変化
家に帰ろうとしたその時、手首を不意につかまれた。
「!?」
驚いて振り返ると、ちょうど20歳位の男が私の手首をつかんでいた。
なんですか。と言いかけたその時、男は言った。
「お前、さっき警察官を殺しただろ。」
けいさつかん?さっき殺した男の事か。
「あぁ、それが何か?」
なんでもないというように、私は言った。
すると、いきなり男は私に向かって拳を振り下ろしてきた。
風を切る音。一瞬の沈黙。
なんとか、かわせたが、なんなんだこいつは?
まさかさっき私が殺した男の身内か・・・?
沈黙の中、男は口を開いた。
「血を吸うならもっとうまくやれよな・・・このガキ吸血鬼が」
・・・待て。なぜ私が吸血鬼であるとこの男は知っている?
「貴様は何者だ?私に向かって拳を振り下ろすわ、いきなり私を吸血鬼だと抜かす・・・」
再び私の言葉を遮るように男は言った。
「俺もお前と同じ、吸血鬼だ」
「・・・それは本当なのか?」
私は疑う。
「もちろんだ。お前からは人間の血のにおいがしない。俺も、人間の血のにおいはしない。嘘だと思うなら、試してみろ。」
男はそう言って腕を私のほうへ差し出す。
私は、迷いながらも男の腕に鼻を近づけようと――・・・
「ちょろいな。さすがガキだ。俺が人間だったら今の一瞬でお前の脳天を‘これ’でぶち抜いてるぞ。」
いつの間にか、差し出された腕の方の手に拳銃が握られていた。
「・・・。」
「さっきお前が殺した警察官から抜き取ったものだ。」
こいつ・・・人間じゃないのは確かだな。
人間なら、吸血鬼だと思われる奴を刺激するようなことはしないのが普通だからだ。
「お前はさっきから何がしたい?私に何を言いたい?」
男は少し考えて、口を開いた。
「お前、ガキにしては吸血鬼の‘ルール’を知らなさ過ぎないか?お前、親から教えてもらってないのか?」
「親は、居ない。」
私は呟くように言った。
「ふーん。ま、同情とかしないけどさ、そういうことなら俺たちの仲間に入れ」
その一言で、私の生活は一変した。