表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼き聖王と七匹の巫女  作者: 華月柚青
6/8

第六話 迷いを振りきって

~~


 ワタシは美と愛を司る女神、マーリアスさまの巫女よ! どう?凄いでしょ! ……え、別に? って?ちょ、ちょっとそんな冷たいこと言わないでよ!

 ワタシたちは平和にのんびりと首都で巫女をしているわ。最近、村が一つ焼かれたって聞いたけど大丈夫なのかしら。

……ていうか、聖王さまだいぶ弱って来てるみたいじゃない? 私たちが次に聖王さまに従うのよね。……にしたって、代々オジサンの聖王さまだし今回もどうせオジサンなんでしょ……って、ええ!?

 若っ!! ていうかカッコいいようで可愛い感じの男子じゃない!! 若い!! やだ、どうしよう緊張してきちゃったじゃないッ!!


 ……って、笑わないでよ清姉ー!!


~~


「やーっとついたー!!」

 ようやく首都(最初の目的地)についた澄春は、グググッと青空に両腕を伸ばした。

「凄ーい、大きいですー!」

「ここが首都なんだね、僕も初めて来たよ。」

 櫁と朱が口を開いた次に、墨と桃も独り言の如くぼやく。

「巫女となった時ここに来たが……相変わらずだな、活気が衰えていない。」

「アタシもこの馬鹿と一緒に二、三回来たわぁ……。」

もちろん馬鹿とは澄春のことである。そして、最後に藍が呟いた。

「……六八九七年ぶりかな……。」



「えっ。」

 ツッコミしたそうな朱を置いて、澄春は中へとズンズン入って行く。それに五匹がついていくと、一際大きな建物がドーンと建っている。そこに現聖王がいるわけだが、その人が次期聖王が来ていることを知ることはないだろう。

 その建物の前に建っている二つの塔が繋がった寺院。そこにマーリアスとアシーネルの二柱(にはしら)の巫女がいる。澄春は足早にその扉の前まで行くが、どうしても開くことができなかった。

 聖王となることへの決心がつかない。そんな複雑な感情が織り交ざる中、澄春を放って桃がガチャリと扉を開けやがった。

「ああああ!! 桃!! 待って、俺の心情を語るナレーションがまだ終わってない!!」

「何メタいこと言ってんのよ。目の前でボーッと釣ったってる方がウザいわよ。」

 桃の遠慮ない刺のある声に、澄春はげんなりした。

「やだー! 本当に若ーい!!」

 唐突に響く甲高い声に、澄春は肩を揺らす。

「初めまして、わたくしはアシーネルの巫女、(せい)と申しますわ。こちらはマーリアスの巫女、(すい)。」


上品で物腰が柔らかく、髪が長い白髮に銀色の吊り目が更に高貴さを醸し出す白狐と、ずっとキャーキャー叫んで飛び跳ねている髪が短く緑色で水色の目をした、緑狐の二匹。特に飛び跳ねている方の、たわわに実ったそれが……否、なんでもない。

「嘘ー! こんなに若い聖王だったなんて……信じられないわ!!」

「翠、聖王様の前ですわよ、上品になさい。」

「あ、そ、そうだった……。」

 ようやく落ち着いた翠に、澄春は苦笑いを浮かべると巫女の七匹を見渡した。

『テンショウ』の巫女『朱』と『アシーネル』の巫女『清』、『ヘルーア』の巫女『墨』。

『マーリアス』の巫女『翠』に『アラーエ』の巫女『桃』、『サラーエティー』の巫女『櫁』。

 そして、絶滅したと信じられていた『ヤーウェリ』の巫女『藍』。

いよいよ、澄春が聖王となる舞台が整った。

「……とうとう、だ。」

 独り言のはずなのに、それを嘲笑うかのように空間に声が響く。だが、それを無視して澄春に最初に声をかけたのは、藍だった。

「大丈夫です。前にも言いましたが……私たちがいますよ。」

「藍……そうだね。」


 もう、逃げられない――……。


 ――……ならば、戦う。


 そう心に決めた澄春たちを襲ったおぞましい鳴き声。それに従うように、七匹と次期聖王は建物の外へと出る。あれほどに澄み渡っていた空は黒い雷雲で覆われ、これから起こる〝何か〟を吉兆しているようだ。

「……あれは……。」

 桃が目を見開き、藍が表情を引き締め、墨が顔をしかめた。朱が複雑そうな顔をし、櫁が恐怖に顔を歪め、翠が睨みつけた。

 清が真剣な顔をし、澄春がまっすぐに見つめる先。


 そこには、大きな青き龍がいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ