第14話
コレを好機に隼人は素早く脱出を試みる。吉澤は風呂から出ようとしているのを
゛女のカン゛で察知し、捨て身のダイブ!!隼人の骨盤当たりを掴むも、濡れてい
たので手が滑り逃がしてしまう。隼人は必死に走り、浴槽から出て脱衣所に辿り
着いた。
素早く腰にバスタオルを巻き、戦闘態勢へ。
ほどなく風呂から上がってきた吉澤の全裸を拝んだ隼人。
「どうして逃げるんですか?」
「湯冷めするぞ。タオルを巻け。話はそれからだ。」
ごく自然に接する隼人は男としての品格が欠如しているように思われて仕方無い
。男性諸君、この状況をどう感じるかね?
「分かりました。」
口をとがらして、隼人が差し出すバスタオルを受け取りいそいそと巻き始める。
「さてと…。どうして入ってきたりした?俺が入っているのは知っていただろ?
」
「夫の背中を流すのは、妻としての務めです。」
今時、新婚だってやっていない事を吉澤はやろうとしていたのだ!!
「……。その情報はどこで仕入れた?」
「ネット小説です。」
「……。」
開いた口が塞がらないとは正にこのことだろう。隼人曰わく、゛あの時はどうし
ようか真剣に考えていた゛と。
「そのな……ネット小説の場合はその場の雰囲気を盛り上げるためにだな…」
あたふたしながら必死に説明する隼人をよそに、宙を虚ろな目で見る吉澤。
「ねぇ…」
「なんだ?理解してくれたのか?」
「バスタオル姿って萌えるんだよね?」
もしも隼人が口に何かを入れていたら盛大に吹いただろう。
「分かってもらえなかったのか。」
吉澤が案外天然?な事を知った隼人だった。
「取り敢えず俺は着替えるから、吉澤は風呂に入れよ。」
安全策を講じる隼人。
「分かりました。」
すんなりと要求をのんだ吉澤は単に風呂に入りたかっただけのようだ。つまり隼
人は追い出された訳で……。
さっさと着替えて自室に戻った隼人は吉澤の奇行について思案し始めていた。
「お茶しない?」
入ってきたのは連華さん。姉妹揃ってプライバシーの6文字は存在しないらしい。
「雪乃がねぇ、隼人くんのこと気に入っちゃったみたいなのよ〜。」
紅茶をカップに分けながら、問題発言を簡単にする。
「気に入って頂けるのは有り難いんですが、それにしては態度が冷たくないです
か?」
「雪乃はあぁいう子なのよ。あれでもかなり友好的なんだけど……。」
言葉を濁しながら、連華さんはいう。
「愛理の事、分かっているんでしょ?」
「えぇ、告白は……一応されましたから。」
「そっか。明日パーティーに行くみたいだけど、頑張りなよ。連中は結構ねらっ
てる奴がいるんだから。」
激励をした後、連華さんは部屋を出て行った。