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xross adventure   作者: 鬼々崎うらら
1:atomic runners;rewite
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影を追いかけて②

atomic runners;02:影を追いかけて②


サラからの幽霊屋敷の探索の依頼のため、トンプソン王国外れの深い森に赴いた賢治は、とにかく迷っていた。

「あーあーあー。ったく本当に嫌になる・・・」

元いたサラたちの拠点から出て、森の中を探し回ってもう2時間少しになる。体力的にもそうだが、めんどくさがりな賢治はイライラしていた。

「だいたいあんなモン、ウワサでしかねェに決まってンだろ。幽霊幽霊うっせーなァ、ンな嘘か本当か区別もつかねえモンによくもギャアギャア騒げるもんだ」


トンプソン王国外れの森の中にありながらも、王国のティーンエイジャー達に知らない者はいないというレベルで噂になっている、超人気スポット――――幽霊屋敷と呼ばれる、赤煉瓦づくりの洋館がある。

どうやらその洋館は、夜になると住民がいないにも関わらず電気がついていたり、楽しそうな会話が聞こえてきたかと思えば、突然怒り狂ったような叫び声が聞こえてくるらしい。

賢治も、昼間のうちに一度だけそこへ入ったことがあったが、かつて使われていたであろう家具たちには埃がかぶり、蜘蛛の巣がそこら中にびっしりと張り付いている。洋館内は老朽化しており、今はもう誰かが住んでいる気配は微塵もない。


こんな有様であれば確かに幽霊屋敷の雰囲気は出ているが、しかし噂話や都市伝説の類は一切興味がない賢治にとって、幽霊屋敷の探索など無駄な作業でしかない筈だった。

しかし今回、サラから調査を任されたのを賢治が受け入れたのは、三上鈴の失踪の一件やアヴァの謎の急死、そしてそれらが無かったかのように生活し続けている記憶喪失の学生たち・・・といった、不可解で奇妙な事柄が立て続けに起こっているからだった。


誰も住んでいるはずのないボロ洋館から、今更になって腐乱臭がするらしいのだから、それが奇妙でない筈がなく、そんな奇妙な情報だからこそ、鈴と何かしら関係しているかもしれないと、賢治はそう考えた。


やがて歩き回っているうちに、蔦まみれの鉄の棒の列を見つけた。

「・・・・おう、あんじゃねェか」

蔦まみれの鉄格子のその向こう側、そこには目当ての幽霊屋敷があった。

ひたすら広い庭には雑草がびっしりと茂っていて、洋館も老朽化している痕跡が遠目からでもよくうかがえる。おまけに玄関の立派な木造ドアも、腐っているのが原因で外れてしまっていて、完全に無防備な状態となっていた。

「相変わらず気持ち悪ィとこだな・・・」

ギシギシとうなる錆びた鉄格子を開けて、庭の雑草を踏みながら玄関先へと進む。

改めて目の前で見てみると、外れた木造ドアは、169センチある賢治の身長を少し超す程大きなものだった。そんな逞しそうな木造ドアも、今では腐って外れ、完全に元々の役割を果たしていない。


「・・・・なんだ、この臭い」

玄関先にたどり着いた賢治も、すぐに異変に気付いた。

鼻が折れ曲がり、自身の脳まで腐り始めるのではないかというほどの悪臭。普段の生活ではまずありえないであろう程の酷い悪臭だった。

その中には、どうも血なまぐささもある。

賢治が、サラ達のいる“組織”に加入してから様々な依頼を請け負ってきたが、今回ばかりは今までにない嫌な何かを感じずにはいられなかった。

鼻をつまみながら、外れた木造ドアの横を通り過ぎて洋館内へと足を踏み入れた。

中は随分と荒れていた。豪華絢爛としていたであろうレッドカーペットは黒ずんでカビが生えている。何者かをかたどったであろう男性の銅像もぽっきりと折れており、随分と派手に割れた痕跡のある頭上のシャンデリアは蜘蛛の巣まみれだった。

お化け屋敷じゃねェか、と呟く賢治だが、もちろん返事をしてくれる者はいない。広い洋館内の奥に、喋る声は吸い込まれていく。

賢治のいるそこは大きな広間となっており、ここに何者かが住んでいた頃はちょっと洒落たホテルのロビーそのものという感じだったのだろう。


賢治は、自前のハンドガンを片手に、それほど警戒する様子もなく辺りを探索し始める。

玄関から入るとロビーのような大広間が広がっており、右側と左側に廊下が伸びている。正面には幅の広い階段があり、ところどころに血痕のような赤黒いシミがある。

とりあえず一階の探索をするため、適当に右側の廊下から始めることにした。

賢治の黒いブーツがレッドカーペットを踏みしめる音が、何となく大きい気がした。他にその音を遮る音がなく、しんとしているからだろう。

パタ、パタと、ただそれだけがこの静寂な空間に響いている。


その時だった。

ガサガサ、と。

確かに、この屋敷の階段の方から音が来ているようだった。

賢治はその場で固まり、視線だけを階段へと戻す。

その瞳は、大きく見開かれていた。

「・・・・あ?」

賢治のその表情は、怒りと驚愕の入り混じったようなものだった。

段々と、その音は大きくなってくる。

一階から見る限りでは、階段には誰かがいる気配はない。

すると、影のようなものが階段上から下りてきた。

とっさに、賢治はしゃがみこんで、手にしていたハンドガンの銃口をそちらに向ける。

警戒は、決して解かない。

やがてその影の正体が明らかになると、賢治は自然と銃口を下に向けた。


一瞬、賢治はただ、その正体に見惚れた。

開きっぱなしになった玄関から差し込む外の光に照らされ、まるで綺麗な湖の水面のように輝く、透明でありながら青い髪。床にまで届きそうなほどの長髪を見るに、相当長い間処理していない髪であるようだったが、まるで水そのものを纏っているのではないかというほどに美しい。普段から目にしている、人間の普通の髪質のそれではないのは明らかだった。

そして僅かに前髪の間から除く、透き通るような青い瞳二つと、おでこの小さな角。

邪気もなく、目の前の人間離れした容姿の少女は満面の笑みで賢治を歓迎する。

「お客さん?久しぶりね、いらっしゃい!」


この少女、一体――――――――。

「お茶をお出ししなきゃ!」

――――――人間、じゃない。


ツイッターもやってます。気ままに呟きますが、気に入っていただけたならいらっしゃいませ。


鬼々崎うらら @xanat05

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