悲しみが生んだのは
私には、両親が居ない。
私が生まれてすぐに母は私の目の前で人間に殺された。
父は私を連れて遠くに逃げて家を建てて暮らしていたが、父も私が5歳の頃、<食料探し>へ行ったきり帰ってこない。
きっと、途中で人間に捕まって、実験されて、体を粉々に切り刻まれているか、ホルマリン漬けにされてどこかの研究所に飾られているのだろう。
だから、今は家に一人。
父は、人間から遠ざけるために森の奥にこの家を建てた。
だからだろうか、余計に孤独感がこの家の中に漂っている。
昼はまだ鳥の鳴き声が聞こえてきていいが、夜になると、この世に生命が消えたかのように静かになる。
聞こえてくるのは、自分の呼吸の音だけ。
そしてそれを聞いてさらに苛立ってくる。
なぜ私は呼吸しているのだと。なぜ生きようとしているのかと。
自分の心臓に止まれと命令しても、全然気にしてないかのように規則正しく動く心臓がある限り、私は永遠と生き続けるだろう。
なぜなら吸血鬼は老いては死なないから。
だから、基本は吸血鬼は不死なのだ。
もちろん、母のように殺されたり、生き血を長期間吸わなかったら話は別だが。
だったら・・・何年かかってもいい。
復讐してやる。絶対に。
母を殺した人間に。連帯責任で皆殺しだ。
そして私は生き血を吸わずに綺麗に逝くのだ。
そう、決心した、三日月の夜。