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これは鬱系、ダーク系ののつもりです。

ご注意ください。


また、これは作者が投稿している別の作品の息抜きで書いたものです。更新は不定期となります。

 僕がこの部屋に閉じ込められて×××××年経ったある日、いつものように**がきた。

 **はこう言った。


「***が無事に***なさいました。***は***。***様の*です」


 それだけ言って、出ていった。






 さらに×××××年経ったある日、ようやく**が言っていたことがわかった。


『神綺様が無事に御出産なさいました。お名前はアリス。アレン様の妹です』






さらに×××××年、あの時夢子が言っていたことを理解した。


妹、つまり、あたらしい、家族


 そう、あたらしい家族。母達のあたらしい家族。


 むかしから王家が子どもを産むのは後継ぎの為だって誰かが言ってた。でも僕が居るじゃないか。どうして? あのときだってみんなの為に……母さんの為に怖いのを必死で我慢して、敵を殺したというのに、どうして? いつもみんなの為に頑張って来たのに……。


どうして僕がいるのに妹が産まれたのだろうか?


あ、 


 わかった。僕はイラナイコドモだったんだ。


 いつもほめてくれてたのも、みんな僕の能力が凶暴だから殺されないようにって思ってたんだ。みんながニコニコしていたのも、ご機嫌取りだったんだ。夢子がいつも僕の好きなお菓子を作ってくれてたのも、母さんがだっこしながら「愛してるわ~」って言ってくれてたのも、父さんが頭を撫でながら「自慢の息子だよ」と言ってくれていたのも、みんな嘘だったんだ。


 みんな僕の事が嫌いなんだ。

 みんな僕を憎んでるんだ。

 みんな僕が死ねばいいと思ってるんだ。

 みんな僕を殺したいと思ってるんだ。


 魔界のみんな、夢子、父さん、母さん、生まれてきた妹、神様、世界。みんなそう思ってるんだ。


 キエテシマエ、そう思ってるんだ。


 やだなあ。死にたくないなぁ。


 でも、そんなワガママ聞いてくれないんだろうな。


 せめて、ふつうに生きたかったな。

 あったかいご飯を家族みんなで食べて、なんでもない話で盛り上がって………。

 迷惑はかけたくないから言わないけど、思うくらいなら許されるよね?


 せめてお城の外に出たかったなぁ。




 ガキンッ!!




 ? 何の音だろ?


 あれ、身体が普通に動く。いつもならちょっと動かすだけで、一日終わるのに、なんでだろ?

 まあいっか。鎖が切れたから自由に動けるようになったし、最後にちょっとぐらいお外に出てみようかな。


 そういえば、普通に考えごとができる。なんか変だなぁ……。うう、気持ち悪い……。ま、そのうち慣れるでしょ。


 窓もないし、このドアしか出入り口無いみたいだし、ここから行こう。

 ばれたら多分殺されるだろうけど、べつにいいや。何してももうすぐ死ぬのは変わらないし。

















 誰もいないなぁ。いま夜なのかな?


 それにしても、髪は床に引きずるくらい長くてうっとうしいし、服は白いぼろきれ、靴はいてないから寒い。あったまりたいなぁ。


 僕が使っていた部屋が残ってないかな……って考えたけどやめた。だって何千何万年ってくらいあの部屋に居たんだから、今頃は物置になってそう。


 見つけた扉を開いていくけど、どの部屋もよくわからないものばっかり。かってに使うのも悪いし、別の部屋で使えそうなのをさがす。あれ、これじゃ自分のものを見つけるまで歩きまわるんじゃない? ………まあいいや。久しぶりのお外だし。


 しばらく適当に歩きまわる。もう面倒くさくなったから服と靴をさがすのはやめた。


「―――――――」

「――――」


 話し声が聞こえる。ちょうど目の前の角をまがった先。

 そこには夢子と小さい女の子がいた。


「ねえ夢子、ママは?」

「神綺様は今お仕事中です。今から魔法の練習でもされますか?」

「うん! さいきん上手になってきたんだよ。今度夢子にも見せてあげるね!」

「ふふっ、楽しみにしていますね。アリス様」


 ありす? ありす……アリス? てことはあの女の子が僕の妹?

 いいなぁ、髪が金色だ、父さんと同じ色だ。僕黒なんだよね。顔も身体も髪も父さんと母さんのどっちにも似てないのがいつも嫌なんだよね。


「夢子ー」

「なんですか?」

「お兄様には何時になったら会えるの?」

「!? そ、それは……」

「ママもパパも夢子もみんなも、お兄様の話をしたら同じ顔する。なんで? 私お兄様に会っちゃいけないの? 夢子は毎日会ってるんでしょ?」

「そ、そうですが……その……色々ありまして、神綺様と旦那様からのお許しが無い人物以外は会う事ができないのです」

「またそれ言うー。1回でもいいから会ってみたいの。ダメ?」

「申し訳ありません……」

「ぶー」


 そうだったんだ、始めて知った。夢子しか来ないとおもったらそういう事だったんだ。

 会っちゃいけないのは仕方ないよね。死ぬんだし。


「ここで少し待っていてくださいね。すぐに戻ってきますから」

「うん」


 夢子は部屋の中に入っていった。あそこは………なんだっけ? 思い出せないや。


「ひまだなー」


 ……これはチャンスじゃないかな? 今なら夢子はいないし、ちょっとアリスとお話してみようかな。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ。見学に来ましたって言えば何とかなるでしょ。


 角からでて、アリスの方へ歩く。

 靴を履いてないからぺたぺたと音がして、アリスが僕に気がついた。


「あなた、誰? お城の外の人?」


 頷く。


「ふーん。名前はなんて言うの? 私はアリス!」

「             」


 え? 声が出ない、なんで? 


「?」


 アリスがこっちを見てるけど、それどころじゃない。

 声が出なかった。出したつもりなのに。

 のどを触ってみると、すごくやせているのがいるのが触っただけでわかった。よく見ればのどを触った手も細くなってる。皮だらけでしわしわ、おじいちゃんみたいだ。


「あなた、どうしてそんな恰好してるの? 服一枚だけで寒くないの……って靴も履いてないじゃない! 髪もボサボサだし、こんなに長いし……。それに手も足も細いわ。ちゃんと食べて、暖かいようにしないと駄目よ」

「         」

「なんて言ってるのか分からないわ。ちゃんと言ってくれないと………もしかして喋れないの?」


 頷く。

 いつの間にか僕ははなせなくなってしまったみたい。あの日から一度も口を開いたこと無いからかな?

 それにしても、アリスは優しいなぁ。始めてあった僕をこんなに気遣ってくれるんだから。将来きっといいお嫁さんになると思う。旦那さんは幸せだね。


「そう、ごめんなさい」


 しかも謝るなんて……僕はそんな謝られるような奴じゃないのに。

 話す事も出来ない。兄だと伝えることもできない。でも、アリスに何かしてあげたい。僕は一応アリスのお兄様だから。

 だから僕は頭をなでようと思った。いつも父さんがしてくれてたみたいに、アリスにしてあげよう。なんとなくお兄ちゃんっぽい事だと思う。


「   」


 アリス、と言う。俯いていた顔をあげて僕を見た。声が聞こえないのにどうして動いたのかは謎。

 手を伸ばして頭をなでる。



 ザシュッ!



 ――はずが、伸ばした右腕に短剣が刺さっていた。柄が左側にあったので、左を向くと夢子がいた。そして、母さんも。


「ゆ、夢子! あなた何を――」

「アリス様! はやくこちらに!」

「ま、待ってて、すぐに抜くから!」


 アリスは腕に刺さった短剣を抜こうとするが抜けない。無理に抜こうとすると腕が折れそうなので止めてほしい。そういえば短剣が刺さったのにまったく痛くない。うーん、さっきから分からないことばっかりだなぁ。


「アリス様、はやく! その男は危険です!」

「いきなり剣を刺してこっちに来いなんて何を言ってるの! 理由ぐらい話しなさいよ!」

「言えません。ですが、危険なのです! いつ“殺され”てもおかしくないのです!」


 なにいってんだろ。確かに僕の『殺す程度の能力』は酷いけどさ、しっかり扱えるし、無差別に“殺し”たりなんてしないのに。

 夢子にしてみたら関係無いんだろうね。能力が危険だから消す、邪魔だから消す、何かあってからじゃ遅いから消す、とにかく消す。きっとそんなふうに思われてるんだ。夢子の中の僕は頭が狂ってるんだね。


「離して夢子! この人助けないと!」

「私がやりますから、アリス様は下がってください!」

「でも――「アレン?」――ママ?」


 今まで黙っていた母さんが僕を呼んだ。


「アレン?」

「   」


 何? って言ったつもりだけどやっぱり声が出せない。


「こんなに寒そうな格好して……」


 母さんが一歩近づく。


「こんなに髪をボサボサにして、伸ばして……」


 母さんが一歩近づく。


「こんなに手も足も痩せこけて……」


 母さんが一歩近づく。


「こんなに……こんなに……こん、な、にっ……!」


 母さんは一歩、近づかなかった。それ以上近づこうとはしなかった。

 3歩。昔の僕は、能力を上手く扱えず周りに死をばらまいていた。それが3歩。今はちゃんと上手く扱えるようになってるみたいだけど、母さんは気付いてないみたいだ。母さんなら分かるはずなのに、それ以上近づこうとはしない。

 近づけるのに近づいてくれない、僕を見ているようで見ていない。やっぱり母さんも夢子と同じで僕はいらないって思ってるんだ。あの涙も演技で、嘘で、ホントは笑ってるんだ……。


「アレン……母さん言わないといけないことがあるの」

「え、母さん? じゃあ、この人は……私の……」

「し、神綺様!」


 僕一人ぼっちになっちゃった……。

 期待してた。母さんならって、期待してたけど、無駄だったみたい。

 やっぱりみんな僕が大嫌いで、邪魔なんだ。


「アレン、ごめんな――「……ぁり」――え?」


 僕はひとりごちた。


「ゃっぁり……ぁさん……くのこと……らぃなんだ…」

 やっぱり、かあさんはぼくのことがきらいなんだね


 と。同時に、僕は真横に吹き飛ばされた。


「………」

「アレン様!」

「きゃっ!?」


 母さんたちには何にもないのを見ると、僕だけらしい。

 勢いを“殺し”、着地する。筋肉が無い足でも大丈夫だった。


「曲者め、神綺様から離れよ!」


 声がする方を見ると鎧を着たおじさんたちがいた。多分見周りの兵隊。

 本当は母さんが寄ってきてたんだけど、そんなことはどうでもいいか。


「貴様ァ! 何をしたのか分かっているのか!」


 夢子が何か言ってるけど、考えることは別にある。

 それは“もしかしたら外に出られるんじゃないか?”ってこと。

 母さんはぼーっとしてるし、夢子はさっきの兵隊たちの所、アリスは……よくわかんない。いなくなればすぐに気付かれるだろうけど、ここに居たら死ぬ。でも、外に出れば生きていられる。もっとたくさんのことを知ることができる。


 僕は生まれて始めて心の底からなにかをしたいと思った。“生きたい”。


 来た道を戻って、近くにあった部屋に入る。窓を開けて飛び降りた。さっきと同じように勢いを“殺し”て着地。すぐに走り出した。といっても早歩きぐらいのスピードだけど。


 庭を突っ切ると今度は城壁。邪魔なので身体が通れるくらいの穴を城壁の石を“殺し”て開け、城壁を“殺し”たという現実を“殺し”元に戻す。あとはひたすら走り続けた、少しでもお城から遠ざかるために、母さんたちから逃げるために、生きるために。






 1時間ぐらい経ったと思う。

 追いつかれて囲まれてしまった。ただの妖怪とか魔物ならいいんだけど、お城の兵隊だからあんまり手を出したくない。でも捕まりたくない。


「おとなしくしろ」


 ……どうしよう。能力で脅したら帰ってくれるかなぁ……。


「   」


 帰れ、と言う。


 殺しの気配、つまり“死”を撒き散らす。魔界でもここまで濃い“死”はそうそう見ないから、驚いてくれるはず。


「な、なんだこれは!?」「く、くるしいぃ!!!」「うわぁぁぁぁぁああああ!!」


 やりすぎちゃった気がするけど気にしない。このまま帰ってー。


「うろたえるな!! この程度どうという事は無いだろうが!」


 隊長さんっぽい人が叱った。おかげでみなさん立ち直られました(泣)。

 ああ、どうしよう。もう“殺す”しかないかも。あんまりやりたくないんだよね、悪霊が付きまとうから。


「いけ!」


 一斉に襲いかかってくる。

 もうやるしかない。“殺す”。


 と、その時、僕の後ろから突然出てきた1つの極太の光線が兵隊たちを吹き飛ばした。後には何も残らず、煙と鎧の残骸が転がっている。


 誰が、これを?


 そう思って振り返った。


「アレン……よね? 久しぶりに見たと思ったら貴方の所の兵に囲まれてるし、みすぼらしくなってるし、何があったのかしら?」

「  」


 幽姉。


 母さんの知り合いの大妖怪、風見幽香。僕にとってはお姉さんみたいな妖怪がいた。



ゆうかりーーーーーーーーん!!!!!


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