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第1話

清々しい朝。カーテンの隙間から差し込む朝日で少年は目を覚ました。

どこか遠く…はるか遠くを見つめている澄んだ瞳。キリッと引き締まった顔は寝

起きとは思えない。やや長めの髪をかき上げ、静まり返った台所へと向かう。ど

うやら少年は一人暮らしのようだ。

慣れた手つきで熱したフライパンに卵とベーコンを乗せる。その間にトーストの

準備。うん、実に手際が良い。


マンションの中に香ばしい香りが支配する。品の良い食器棚からこれまた品の良

い皿を取り出し、ベーコンエッグを盛り付ける。

誰もいない孤独な空間の中の朝食。諸君は味気ないと思うだろうが、コレが彼の

日常なのだ。



食べ終わると食器を丁寧に洗い、洗顔してから制服に袖を通す。この格好からし

て市内の高校生のようだ。

等身大の鏡で皺がないか厳重にチェック。少し神経質なのだろうか?

そして玄関に飾ってある、写真に向かう。

美羽みう行ってくる。」

彼はそっと玄関を閉めて、まだまだ暑い9月の空の下を歩き出す。


これが彼――望月もちづき 隼人はやとの日常だ。





教室に入ると、暑いのかほとんどの生徒はダウンしていた。隼人はだらしないな

、と思う。

「お〜は〜よ〜ぉ〜。」

生気が感じられない声で女子生徒が隼人に声を掛ける。

「おはよう。」

隼人は挨拶を返して素早く席につく。

「毎度、毎度冷たいな〜。この冷血男!!あんたの体に暖かい血が本当に流れてる

の?」

「基本構造は君たちと同じだよ。」

サラッと流す。これ以上かまって欲しく無いようで、本に目を落とす。

隼人に相手にしてもらえないことを悟ったのか、女子生徒は再び机と平行になっ

た。


三々五々、教室に生徒が集まり始める。そして朝礼を知らせる無機質な音。

そんな日常の中、先程の女子生徒以外隼人に挨拶しようとする者はいなかった。

これもまた、彼の日常なのだ。



教室のドアが開かれ、担任の入場。なにやらニヤニヤしている。

「今日は転校生を紹介する。」

教室はざわついた。もちろん隼人以外は。

彼にとっては誰が転校してこようと関係無かった。小学生から友達を作らなかっ

たのだ。仲間といるよりも孤独を選んだ。

吉澤よしざわ 愛理あいりです。よろしくお願いします。」

全国の転校生が必ずする定型文。

隼人はその時点で…寝ていた。

皆が嬉々として吉澤を見ているのに、隼人だけ寝ているのは吉澤のプライドを酷

く傷付けた。彼女は他の…女子生徒から見てもうっとりするような容姿の持ち主

。自分でもそれを表には出さないもののかなりの自信があったのだ。

吉澤は密かに決意した。必ずあの男を落とすと。


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