第12話
繁華街を通過してデパートへ。ほとんど映画を見に行かない隼人は付いて行くだ
け。女性陣は隼人がいないかのように盛り上がっている。
「チケット買ってきます。運命で良かったんですよね?」
盛り上がっている最中申し訳ないと思いつつも、映画館に着いても話し込んでい
る三人に聞いてみた。
「えぇ。よろしく頼むわ。」
雪乃さんが即答する。隼人はいそいそとチケットブースへ向かう。
〜女性陣〜
「雪乃もしかして隼人くんに気があるの?」
「そ、そんなわけ無いでしょ!!」
「顔が真っ赤だよ☆」
「そんなこと無いって!!確かに隼人くんは顔は良いけど、私はああいう空気を読
んで無さそうな子は嫌いなの!!」
「その反応怪しいな〜。」
「正直に言っちゃえ☆」
「そういう連華はどうなのよ?」
「隼人くんはなかなかだと思ってるわよ。でも愛理がぞっこんでねぇ。下手に手
を出したら殺されちゃうわ(笑)」
「答えになってないわよ!!まぁいいわ。美咲はどうなのよ。」
「私〜?そ〜だねぇ〜……好きだよ♪」
「本気?」
連華と雪乃は飛びついた。
「本気だよ☆」
「それって……」
詳しく聞き出そうと雪乃が身構えた所に隼人が帰ってきた。一人一つずつポップ
コーン付きで。
「ありがとう。いくらかしら?」
雪乃を始め代金を払おうとした面々は隼人にやんわりと断られた。
断るだけ断った隼人はそのままシアターへ。
映画が終わると女性陣が号泣していた。恋愛ものだが最後に主人公が死んでしま
うアメリカ映画には珍しいバッドエンドだったのだ。スタッフロールが終わる前
に気を利かせて席を立った隼人。
長時間座っていたので凝り固まった体を解すように背伸びをする。
「ごめんねぇ〜。」
まだ目元が赤いまま連華さん達が出てきた。
「いえ、構いませんよ。お昼過ぎてますし、どこか食べに行きませんか?」
「いいねぇ。お腹すいたし☆」
美咲さんはノリノリで賛同する。
「悪くないわ。」
「そうね。」
結局は女性陣のペースに飲まれて、三歩後方を歩く隼人。元より会話に参加する
気など無いので、フラフラしている。
繁華街の角で露店を開いているのを見つけ、興味本位で立ち寄った。
年配の白髭が特徴的なおじさんが店番をしており、隼人に早速声を掛けた。
「気に入った物があったかね?全てワシの手作りでな。決して同じ物はないぞ。
」
シルバーを大事そうに見つめるおじさんからは職人としての品格がひしひしと伝
わってきた。隼人は馬のデザインが施された指輪に目が止まった。
「ん?あぁギルダーの指輪とな?若いのに良い目をしておる。」
おじさんはギルダーの指輪と呼ぶ指輪を取り隼人に手渡した。
「ワシが作った中では最高の品じゃ。刻んである馬をギルダーと言う。幼い頃良
くこの馬と遊んでの。あの日が懐かしいわい。」
ほほほ、と快活に笑うおじさんは幸せそうだった。
「コレ、頂けませんか?」
思っているほど高くはなく得した気分になっていると、隼人を探しに戻ってきた
連華さん達に睨まれた。