8/54
炎の少年の軌跡④
目の前に広がる世界を、何と表せばいいのか。
何かがある訳ではない、明るい訳でも暗い訳でもない、完全的無の空間。
この物語の最初の主人公さえ消せば、後々に続く筈の物語もまた、消えて無くなる。その結果は、炎の少年の思い通りだった。
ただ、違った。
違う、そうじゃない、と。
完全的無に漂いながら、呪文のように唱える。
ただ、彼女の運命を変えてあげたいのに。
たった一人の女性の運命くらい、救済してくれてもいいだろう、神とやら。
いくら何でも、傲慢過ぎる。
賢治の犠牲はどうなるんだ。
なんで世界そのものが消えなきゃいけないんだ。
そんなの、極端だ。
再び、彼は時を飛ぶ。
何度でも、運命を変える為に。
着物姿の彼女のあの言葉を忘れないように、何度でも。
この身がある限り、何度でも。
『それでも、空を見ていたい』。
変動率:0.490740...%




