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影の少年の軌跡④
撃ち抜かれた少女は力無く崩れる。
数秒前まで恐ろしい光速能力だった化物は、少女は、たった1発の銃弾で倒れた。
とめどなく流れる黒と赤の血液は、否定しようもなく、どうしようもなく、紛れもない、幼い少女へ訪れるであろう死の予感だった。
とめどなく溢れる涙は、何を思い。
とめどなく湧く怒りは、何が故に。
影の少年、紗村賢治は、そうして呟く。
オレはただ、正義の主人公になりたかったのに。
影の少年に追い討ちを掛けるように首に突きつけられた剣は、炎のような真紅の、逸品物と呼ばれるであろう部類のものだった。
この世では、絶対に再現出来ないだろう色、そんな類のものであった。
影の少年が、剣の持ち主を見上げる。
これは、あの人を助ける為であって正統な行為である。自分に言い聞かせるように呟く炎の少年は、その剣を振るう。
吹き飛んだ。舞うように。
全てを手に入れたがる影と、全てを知り得た炎の対面だった。
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