第11話
その後も真由美に色々と絡まれ、疲弊しきった隼人。屋敷に戻ると自室でダウン
してしまった。
「入るよ〜。」
返事も待たずに入ってきたのは連華さん。
「許可無く入らないで下さいよ。着替えてたらどうするんですか?」
「見る!」
即答に半ば呆れつつ、ベットから起き上がった。
「ご用件は?」
「明日映画でも見に行かない?」
「映画ですか……。」
決まった友人なんていない隼人には特に予定は無かったので2つ返事で承諾した
。
「この事は愛理には内緒だよ?色々面倒な事になっちゃうから。」
「構いませんが…。」
なぜ面倒な事になるのかイマイチ理解できていない隼人だったが、連華さんの言
うことは絶対。従うほか無かった。
翌日、休みだというのに朝早くから吉澤に叩き起こされて少々不機嫌な隼人。
残暑残る9月末。黒のジーンズに女神がペイントされたなかなかオシャレなTシャ
ツを着て連華さんと待ち合わせの駅へ。もちろん写真の少女に挨拶してから。
玄関を出ようとすると案の定吉澤に呼び止められた。
「お出掛けですか?」
「ちょっとな。」
「遅くならないで下さいね。」
顔を曇らせたまま吉澤は見送った。隼人は違和感を覚えたが気にしないことにし
た。
駅に着くと連華さんだけでなく他数人の女子学生がいた。人数を訊ねていなかっ
た自分に苛立ちを感じながら、明るめに挨拶した。
「お早うございます。」
連華さん以外の女子学生はキャーキャー騒ぎ出す。隼人は何を騒がれているのか
全く理解できずにいた。
「おはよー。」
「オハヨー。」
「お早う。」
この中で連華さんは一番上だ。
各々自己紹介が始まった。
髪が腰まで長く、お姉系の顔立ちが印象的なのが雪乃さん。
ゴスロリファッションが異様に似合うのは童顔幼児体型の美咲さん。
お二方によれば隼人は「イケメンでマジヤバい☆」とのこと。ちなみに☆はご愛
嬌。書けない口調もあるのですよ。
やけにハイテンションで盛り上がっている三人の遥か後方を静かに歩いていた隼
人は自分の女運の悪さを呪っていた。
「……聞いてる?」
不意に雪乃さんが隼人に話を振っててきた。
「すいません、考え事してたもので。」
「彼女いるの?」
「いませんよ。」
コレが恋バナかと内心苦笑しつつ、冷静に答える。読者諸君には隼人の性格を熟
知していただいているはずだ。
「嘘つきだぁ〜☆」
美咲さんはなぜか楽しそうにはしゃいでいる。隼人は来なければ良かった、と心
底思った。
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