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 だいたい1ヶ月前に投稿したんだよね。ペースは月1になりそう。


「そこに座って待っていなさい。紅茶注いできてあげるわ」


 幽姉に言われた通りにイスに座る。今までずっと床に座りっぱなしだったから久しぶりだなぁ。何年ぶりだろ?


 あれ? そもそもどれくらいあそこに閉じ込められてたんだろ? あの部屋を出てから時間が経つのがすっごく速いし、身体も思った通りに動く。魔法が掛かっていたんだろうけど、どんな魔法なんだろ?


「はい。熱いからゆっくり飲みなさい」

「     」

ありがとう


 聞えてはいないけど、何を言ったのかは分かってくれたと思う。幽姉はにこりと笑ってくれた。


 膝まで伸びている袖をまくってカップの取っ手の所を持つ、までは良かった。持ちあがらないんだ。


「アレン、あなたしっかり食べていた? 声も出せなくて、カップも持てないくらい痩せて、臭いもまるで何年も身体を洗っていないみたいだし……まるで閉じ込められていたみたいじゃない」


 カップを持とうとする手を戻して、僕は考えてみた。


 “閉じ込められていた”。多分、いや絶対そうだ。

 何も無い部屋に鎖でしばられて、何もできずにぼーっとするしかなかった。ごはんも1日一回、でもスプーンを持とうとするだけで3日はかかってしまう、食べれるわけがない。たまに夢子が様子を見に来るだけ。昔聞いた悪いことをした人の生活そのまんまだ。


 僕は幽姉の言ったことに頷いた。


「本当に? あの親バカ神綺が息子を閉じ込めるなんてねぇ……じゃあ、アレンが居なくなったのは8年前ぐらいだから、それからずっと幽閉されてたわけね」


 8年? たってそれだけしかたっていないの?

 すくなくとも数万年は過ごしたはずなんだけど……。


「………ちょっと待ってなさい」


 そういうと幽姉はまたどこかに行ってしまった。と思ったらすぐに戻ってきて、真っ白な紙と、赤い液体の入ったお皿をもってきて、僕の目の前においた。


「その手じゃペンも握れないでしょ。指にその赤い水をつけて紙に字を書きなさい。それくらいなら出来るでしょ」


 ………字かぁ。あんまり覚えてないなぁ。

 まあでも、口でパクパクするよりはいいだろうから、やってみよう。


 ひととおり書いて、幽姉に渡す。

 『僕は8年以上過ごした気がする。数万年は越えてると思う』って書いたんだけど、伝わるかな……。


「数万年経っている気がするですって? 本気で言っているの?」


 頷く。伝わったみたいだ。


「そう。と言う事は時間に干渉する魔法が掛けられていたわね。一瞬一秒が永遠に続くかのような魔法。名付けるとするなら《精神の減速》かしら」


 《精神の減速》。

 周りではいつも通りなのに魔法にかかった僕だけがまるで何年も過ごしたような感じがする魔法なんだと思う。


「時間は生き物を腐らせる。肉体的にも精神的にもね。いったいどれくらいの時間をあなたが過ごしてきたのか知らないけれど、今まで通りじゃいられなくなるのは確か」


 幽姉は立ちあがって僕を抱きしめてくれた。

 妖怪として最上級の力を持つ幽姉にかかれば僕なんて一瞬でグチャグチャになってしまうけど、そうなっていない。優しく、僕を包んでくれた。もう思い出せないけれど、昔こうしてもらっていた気がする。


「がんばったわねアレン。あの頃はまだ5歳だったのに、よく耐えたわね。偉いわ、私だったらきっと耐えられない」


 ギュッと、優しく抱きしめてくれる。その力加減が心地良くて、ようやく僕は生きてるんだって思えてきた。


 きっと今の僕は嬉しいんだと思う。あまりの嬉しさから、母さん達に見放された哀しさから泣いているんだと思う。


 でも何も感じない。嬉しくもない(・・・・・・)哀しくもない(・・・・・・)つらくもない(・・・・・・)、“何も感じない”。


 僕のココロは壊れてしまったのかなぁ……これじゃまるで人形みたいだ。せっかくお城から逃げてきたのに、生きてるのに……これからなのに……。


「………そうよね。育ち盛りの子供を閉じ込めて、何の変化も感じないわけ無いわよね」

「?」

「何も言わなくていいわ、分かるから。今のアレンの顔を見れば」

「?」

「あなたは生きる代わりに色んなものを捨てなければならなかった。身体も心も感情も、全て」


 それじゃあ本当に僕は人形なんだ……。


 でも、いいや。これから楽しいことがたくさんあるんだから。きっと“楽しい”って思わないんだろうけど、ずっと続けていれば、いつかきっと、元に戻れるかもしれないから。その日までの辛抱だから。死んじゃうよりはずっといいはずだよね?


 紙にそう書いて幽姉に見せる。

 幽姉はまたにこりと笑ってくれた。


「アレンは強いわね。あなたならきっと出来るわ。私があなたを支えてあげるから、一緒に頑張りましょう、ね」

「  」

 うん


口を無理矢理動かして微笑んで見せる。これが自然に出来るように、頑張ろう。

















「ねえアレン。外に出てみたいと思わない?」

「そ、と?」


 僕が幽姉の所に住み始めてから数年経った。

 伸びすぎた髪は整えて目元が見え無いようにして腰まで届く長い長髪に、身体も成長してきたけどどう見ても男より女っぽい身体つき、可愛いからって理由で幽姉が縫ってくれた脛まで裾を伸ばし、両手が隠れるほどだぼっとしたワンピース。

 少なくとも前みたいにみすぼらしい格好ではなくなったと思う。


 感情が表に出るように色々経験したり、声が出るように特訓したり、バカには思われたくないから勉強したりと、この数年でできることは多くなった。と、思う。何せ字を覚えるので2年かかったんだから……。


「そう、外。今の季節は寒いんだけど、そのあとの春が見物よ。何せ60年目だもの」

「さ、むー、? は、る? ろ、くじ、ゅう?」

「幻想郷については前に説明したことがあるでしょう? その幻想郷を現実と隔離する為の博霊大結界は60年周期で緩むの。そこに外界の人間の魂が流れ込んで花に憑いて、四季の花々が一斉に咲くの。あまりいいことじゃないんだけど、仕方ない事だから、ね」

「ゆーねー、は、な、だい、す、き」

「ええ。行ってみない? 幻想郷は少し危険だけれど、きっとアレンにとってプラスになることがたくさんあるわ」

「いく」

「決まりね」


 お城にいた頃は一度も出してもらえなかったし、幽姉と住んでるこの夢幻館から外に出たこともない。ちょっと館の周りを散策したことはあるけど、それは外に出たって言わないと思う。


「お出かけですか?」

「ええ、しばらく留守にするから任せたわメリー」

「かしこまりました」


 幽姉が話してるのはメイドのメリーさん。逆刃の鎌を持ち歩いてて怖いけど、中身はとっても優しい妖怪さん。この前は幽姉に黙ってお菓子を作ってくれたんだ。


「楽しんできてくださいねアレン君。でもお外は危険ですからお気をつけて」

「だい、じょ、ーぶ。のー、り、ょく、ある」

「それでもです。あそこは何が起こっても不思議じゃないんですから」

「はぁい」

「ウフフッ。よしよし」


 頭を撫でてくれたメリーに手を振って、幽姉と一緒に館を出た。

 目指すは幻想郷だー。

















「さ、着いたわよ。ここは幻想郷でもっとも重要な場所。博霊大結界を維持している、博霊神社よ」

「はくれ、ー、じ、んじゃ」

「巫女にちょっと挨拶していきましょう」


 幽姉は建物の中に入っていった。慌てて僕もついて行く。


「霊夢」

「……あら、幽香じゃない。久しぶりね。賽銭箱はあっちよ」


 幽姉が霊夢って呼んだ女の子は脇を出した変な格好してた。不気味。


「妖怪にたかっている時点でおしまいよ。ねえアレン」

「う、ん?」

「アンタ……いつのまに子供を……」

「つまらない冗談ね。ぶっ飛ばされたいのかしら?」

「やれるもんならやってみなさいよ」


 まさに一色即発……だっけ? とにかくいつ戦い始めてもおかしくない雰囲気になっちゃった。とりあえず止めてほしいので幽姉のスカートの裾を引っ張る。


 くいくい


「け、んか、め」

「……はぁ。そうね。霊夢、今日は見逃してあげる」

「こっちの台詞よ。で、その子は」

「知り合いの息子よ。事情があって私が育てているの」

「アンタが子育てですって!? どういう風の吹きまわし?」

「そうしなくちゃいけなかったってこと。それと、博霊の巫女には言っておくわ、アレンの能力」


 そういうと幽姉は僕の方を向いて傘の先を向けてきた。左手にはスペルカード。

 多分あれが来るんだろうなぁ。それにしても博霊の巫女って何だろ?


「花符『フラワースパーク』」

「ちょっと!?」


 高速迫ってくる閃光。髪の毛だらけの視界でそれを捕らえて“殺す”。

 『フラワースパーク』を“殺し”た後には何事も無かったかのようだ。幽姉が僕に向けて傘を向けてカードを持っているままだし、巫女さんも動いたわけじゃない。驚いてはいたみたいだけど。


「この子、なにしたの? アンタの元祖マスパ消すとか……」

「アレンの能力は『殺す程度の能力』よ」

「ハァ!?」

「アレンは吸血鬼の妹みたいに無差別じゃないから大丈夫よ。自分の能力のこともよく分かってる。傍には私も居るし、大事にはならないわ」

「だ、い、じょー、ぶ!」


 自分なりに精一杯大丈夫ですよアピールをする。だぼだぼの袖をパタパタ振ってみた。


「なにこれ可愛い……」

「でしょう? でも1つだけ言っておくわ。“アレンは嘘も冗談も言わない”。口にしたこと、仕草、字、すべて本気で思っている事よ。気をつけて頂戴」

「能力は危険だけど、一応の分別はつくってことね。分かったわ」


 でも僕は感情が無い。分別が付く云々は僕なりの考え方から来るものだから、それが常に正しいとは限らない。僕には|善悪や感情的な判断は難しい《・・・・・・・・・・・・・・》ってこと、わかってるかな巫女さん。


「ゆーねー、いこ」

「そうね。身体が冷える前に行きましょうか。霊夢、アレンを任せることあるかもしれないから、その時はよろしく頼むわ」


 幽姉がふわりと浮きあがったのを見て、僕は自分の身長ぐらいある大きな4枚の蝙蝠のような羽根を広げる。こういう妙なところは母さん譲りなんだよね。


「ちょ、ちょっと幽香!?」

「ばい、ば、い」

「なにあれ超可愛い……」

「あなたって結構黒いわね」

「?」


 太陽の畑と言われているらしいところに幽姉の家はあった。疲れていたから直ぐ眠ったんだけど、起きたら幽姉がうっとりした顔で眠っていた。なにかしたっけ?







「今日はもう疲れたでしょう? 直ぐに寝る?」

「うん、ねむ」

「ベッドの用意してくるからちょっと待ってなさい」

「ゆーねー」

「何?」

「きょ、う、さむ、から、い、しょ、ねよ?」

「!?」



 この話を鬱系に書いていけるのか不安になってきた。

 タイトル詐欺も良いところだヨ。


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