第6話
「ずっと一人暮らしだったんだって?私も一度やってみたいのよ〜。」
吉澤と違い連華さんは良く隼人に話し掛ける。気に入って貰えたようだ。
「思っているより良いもんじゃありませんよ。」
「どうして?」
「毎日飯の心配しなくちゃならないし、洗濯物を干すタイミングとか色々。」
「そう言われると確かに面倒臭いな〜。」
「ですが、一人暮らしの良さもあります。一長一短です。」
「どっちつかずだな、隼人は。」
「すいません。」
追い出されてはかなわない、そんな理由から愛想を振りまいていた。
「そろそろ時間よ。準備なさい。」
弥生さんの指示で、皆席を立つ。相変わらず吉澤は下を向いてばかりで、話をし
ようとしない。隼人本人は話掛けられずに済んで安心していた。本人のキャラで
は無いからだ。が、隼人は弥生さんに案内されるがまま食堂にたどり着いたので
、吉澤に聞かなければならない状況。仕方なしに尋ねることに。
「俺の部屋まで案内して欲しいんだけど……」
「部屋……ですか?」
「そ。部屋。」
「分かりました。こちらです。」
無表情で先を歩き始める。
だんだん見覚えのある景色になってきた。
「こちらです。私の部屋は右隣ですので、ご用があればどうぞ。」
立場逆転とはこの事か。完全に吉澤が使用人化している。逆にこれも気まずい。
「準備が出来たら廊下で。また案内して貰わないとならないからな。」
気まずい雰囲気になってきたので、隼人は逃げるように部屋に入った。
改めて部屋を見渡す。大きな部屋に移されたタンス達は、場違いの用に思われた
。そして隅の方に食器棚が……。
何も見ないことにして、制服に着替え始める。
ふと隼人は重大な変化に気付いた。美羽の写真がドコを探してもない。美羽は隼
人にとって大切な――なのだから。
すぐさま行動に移すことに。もちろん、弥生さんに聞いた方が一番早い。
廊下に飛び出すとすでに吉澤がいた。
「この時間帯に弥生さんはどこに居るんだ?」
隼人の必死の形相に吉澤はたじろぐ。
「どうかなさりましたか?部屋に不備でも……」
吉澤が言い終わらない内に隼人は叫んだ。
「弥生さんの所に案内してくれ!!」
吉澤は怯えたように体をビクッと震わせた。
「私室の方にご案内します。」
隼人の部屋からあまり離れていない位置に弥生さんの部屋があった。
「弥生さんいますか?」
「居るわよ。どうかしたの?」
「少し尋ねたいことが……」
スッとドアが開き弥生さんが出てきた。
「前のマンションの玄関に飾ってあった写真ご存知無いですか?」
「写真?あぁ、引き出しの中に入ってるわよ。」
「そうですか。ありがとう御座いました。」
隼人は安堵の息をついた。
「早くしないと学校に遅れるわよ。」
フフフと笑いながら、弥生さんは部屋に戻っていった。