並行世界観測日記④
『由紀くんを逃がしても殺された。
これ 以上 の方 法なん て 思い 浮かばな い 。
ど うした らいいの 。
ごめん なさ い 由紀く ん 。
ご めんね 影 嗣 。』
そう書いて、血みどろな日記帳を閉じて懐に仕舞う。
大きな穴が空いた腹部を抑え、これ以上の出血を少しでも止めようとする。
だが歩く度に、比例して出血する。
ふらふらと、よろよろと。
撲滅執事と紋章少女から少しでも遠くに逃げ延びる為に、どこまでも。
背中に背負われた影の塊は微動だにしない。ポトポトと黒い影が垂れている。
数時間は歩いたところで、式神使いはようやく自分の容態に気付いた。
異常な程寒い。異様な程視界が歪む。
敗者に追い討ちをかけるように、雨は降り続いている。
未だ大雨は、止むことを知らない。
突然、背後から打たれた感覚がして、式神使いは力無く倒れた。
いや、打たれた感覚は確かだった。
背後から声がかかる。
よくもまあ私たちの神器でやらかしてくれたもんよ。
返せっての。
けどまあ。
式神使いの肩に、ポンと手が置かれた。
アンタの見上げた根性には感動したぜ。
そう言って、式神使いの身体はゆっくりと起こされた。
安心しろよ。
そんなアンタの為に、朗報を持ってきたぜ。
だから、もう一人で泣くな。
そんで少しぐらいは、仲間を頼ってやれよ。
時女神三姉妹の長女が、式神使いを支えていた。
それ返すのは、全部終わってからでいいからさ。
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