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1-10 説明






「ユーマさんたちは護衛依頼が初めてということで、後々問題にならないように護衛依頼を受ける際の基本及び注意事項から説明させて頂きますが……」


 依頼を受けると決めたユーマたちは、ユニオンの一室で護衛依頼についての説明を受けていた。


「依頼は依頼カウンターに依頼者と揃っておいでになるか、依頼者に達成印を貰いそれを報酬カウンターに提示することで達成となり、事前にユニオンに依頼者が納めた達成報酬と同額が支払われます。依頼者に支払い義務が生じるのは、この達成報酬のみです。達成報酬は依頼者が発注時に記入した移動経路、目的、護衛期間等から算出した最低金額をベースにして依頼者が決定します。報酬はどのユニオンでも受け取れますが、達成印が押印された日から数えて三ヶ月の受け取り期間を過ぎた場合、依頼失敗とみなされ達成報酬は自動的にユニオンの財源として納められますのでご注意ください」


 ここまではいいですか、と聞く職員に黙って頷くユーマとセレナ。その様子を確認した職員は、次にと説明を続ける。


「魔獣との戦闘で使用した回復薬や、立ち寄った村や街中での食費、宿泊費などの諸経費に関してですが、先程説明したように依頼者に支払い義務はありません。食事の支給や経費と一部負担などを行う依頼者もいれば、一切出さない場合もあります。依頼者の中には道中に食事を勧め、食べた後に支給ではなく買い取りだと代金を請求する依頼者もいますので、顔合わせの時に支給品についての確認は怠らないようにお願いします。達成報酬の保証と依頼者との顔合わせの場の提供以外のこと……個別の契約事項に関して、ユニオンが関与することは基本的にありませんので」


 そこで、身構えたユーマたちに気づいたのか職員の女性は安心させるように微笑み、話を続ける。


「勿論、かなり悪質な依頼者の場合はユニオンのブラックリストにめでたく記載され、記載以降は契約書の作成をユニオンの監視下で行わないと依頼できないようになったりします。ユニオンにとって、依頼者も大切ですが冒険者の方々の方が大切ですからね。ただ、自己責任という原則に変わりはありません。ですので、このような冒険者の保護制度について、ユニオン職員から積極的に説明することは基本的にありません。今回はセレナさんが我が支部の期待の新人であること、依頼内容が日帰りであり、移動距離、時間に余裕があることから説明しています」


 その言葉に、思わぬところでクラン結成のメリットがあったと感じるユーマであった。


「今回は日帰りなのでないと思いますが、依頼者から報酬を支払うからと護衛中の戦闘以外の仕事を頼まれる場合があります。そちらに関してもユニオンが関与することはありません。ご自由になさってください。当然、ランクアップに必要な依頼達成数にはカウントされませんのでご注意ください。また、護衛期間中にユニオンで他の依頼を受けることも出来ますが、それにより護衛に支障をきたしたと判断された場合、依頼失敗となり罰則が生じる可能性があります」


「えーっと、つまり……?」


「他のクエスト同様、ユニオンが保証するのは達成報酬のみという事です。そして、ここが一番大事なことなのですが、依頼書に書かれている達成報酬は総額です。複数クランでチームを組んで依頼を受けた場合、出発前に達成報酬の分配について決め、ユニオンに報告する必要があります。依頼達成後、それに従って分配された額が各クランに支払われる訳です。事前に決めるのは、取り分目当ての仲間割れなどを防ぐ為ですね。共通した注意事項は以上ですが、何か質問はありますか?」


 職員の言葉に顔を見合わせるユーマとセレナ。二人とも質問はなかったようで、互い相手が首を横に振ったのを確認すると、職員に向き直る。

 それを確認した職員は、隣でお茶を飲んで待っていた依頼者――リオナ――を手のひらで指して言葉を紡ぐ。


「今回の依頼主はリオナさんの御婆様で、私が代理で説明する形になります。こういう護衛依頼って結構多いんですよ。では、今回の依頼について説明しますね。護衛対象はこちらにいるリオナさん。護衛期間は街を出てから、調査を終えてここに戻るまで。達成報酬は3000ガル。但し、今回の依頼は、依頼主と護衛対象が違います。依頼主からは、日暮れまでにユニオンにリオナさんを引き摺ってでも連れて帰るようにと言われてますので、どうか宜しくお願いします」


「改めまして、リオナ=クロニクルです! 日暮れまで宜しくお願いします」


 元気よく頭を下げるリオナに、つられて頭を下げるユーマ。


「優先事項は護衛対象――リオナさんを日暮れまでにユニオンに連れてくること。護衛対象が調査中であろうが、中断して戻ってください。調査内容はリオナさんから説明しますが、草原側の城門が見える範囲。それも、街道沿いを基本に調査をお願いします。護衛者が遠くに追加調査に行きたいと言っても却下してくださいね」


「最初から近場での調査が目的で、遠くに行くつもりないって御婆様には言ったんですけどね。お前は夢中になると周りが見えなくなるって……」


「それは、私も同意するところですね。ということで、その点はお気をつけください」


「護衛というより、お守り……?」


 内容を聞いた素直な感想がユーマの口から零れると、職員の女性は笑顔を作るとゆっくりと視線を逸らす。

 その様子に真実を悟るユーマであったが、横のセレナはやる気満々といった様子であり、リオナはリオナでお守りじゃないですと声を上げている。


 依頼内容に対して3000ガルならば、かなりおいしい依頼だよなとユーマは切り替えるのであった。

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