。



――――――――――――――――――――――


トロイドラゴン【ランクD】 Lv6/24


 名前:アルフレッド


 状態:積載


 HP:248/641(+166)

 MP: 98/425(+55)

ATK:195(+60)

DEF:195(+50)

MAT:252(+42)

MDF:325(+65)

AGI:148(+13)


パッシブスキル:[痛覚軽減Lv6][HP自動回復Lv3][ダメージヘイトLv4]


スキル:[ステータス閲覧][発声]

    [念動力Lv6][被服補正Lv4][被服吸収Lv4]

    [火魔法Lv3][氷魔法Lv3]

    [バリスタLv2]

    [ロングダッシュLv1]


 称号:[転生者][クレーマー][ホラー人形][燃えるゴミ][放火犯][害虫駆除業者][雑巾]

    [二束三文の安物][パワードスーツ][人見知り][ミイラ取りのミイラ][対リア充決戦兵器]

    [神の依代][空調服][効率重視][叩かれ屋][クラスチェンジャー][怠け者][上司の靴磨き]

    [キャンディー工場][ただのカカシ][夜間警備員][ホラーカカシ][固定砲台]

    [火炎放射器][高性能カカシ][解体業者][戦車][怪獣]*[送迎バス]*[事故車]*[道路清掃車]


 補正:[ HP+35%]  [ MP+15%]  [ATK+45%]↑ [DEF+35%]

    [MAT+20%]  [MDF+25%]↑ [AGI+10%]↑

    [火攻撃+110%]  [火耐性-20%]  [水攻撃+30%]  [水耐性+30%]

    [氷攻撃+20%]  [氷耐性+30%]  [雷攻撃+20%]  [雷耐性+20%]

    [風攻撃+20%]  [風耐性+20%]  [土攻撃+25%]↑ [土耐性+20%]

    [光攻撃+20%]  [光耐性+20%]  [闇攻撃+60%]  [闇耐性+20%]

    [対虫系+10%]  [対鳥系+40%]  [対獣系+40%]  [対構築物系+20%]

    [対高Lv系-10%]  [対低Lv系+10%]↑

    [取得経験値+60%]  [進化必要レベル-20%]  [HPMP吸収率+40%]

    [遠距離射程+40%]


            

――――――――――――――――――――――



称号詳細――


[送迎バス]:帰りを待つ親の元へ子を乗せて送る、ハートウォーミングな称号。善行は積んでおいて損はしませんよ![DEF+5%][MDF+5%][AGI+5%]


[事故車]:善行を積んだと思ったら早速悪行に手を染めますか!?人身事故、ダメ、ゼッタイ。[ATK+5%][DEF-5%]


[道路清掃車]:自然をきれいにしていくのはいいことなのですが…なんでしょう、この煮え切らない感じ…[対低Lv系+10%][土攻撃+5%]

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