第4話
放課後、山本に見つからないように隼人は校門を出た…つもりが、ちゃっかり背
後に回られていた。
「望月くん、私から逃げようとしてなかった?」
満面の笑みで凶悪な口調で言うセリフはそれだけで気絶させる威力がある。
「気のせいじゃない?」
隼人は冷や汗タラタラ言い訳し始めた。
「まぁいいわ。しっかり奢って貰うわよ〜。」
女と言う生き物は怖い、隼人はその事を改めて認識した。
「コッチよ。」
山本は隼人を案内し始めた。もちろん先頭を歩いているわけで、逃げようと努力
すればどうにでもなるだろう。しかし、後々の事を考えてこの場は大人しく彼女
に従う。
暫く歩くとシックな造りのオシャレなケーキ屋についた。ケーキ屋と言えば日本
中の男子はあまり行きたがらない場所トップ5には入るだろう。だが、この店はな
ぜかそう言った気まずさを全く感じさせなかった。
「いらっしゃいませ。」
店に入ると店員が対応する。爽やかな挨拶は隼人に好印象を与えた。
「こちらでお召し上がりになられますか?」
「はい。」
山本が応える。
「ご注文の方はお決まりでしょうか?」
どうやらその場で受け取るシステムのようだ。
「私はマロンケーキと…」
人が支払うのを良いことにドンドンケーキを注文していく山本。隼人は頭痛がし
始めた。
「お連れの方はお決まりでしょうか?」
店員が隼人に聞いてくる。
「紅茶をポットで。」
「かしこまりました。お席の方にご案内致します。」
店員に案内されたのはカップル用のシートだった。
「ここのケーキ美味しいんだよ?何で頼まなかったの?」
「ケーキは好きじゃない。それにお前頼み過ぎだ。」
「色々食べたくなっちゃって。」
いたずらっ子みたいにペロッと舌を出す。
普通の男子生徒なら悩殺されてダウンなのだが、隼人は普通ではない。
「俺は紅茶を飲んだら帰る。お前はゆっくり食べればいい。」
「そんなの寂しいじゃん。一緒に来た意味ないよ。」
さっきとは一変、甘えるような口調で隼人に迫る。
と、タイミング良く店員が大量のケーキと紅茶を持ってきた。山本は目を輝かせ
て食べ始める。
しばしの無言。これを好機に隼人は席を立った。
「ドコに行くの?」
「トイレ。」
彼女にバレないようにさりげなく伝票を取り、トイレとは逆方向のレジへと向か
う。
そして支払いを済ませ、彼女が居ることを伝えてから帰宅。
ケーキ代だけて4000円飛んでしまった。
あの時キチンとサンドイッチ代を払っておけば……と後悔しても後の祭り。一人
自信を呪いながら家路についた。