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第7話

「大切な写真なんですか?」

「あぁ。」

隼人はあまりこの事には触れて欲しくはないらしく、自然と口を閉ざした。

「さっきは怒鳴ってすまなかったな。」

「いえ、構いませんよ。それより早く仕度なさらないと、本当に遅刻してしまい

ますよ。」

相澤は準備万端に対して隼人は制服を着ただけ。それも彼らしくなく、かなりは

だけていた。

「悪い。直ぐに準備する。」

部屋に駆け込むと教科書類を取り敢えずカバンに放り込み、美羽の写真を机の上

に置いた。

「行ってくる。」

外にいる相澤に気付かれないように、声を落として言った。


「遅くなった。」

部屋を出ると相澤は心配そうに時計を見ていた。

「えぇ……急ぎましょう。」

早足に玄関まで行くと改めてこの屋敷の広さと財閥の財力を思い知った。

噴水付きの広大な前庭に4階建ての洋館。

隼人が感銘と似た別の感動を受けてある間に相澤は近くに止まっていたベンツに

乗り込んで手招きしていた。どうやら乗れ、と言いたいらしい。

「毎日こんな車で通学してるのか?」

発車するなり一番に聞きたかったことだ。

「えぇ……。これからは望月くんもコレで移動してもらっても構いませんよ。紹

介しますね。私の専属運転手の古川です。」

「古川です。望月様ですね?事情は奥様から伺っております。」

古川はゆったりとしたスーツを着こなす老紳士といった印象を与えてくる。その

落ち着いた物腰から長い間相澤家に使えていたのが伺える。

「弥生さんから聞いていると思いますが、望月隼人です。一応、吉澤のボディガ

ードをさせて貰っています。」

「お嬢様のボディガードをなさっているんですか。頼もしい限りですね。」

ホホホと快活に笑う。

「古川、早くしないと遅刻してしまいます。」

吉澤はたしなめる。隼人は少し気まずそうだ。

「失礼しました。」

古川さんは黙って運転に集中した。


学校には古川の尽力で遅刻せずに済んだ。

校門から少し離れた場所で降ろしてもらい、吉澤のやや後方を陣取る。学校では

取り敢えず他人のフリをするつもりだ。俺には対象を向けないだろうが、クラス

の連中が吉澤に質問責めにするだろう。


「おっはよ〜!!」

元気一杯に女子生徒が隼人に突撃してくる。

「おはよ。」

無愛想に挨拶した後、席に付く。

「私の名前は?」

「お前朝からそのテンションで暑く無いのかよ。俺は見てるだけで暑苦しいんだ

が…。」

さり気なく話題を変え、答えられない質問をスルー。彼女は色気をアピールして

いるのか、制服のシャツのボタンを2つほど開けていた。若干胸元が見えている。

普通の男子ならチラ見するものだが、隼人は完全スルー。読書に入る。

「いつも通りじゃん☆」

「疲れる。アッチに行け。」

「昨日勝手に帰ったのはどなた?」

「う……」

「奢れば良いってもんじゃ無いんだからね!!」


グサッ


「一時間待ったんだよ!!」


ザクッ


「店員さんに笑われたんだからね。」


ブシャー


「罰として今日から私の事を下の名前で呼びなさい!!」

「はぁ?なんで?」

「恥ずかしい思いさせたいからですよ〜。」

彼女の顔が若干赤くなっているのは隼人の錯覚だろうか?

それよりもコイツは意地でも名前を覚えさせるつもりなんだろうか?

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