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1-5 グリーンベア討伐

短め。



 翌日。セレナとユーマは連れたって、ユニオンへと来ていた。昨日決めた通り、クラン登録をする前にテストとしてこなす低ランクの討伐依頼を探す為である。


「どれにしましょうか。この辺の魔獣は騎士見習い時に、討伐した経験がありますからどれを選んでもそれなりの働きが出来ると思います」

「それは頼もしい。そういえば、駆け出しってことはセレナのランクはF?」

「Fですね」


 ランクF。ユニオンに所属する冒険者が最初に貰うランクである。同時にランクがFの間は初心者として、ユニオン経営の店では割引があったりもする。大体の冒険者はすぐにランクEに昇格する為、恩恵を受けられる機会は少ない。また、悪用されないようにと割引対応の商品には購入数の制限などが課せられている。


「ということは、回復薬は割安で手に入れられるのか……。制限ぎりぎりまで買うとして、少しは報酬がいいのを選びたいよな」

 

 依頼が掲示されている壁に辿りついたユーマは、低ランクの討伐依頼に目を通していく。


「ラビット系……いや、騎士団にいたんだから、もう少し……あ、これなんてどうだ?」


 そういって見せたのは、一枚の依頼書。そこには、街の近くの森で見たという魔獣の討伐依頼が書かれていた。


「ベア系の魔獣ですか」

「そ。これなら、セレナの戦闘能力を把握しやすいし、肉も売れるから実入りがいい。何より、目撃したのが昨日だから見つけやすいしな」

「なるほど。しかし、騎士団にいた時、ベア系の魔獣は数人で相手してましたが」


 二人で大丈夫なのかと心配するセレナに、大丈夫だと返すユーマ。


「ベア系っていっても、こいつはグリーンベアっていう小型の魔獣さ。多分、騎士団のときのやつは、もっと大型のやつだろ。それに、ベア系なら援護もしやすい。ボア系やラビット系は脚が速いから、援護しにくいんだ」


 ユーマの言葉に冒険者の先輩であるユーマが言うのだから問題はないだろうと、納得したセレナは早速依頼受注の手続きに入る。

 手続きといっても、低ランクの討伐依頼は依頼書とユニオンタグを持って、カウンターに持っていくだけなのだが。高ランクの依頼や護衛依頼となると、専用のカウンターで受注後、契約を結んだり、情報交換などを行う為すぐ出発とはいかない。

 いつかは護衛依頼もやってみたいものだとユーマが思っていると、受注を終えたセレナが戻ってくる。


「できました」

「じゃ、道具を揃えにいくか」




「グリーンベアは田舎じゃよく見かける魔獣でさ。ベア系だけあって力は強いけど、スピードはそれほどでもないから、落ち着いていけば討伐は簡単。慣れている人なら、首を一撃で落とすんだって」

「ユーマは出来るのですか?」

「オレ? オレは無理。そんな筋力ないし」


 道具を揃えたユーマたちは、街を出るとまっすぐに目撃情報のあった森へと歩みを進めていく。グリーンベアの話をしながらの道中であったが、森の入り口に差し掛かると静かになる。


「ここからはセレナに任せる。オレは基本的についてくだけにするから。何かあれば、助けるけど今日の目的はセレナがどれだけやれるのかのテストだからね」

「分かりました」


 ユーマの言葉に頷くと、セレナは森へと足を踏み入れる。それから暫く、セレナの背を黙って追っていたユーマであったが、無造作に森を歩くセレナに内心でダメだしをしていた。


(ああ、そんなに物音立てたら……ほら、逃げた。アレはラビット系かな? そこの足跡はボア系。予想はしてたけど、騎士団じゃ魔獣の追い方なんて教えてないみたいだな。アレを用意してきて正解だったかも)


 田舎で冒険者をしていたユーマにとっては基本のことでも、騎士見習いをしていたセレナにはそうでないことが浮き彫りになった瞬間であった。

 そもそも、街の防衛を担うのが騎士たちの役目なのである。敵の方から現れることが多い彼らにとって、敵を探すより打ち倒す技術を優先して教えるのは予測できていたことだった。


(これじゃ、誰もクランを組みたがらないわけだ。いろいろ教えてかないとダメだな)


 教えることを考えていたユーマの耳に、何かが枝を踏む音が聞こえてくる。それは、今までのものより、かなり大きくセレナも気がついたようである。


「セレナ」

「正面です」


 セレナの言うとおり、正面から音は響いておりユーマはいつでもフォローできるようにと、剣に手を伸ばす。セレナは既に抜剣して正眼に構えており、その姿は一流の剣士のように様になっていた。


「来ます!」


 現れたのは、想定していたグリーンベア。ただし、その体躯は小型の範疇を大きく超えていた。普段、成体でも人間の幼子と同じくらいのサイズまでにしか成長しないはずが、優に大人一人分はあろうかというサイズである。


「おいおい、ふた回りはでかいんじゃないか……? セレナ、手助けは?」


 ユーマがセレナに話しかけるが、返事はない。恐怖で固まったのかと、ユーマがセレナに並ぼうとした瞬間、セレナの姿が掻き消えた。


「は?」


 呆然とするのも束の間、ズシンと重たいものが倒れる音がする。音の方向に目を向けると、そこには首を落とされ血を噴出しながら地面に沈むグリーンベアの姿と、その奥で剣を振りぬいた姿勢で止まっているセレナの姿があった。


戦闘開始数秒で終了。決して、戦闘描写を避けたわけではありません。

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