影の少年の軌跡③
目の前に立っている着物の少女は、無慈悲にも影の少年に突っ込む。彼女の能力は、"光"から"閃光"へ進化していた。
能力"閃光"の殺意が、影の少年に襲いかかる。
光速で移動する彼女を止める術が無い。彼女を止められない。
自分の安全を優先してまで彼女を力ずくで止めるなど、そんなことを出来る程下衆な性格ではなかった。
どうしたら説得して止められンだよ、畜生が。
オレはお前とケンカしてェ訳じゃねェんだよ。
だが、今の彼女に何かアクションでも与えなければ、逆に自身がやられてしまう。
選択を迫られている。
化け物を化した彼女を、撃てるか。
撃てないに決まっている。
化け物にされた彼女を、撃てるか。
惨いこと甚だしい。
では。
"光"の彼女だった化け物を、撃つか。
撃てない。
撃てない。
撃てない。
撃てないから、無能力だから、だからこそ、撃つしかない。
"迷う感情は迷いでしかない。そんなものは振り払え"。
能力者への対処法をよく知っていることを。
迷いも無く迷いを捨て、平然と銃を構えられることを。
自分の考えることを放棄するその癖を。
一旦自身と向き合って、状況判断することを自ら遮断する癖を。
影の少年は、初めて呪った。
影の少年は、数々を撃ち抜いてきたその銃弾の重みを、冷たい重みがあることを、生まれて初めて知った。
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