絶対零度
開いて頂きありがとうございます。特に何も申しません。色々と妄想してみてください^^;
冷たい冷たい漆黒の闇。
-273度の宇宙空間。
それほど冷たい世界でも、宇宙服無しで飛び出せば、体中の体液が一瞬にして沸騰するのが不思議。
真空ゆえに音も響かない。地上なら衝撃波を生む音速を超えるロケットの先端に立つ。
加速度さえなく、安定した速度で巡航するこの船の先端では、速度すら感じない。
これが慣性ってやつか?
船の先端を、軽く蹴り出せば、私はその身一つで音速を超える速度で巡航するミサイルと化す。
まっすぐに、ただまっすぐに、恐ろしいほどの速度で飛んで行ける。それに飽きれば、宇宙服を脱げば良い。一瞬で、私の身体は沸騰し、宇宙の塵と消えるだろう。その瞬間に、私は悲鳴をあげることは出来るのだろうか?
悲鳴をあげても、声を伝える空気が無い。私の周りに悲鳴は張り付き、すぐに悲鳴すら沸点を迎え、蒸発するに違いない。
どちらにせよ、私の悲鳴を届けたい相手もいない。
蒸発した私の元素は宇宙を漂うだろう。
そうなれば、もうあの声を聴くこともない。宇宙空間に輝く太陽のように暖かくそれでいて真空故に絶対零度の冷たさで、私の心を狂わしいほど沸騰させる。あの声。
船の先端を軽く蹴り、闇の世界へ飛び立った。
あの懐かしい声が聴こえない世界へ。
「パパ。ママが早く死ねばいいのにって、また言ってたよ」
最後までお読みくださりありがとうございました。
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