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並行世界観測日記①
『私へ。
前の世界での記憶は残ってないと思うので、これを見て、果たすべきことを果たしてください。
大戦で消えていった、誰にも讃えられることのなかったあの英雄は、まだ若いです。必ず帰るべき場所に帰らせてあげてください。
温かいご飯を食べさせてあげてください。たくさん遊ばせてあげてください。たくさん勉強させてください。
友達をたくさん作って、切磋琢磨して、衝突して、笑って、泣いて、怒って、また笑って、そして身を焦がすような恋をさせてあげてください。
彼に、由紀くんに、これ以上誰も、何も斬らせないでください。
あんな子を、これ以上戦争の渦中に混ぜないであげてください。』
黒い血痕が、ひたひた、しとしとと、点々とついていた。
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