【プロローグ】何でもするって言ったよね?
オレの彼女が可愛すぎてやばい。
大きい目にサラサラとした黒い髪。
癒し効果抜群の甘い声。
体型は細身だけど、胸はしっかり手に収まるくらいはあって、
150㎝半ばくらいの身長は抱きしめればちょうどオレの腕の中に収まる。
そんな彼女に、
「ヨウ君、お願いがあるの」
なーんて可愛く両の手のひらを合わせて、上目遣いで言われれば、
「何でも言って。何でもするよ」って
男らしく言ってみたくなるのは男の性。
「嬉しい。ありがとう」
とか言われたら、「さっきの言葉はナシで」って、
前言撤回はもうできない。
「あのね、これ、音読してほしいの」
そう言って手渡されたのはA4の紙3枚。
見たところ小説が書かれているようだ。
「小説の音読?オレ演技とかできないけどオレでいいの?」
「うん。ヨウ君がいい」
にこっと笑う姿はその台詞と相まって最早女神だ。可愛い。
じゃあ、と咳払いを一つして、オレは小説の内容を声に出していく。
「『先輩、なんで俺呼ばれたんですか?』『あぁ、お前に言いたいことがあってな』『言いたいこと…?』『俺はお前がいないと駄目みたいなんだ』『は?』『俺のことを好きになれ、洋輔』」
ん?
下手なりに二人分を演じ分け感情を込めて台詞を読んでいると、台詞に違和感を感じる。
どうやら登場人物2人はどちらも男のようなのに、ラブロマンスの波動を感じるのだ。
しかも、洋輔って…
「なぁ、まひろ、これ」
「実はずっと言えなかったんだけど、私、こういうのが好きなの」
こういうの…?
「オレ、ちょっと、こういうのは…」
「ん?」
にんまりと笑う。
その姿は可愛いはずなのに、なぜだか背中がひんやりとした。
「何でもするって言ったよね?」
オレの彼女が可愛すぎてやばいと思っていた時期がオレにもありました。