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マジック・カンパニー  作者: シャーネ
納得がいかない降臨
5/16

1-05.正式加入



エルタノルティアはその立地条件からディープフォレストから現れる魔物被害を直接浴びる国のため冒険者や傭兵が多く、それらの人々からの収入を目的とした都市だ。

行き交う人は冒険者や旅商人が目立つ。

王都であり、辻馬車や一際華麗な装飾の施された馬車も行き交っている。

ちなみに華麗な装飾は王城でみた絨毯の柄とおなじである。

いわゆる、竜が槍をもっている意匠。

エリスが着ている服にも同じ意匠が施されている、一種の国紋だろう。

すれ違う人々の中には衛兵もいたが、俺はなにも詰問をうけることはなかった。


セントラルウェイを歩きしばらくすると、露店の傍に人だかりができている。

人だかりは大層盛り上がっている。 エリスやクロノスも興味をもったようで、俺とならぶようにしてそちらに向かう。

なにかイベントでもやってんのか? 違った。

遠目に人だかりの中央に目を向けると、木で作られた掲示板になにか貼りだされている。

それはA3用紙を4枚組み合わせたような大きな写真で、一人の男の裸体写真であった。


------------------------

--------WANTED----------

200金 



  _('A`)_

  | ( ) |

  ヽノωヽノ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ユニークスキル持ち:越境者

罪状:王宮の破壊工作


------------------------


噴水をバックにして 手を広げ、ありのままの姿をみせて、不機嫌そうな面をしている一人の男。


・・・・・・・・・・・・・・・俺じゃねーか。

一体いつのまに撮ったんだ。そもそもどうやって撮ったんだ。中世のくせにデジカメあんのかよ。

怒りと虚脱感と、赤裸々な姿を不特定多数ににみられた悲しさ

そんな中、子供連れの夫婦の会話が耳にとびこんでくる


「ねー パパー あのちと、 ゆうめいじんー?」


「ん~、 あれはな、 えら~い方々がすむところを破壊したテロリストなんだ、 」


「え~ テロリストってなあに?」


「わるもののことだよ。」


「パパよりつおいのー?」


「そうだなあ、正々堂々と戦ったらパパのほうが強いぞ! だがな、あ~ゆ~わるものは卑怯な手をつかってくるからまけるかもしれないな」


「そんなことないよぅ、パパのほうがつおいょー!パパのおちん○んのほうがおっきいし、筋肉もあるもん! 」


少女の悪意なき声はとりわけ大きく、 掲示板をみていた人々からドッと笑いが起こる。

夫婦は赤面して、少女の口をふさごうとしている。

赤面どころかorzの文字を描き、地にはいつくばった人間が他にもいた、俺だ。

もう・・・そのなんていうの・・・ダレカタスケテ。


頭上からエリスの声がかかる。


「あ~、ん~、その なんていうか、 男の価値は大きさじゃないって言うわよね?」


クロノスも追随してフォローしてくる。会話の流れと俺の落ち込みようから、あれが俺の正体だときづいたのであろう。


「そ、そうですよ。 男は知識と包容力ですよ!」


っく、涙目になりながら、目にかかる銀髪を耳に梳きなおし、たちあがろうとしたところにジェイリスの一言。


「それにしても、小さい野郎だな。なんで、あんなのが200金もすんだ?」


ガフッ!! 倒れ伏す俺。


エリスの音速の蹴りと、クロノスが杖でジェイリスをなぐりつけ、ジェイリスは頭をかかえて、うめいた。

倒れながら横目でその様子を見る俺。

いいぞ、もっとやれ。 



なんとか気を奮い立たたせて立ち上がり、ガックリと肩をおとしながら4人で歩き出す。

沈黙の中、エリスが露店でかった木の棒についた氷菓子を渡してきてくれた。

一応きをつかってくれているのだろうか、涙。

一緒に食べあるきながら エリスがクロノスとジェイリスのほうを向いて言う


「あのね、 クロノスはわかってるとおもうケド、あのエレメンタルフォトグラフで撮られた写真の人が、ロゼの本当の姿だから・・・

 顔はおぼえておいてよね。」


”顔”という言葉に強調が入る。


「わかりました。」

「なに!? あれがそうなのか!」


ビックリしているジェイリス。エリスは食べ終わった氷菓子を名残惜しむように、棒をペロペロしながら、なんかエロいな、それはいいとして

ジェイリスにむかって口を開いた。


「ユニークスキル持ち:越境者 って書いてあったのみなかったの?」


「おお。そういえば!」


と、ポンと手をあてて納得するジェイリス。 脳筋は伊達じゃないな。


進んでいくと中央に噴水がある広場になっていた、俺が降臨したあの場所である。忌まわしい思い出がよみがえる。

嫌な思い出から逃れるように、さっさと通りすぎ、そこから大きく別れて三叉路になっている一番右の道に進んでいくと

ほどなくして ”ギルド支部-エルタノルティア-” の看板が目に入る。

文字が読める。

あまり気にしていなかったが、言葉も分かり、こちらの言葉も相手に伝わるのだ。

文字は読めないだろうと予想していたが、これはビックリ。

まさか日本語というわけでもないだろうとおもっていたがやはり見たことない文字だった。

だが、理解できる。

ただ、書くことは多分できないだろう。

試したわけではないがそんな気がした。


ギルド支部は木造で作られている。驚いたことに継ぎ目に短ざく金物やかど金物が使われておらず、木のみで作られている。

避暑地のおしゃれなログハウスのようだった。

入り口の重厚な扉を開け、中にはいると予想以上に広く、奥にカウンターがある。

エリスが俺の持っていたリュックを持ち、重そうにカウンターにひきずっていく。

ロビーに腰を下ろしてしゃべってるグループがこちらに目を向け、声を低める。

彼らの喋り声は俺の耳にもかすかに届いた。


「おい、あれ、”神風”だぜ。」

「あの金髪のねーちゃんが?まだガキじゃねーか。」

「よせよ!あいつに絡んで吹っ飛ばされた奴が噴水広場で晒しものになってたのはついこの間のことだぞ。」


神風? どっかに特攻でもするのか?

なんのことか分からないが金髪ってのはエリスのことか。

俺はクロノスに顔を向け、目線で説明を求めてみた。


「ああ、貴方に会う前のことですよ。 数日前にね、街でエリスにぶつかってきた方がいましてね。

本来ならエリスもその程度のことでは怒らないんですが。彼女、手にアイスボーを持っていましてね。

アイスボーっていうのは氷菓子の一種でよく露天で売られているものなのですが・・ さっき食べてましたね。

あれですよ。

ぶつかった際にそれが地面に落ちてしまいまして。

その場で謝れば良いものを愚かにも落ちたアイスボーを踏みつけて鼻を鳴らしたのですよ。

あとはお察しの通りです。

”神風”のエリス。エリスの通り名ですね。彼女はギルドからプラチナランクの評価を受けている冒険者なのですよ」


食べ物の恨み恐るべし。

エリスがお食事してるときは丁重に応対しよう。

俺は脳内のメモにチェックをいれた。

あいつが口になにかいれてない時があるかが疑問だが。

ちなみに現在、エリスの手には干魚?が握られている。

最初に会ってからのギャップが酷すぎる。 


クロノスが杖を持ち直しながら続ける。

「ギルドには様々な依頼がありましてね、登録して依頼をこなしていくと評価が与えられるのです。

いわば指標ですね。最高がダイヤ,順にプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズとなっています。

その過程で5段階にさらに分かれます。

シルバー1、2、3、4、5 です。

数字が若いほど高位です。 ですのでシルバ-1の次のランクは、ゴールド5となります。

プラチナ以上ですと、通り名、いわば二つ名ですね。名乗ることを許されます。

当然評価が高ければ難易度も高く、報酬も高い依頼が受注できます。

シルバー以上であれば、討伐、捕縛等の依頼を受けることができますが、安全を考慮して原則として最低3人以上でグループを組むことになっています。

昔はソロ・・ 一人で受けることも可能だったのです。当然、一人のほうが報酬を分配せずに済みますからね。

ですが討伐に行って帰らない者が数多くでまして、こういった形に落ち着きました。」


成程。

俺的に解釈するとドラゴン○エストでいうルイなんちゃらの酒場とモンスター○ンターでいうランクを組み合わせたシステムか。

ちなみにクロノスとジェイリスはどのくらいのランクなのだろうか。


「ジェイリスはゴールド2ですね。彼はあのように見えて騎士団出身なのですよ。詳しくは知りませんが。

私もゴールドです、4ですが。元々、荒事は不得意で研究専門だったんですけどね。まあ それはよいでしょう。」


話しているうちにゴブリンからでた魔石と、森でとれた各種の生産物の清算を終えたエリスがカウンターから戻ってくる。

ジェイリスは広間の横にある掲示板とにらめっこしていた。


「ちぇ~ 可愛くおねだりしてみたんだけど2金貨とちょっとだったわ。」


相場はエリスと岩場で少し聞いたが、あやふやだ。少ないのだろうか。その辺について尋ねてみる。

服が7銀前後と相当するなら結構な額じゃないのか?


「ロゼ、ほんとに何もしらないのね。いいわよ、おね~さんがおしえてあげるわ。

1000銅で1銀、100銀で1金! 2金あればアイスボーが~・・・・ んんんん~・・・

250,000本かえるわ!!!」


「0が一つ多いです。それにアイスボーで換算するのは止めてください。」


ううん、クロノスのつっこみが速い。

えーと、アイスボーが25,000本買えるってことは2金=25,000 1金=12,500

1金貨が100銀だから、1銀で125本買えるってことだよね。

ダメだ。知恵熱でそう。

グーグル計算機うぇるかむ。


計算に頭を悩ます俺にエリスが声をかけてくる。


「さて、ロゼ、 これからの方針を決めましょうか。」


「そうだな。 立って話すのもなんだ、あそこのテーブル借りようぜ。」


と、クロノスが掲示板とにらめっこしているジェイリスを呼びに行き、4人でテーブルを占拠する。

エリスが切り出した。


「まずね、取引の最重要事項でもある、仲間に入って助けてほしいっていったことについて詳細を説明するわ。」


ふむ・・と俺はうなずく。


「私達、3人は自慢じゃないけど かなり高位のパーティーよ。私がプラチナ、二人もゴールド。エルタノルティアのような辺境国家では

まず見かけないランク。 で、本来の活動拠点は妖精大国シファギリス。私達はそこにあるギルド本部と、シファギリスから共同依頼で、夢幻洞の主であるモルガナ征伐

を仰せつかったわ。それが1年前のことね。 夢幻洞っていうのは一種の迷宮でね、 迷宮についての知識はないわよね? 」


コクリと俺はちゃちゃをいれずに頷く。

クロノスがエリスの言葉をひきついで説明する。


「迷宮、ダンジョンとよばれるものがいつからこの世界にあるか、どうやって生じるのかは分かりません。ですが、迷宮は総じて魔素の高いエリアに

出現します。 出現理由は様々ですが、強力な魔素を持つ”なにか”の影響をうけて発生することが確認されています。

危険な理由は、魔素を非常に多く含んだ土地のため、時間がたてばたつほど 中にいる魔物が強力になっていく点にあります。

そのため、定期的にダンジョンを攻略、制圧する必要があるのです。 ダンジョンで殺されてしまった冒険者の武具や、鉱石は高濃度の魔素の影響を受け

、非常に価値がありますし、モンスター自体が強力ですが手に入る魔石も価値の高いものが多いため、冒険者やトレジャーハンターといった生業の

者たちがいつもなら定期的にダンジョンの中を”掃除”してくれるので問題なかったのですが・・・」


ここで、エリスが続きを話す。


「夢幻洞っていうのは約1年前、ディープフォレストの中間あたりで存在が確認された新しい迷宮よ。ついた名前の通り、

 夢幻洞は存在場所が刻一刻と変わるの。 探し当てるのに何ヶ月要したかわからないわ。

 ディープフォレストの南にあったことが確認されたとおもったら、次の日にはなくなったたりと。

 一度、入り口前までたどり着いたのだけど、結局はいれなかったわ。

 森ででてくる魔物も場所によっては手強くてね、正直 手をだしあぐねている。

 かといって、任務を放棄することは いろんな事情があってできないわ。するつもりもないけどね。

 そんなわけで戦力増強を考えたのだけど、エルタノルティアみたいな辺境にランカーがいるわけもなくて・・・。 

 それで情報を集める意味もあって、ギルドを通してエルタノルティアの王族、貴族に協力を要請したの。

 そしたら・・・ やれ、祝宴じゃ! やれ、舞踏会じゃ! やれ、シファギリスにおられるお父君にお取りなしを!だとか・・・ あのクソジジイ・・・」


だんだんエリスが握る拳に力がはいってくる。 落ち着きのあるクロノスがなだめつつ、


「まあ、 口に出して直接はいわれはしませんでしたが アクイロフィアとの戦争の際には是非ご協力を! と顔にかいてありましたね。

 エリスと僕らに対する態度も笑うほど違ってきて、最初こそ 丁重でしたが、最後のほうはもう エリスのことをそれはもう

 すご~~~く特別扱いで、 ああ、エリスは名のある有名なシファギリスの貴族なんですよ。 これでも、いちおう。 」


ほほう、なんとなくそんな気はした。

じつはエルタノルティアの王族とか、貴族とか そんな展開を予想していたが、別の国だったのか。


「でさ、 そんなわけで嫌々、協力を要請した手前、ギルドやシファギルスにも迷惑がかかるのもあれだからさー 無下にできなくてさ。

 かといって、このまま時間を浪費するのも無駄だし、どうしたものか とおもっていたときに、あなたが現れたってわけ。」


「納得。」


で、盛大に城塞をぶちこわしたとこにつながるわけか。


「ここまではなしたところで、あなたの気持ちがききたいわ。

何回も聞いて悪いんだけどさ、あれよ!ユニークスキルに目が蒙んだのはたしかよ!是非、仲間にしたいともおもったわ!

だけど、王宮の奴らと同じにはおもわないでほしい。あの時、あの場に私はいたけど 自分のことでもないのにほんと腸にえくりかえりそうだったわよ。    

何、あの態度。自分たちのことしか考えていないからあんな醜いのかしらね。

そんなやつらと同列に思われるのごめんよ。 指輪も、あなたが望むなら解除するし、 どうしても一緒にくるのはいやだというなら

それでいい。 取引とはいったけれど、いきなりこの世界にきた人に無茶をいってるのもわかるわ。 だから」


だから、と続けようとしているエリスに俺は言う。 


「取引でかまわないさ。 それに正直助かった。 あのままじゃ、俺はどっちにしろこの国のお尋ねものだろう、今もだが。

 逃げる場所もなく、どこいくあてもなく、それこそ 途方にくれただろうな、いずれにせよ 魔物に殺されたか、捕まるかだ。

 いろいろあったが、そういうことなら同行させてくれ。 」


指輪の件は誤解があったにせよ、あの場ではああせざるをえまい、説明を下手に受けてからでは俺ははめなかったかもしれないし、

実際、魔素にひかれて魔物がやってくるのは、ゴブリンがおそってきたのでおそらく真実であろう。

嘘をつく必要がない。


目をパチクリしているエリスが、ふふっと笑うと


「じゃ、よろしくね!ロゼ」


と嬉しそうに笑った。やっぱり美人だな。

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