第3話
昼休みが終わり、次の授業が始まる直前に隼人は半ば強引に山本に連れられて戻
ってきた。普通、こういった事態はクラスの連中……特に男子陣がはやし立てる
ものなのだが、誰もそうしようとはしなかった。隼人をまるで空気みたいに扱っ
ているのだ。
「お帰りなさい。どこに行ってたんですか?」
席に着くと同時に転校生が話掛けてくる。
「空を見に行っていた。」
「空……ですか?」
不思議そうな顔をしている。隼人は無言を返事に、素早く教科書を取り出して転
校生に渡した。
「すいません。これ2時間目の時の教科書です。ありがとうございました。」
丁寧に礼を言ってから教科書を手渡す。
「ん……。」
受け取った教科書をカバンに放り込み、睡眠へ。
……と入る前に事態を察したのか、教師が指名してそれを阻止した。隼人は煩わ
しそうに答えて着席。バレないように寝る事にした。
授業中に転校生が何度か話し掛けて来たがそれらを軽くスルー。勉強しろよ、と
言いたいのを何度我慢したことか。
授業が終わっても煩わしいのが来るわけで、またもやサンドイッチ女子生徒が絡
んできた。
「帰りケーキおごってぇ〜。」
隼人の近くに来てそうそう物乞い。
「高いケーキ目的にサンドイッチを奢ったのか?」
「それもあるかな〜?でも奢ってくれるって約束したよね?」
「確かに約束はしたが、俺は行かんぞ。行くなら独りで行け。」
「それじゃ奢って貰え無いじゃん!!」
「……。」
「やった♪」
それだけ言うと友達の元へと行ってしまった。
「仲よろしいのですね。」
羨ましそうな、やや上目使いで言う。普通の男なら一撃で撃沈するのだが、隼人
は一筋縄では落とせない。
「煩わしいだけだ。」
転校生は隼人に何の変化も見受けられなかった事に多少驚きつつ、会話を続行さ
せる。
「そんな事はないと思いますが……。山本さん優しい方ですよ?」
サンドイッチ女子生徒の名前が山本だと思い出し、自分のやる気の無さに心内苦
笑する。
「優しい奴なのか。だが、俺には関係ないな。」
「暗い……暗すぎます。私がその性格を直して差し上げましょう!!」
「いや、結構です。」
隼人はコレからトンでもないことに巻き込まれる予感がした。