赤ちゃんだけの世界
秋、多くの生命は死に絶え、卵になって、春を待つ。そして、無数の赤ちゃんたちが誕生する。カマキリも無力で非力な赤ちゃんだが、でも、まわりは、赤ちゃんだらけの世界が展開される。
僕はお腹が空いた。生きていくには、僕は餌をたべなくちゃいけない。
僕は、カマキリ。昆虫界の最強の昆虫の部類だ。バッタもトンボも食べて生きるのだ。
しかし、生まれたばかりの僕の鎌はまだ、小さくひ弱だ。僕の口だって、堅いものなんてだべることはできない。
しかし、なんということだろう。まわりは、生まれたてのおいしそうで、のろまで、柔らかな赤ちゃんばかりだ。もう、食べ放題だ。
しかし、僕だって、赤ちゃんカマキリなんだから、食べられる量も限られている。食べ放題だからといっても、そんなに食べられるわけじゃない。
僕が、夢中になって、赤ちゃんバッタを食べ終えて、気がつくと、僕の兄弟たちに
姿が、大分減って来たように思う.どこかに行ったのだろうか。それとも、誰かに食べられてしまったのだろうか?
バッタの食べる草も、バッタも、そして、僕も、同じリズムで大きくなっていく。そのリズムに、私のお父さん、お母さんが、卵を産んで、僕たちに、次の世代を託した。
この食べたバッタの命の数は、来年の春には、赤ちゃんカマキリの命として、大自然に返していくのだ。命の数の不思議さ故に。