紙飛行機とラブレター
紙飛行機が、ゆるりゆるりと弧を描いて飛んでいく。
そこにこめられたのは、ある一つの想い。
紙飛行機に描かれた、ある少女の恋文。
「…?なんだこれ」
ふと足下を見ると、小さな紙飛行機が落ちていた。
「誰かが捨てたのか?」
ポイ捨てなんて、非常識だ。なんて思いながら、気になるので拾い上げた。
綺麗に折られたそれを、薄く日の光に当てると、文字が見られた。
<樋口 玲太様>
その文字を見た瞬間、目が、口が、体中が、動かなくなるのを感じた。
(玲太って、俺の事だよな?え、何事?!)
謎の手紙にどぎまぎするも、自分宛ての手紙なら読むべきだろうという結論に至ったので、カサカサと音を立てながら、紙飛行機を開けた。
樋口 玲太様
突然のお手紙失礼します。
今、この手紙を書いている理由は、他でもなく、所謂ラブレターというものです。
でも、私は生まれてから一度もこんな物を書いたことはないので、とても緊張します。
さて、いきなりラブレターなんて言われても、困るだけだろうと思います。
何せ、私はあなたを知っていますが、あなたはきっと、私のことなんて知らないと思います。
でも、ストーカーとかそう言う類ではないので安心してください。
えっと、こんなのも恥ずかしいのですが、一目惚れなんです。
あなたの笑顔に惹かれて、この手紙を出しました。
気持ち悪いと思うのなら捨ててくれて構いません。
それから、いきなりこんなことをいわれても困るだけなので、友達からでも、知り合いからでもいいです。一生関わるなと言われても仕方ない気もします。
でも、私はあなたが好きです。
では、お返事待っています。
<高梨雛>
脈絡も無ければ文章も拙い、ただ純粋に想いと気持ちだけを込めたこの手紙が、ただ素直に心に響いた。
(高梨雛…確か、三組にいたなぁ、そんな名前のやつ)
明日会うかなぁ、なんて思いながら帰路へと向かった。
昼休み、友達に誘われたけど断って、高梨の所へ行った。
「なあ、高梨って、いる?」
「あぁ、高梨?いるけど。何、どしたの?」
三組にいた気がしたので、とりあえず行ってみると、ビンゴだった。
「うん、ちょっとな」
「ふーん?・・・おーい、高梨ー」
クラスメイトに呼ばれてひょこひょことやって来た高梨。
「どうしたの?・・・!!!」
俺の顔を見た瞬間、真っ赤になって固まってしまった。
「こいつが用があんだって。じゃ」
クラスメイトは軽く手を振るといなくなってしまった。
「あ、あああ、ああ、あの、樋口・・・君?」
最初に口を開いたのは高梨。かなりの動揺っぷりだ。
「あぁ・・・うん。話、あんだけど」
「うん。あの、場所変えない?」
「わかった」
誰もいない教室に入った俺と高梨は、向かい合うようにして座った。
「・・・・」
「・・・・」
沈黙が起こる。
「・・・あのさ」
やっぱり、自分が最初に沈黙を破った方が良いと思ったので、とりあえず話しかけてみた。
「・・・」
「昨日、紙飛行機が落ちてたんだ。それで、それを拾った」
「・・・そう、だったんだ」
高梨は俺の方をちらちら見て、顔を真っ赤にさせている。
「読んだの・・・?」
やっと言えた、と言う風な顔をしている高梨の顔を見ながら頷いた。
「読んだ。それで、返事をしに来た」
彼女は少し動揺したあと、
「あれ、捨てようと思ったの」
ポツリ、と零した。
「でも、捨てるのも勿体無いし、見られたら恥ずかしいし、ビリビリに破くのもどうかと思ったから、どうせなら知らないうちに誰かに拾われて捨ててくれた方がいいと思ったんだ」
ポツリポツリと、糸を解す様に言う高梨雛の顔は、羞恥も無く、さっきまでの動揺も無く、ただ無表情だった。
「・・・でも、まさか本人に見られるとは思ってなかったなぁ・・・」
と、自嘲にも似た笑みを向ける高梨。
「俺も、まさか拾ったのが自分宛の手紙だとは思わなかったよ」
「だよね」
しかもラブレター。こんなことが起きるなんて。
事実は小説よりも奇なり。あれはほとんど本当だ。
「でもね、行き成り初対面から恋人に昇格―っってのは、殆ど有り得ないよね?」
と、またも自嘲気味に笑う高梨。
「うん。そうだね。・・・でも、」
俺はそこで一旦区切って、
「友達から、は有り得るよね」
そこまで言って、高梨は、吃驚した顔で俺を眺めた。
「・・・友達から、いいの?」
「うん。高梨がよければ」
「も、勿論!!」
紙飛行機が、ゆるりゆるりと弧を描いて飛んでいく。
そこにこめられたのは、ある一つの想い。
その想いが願うかどうかは、紙飛行機にもわからない。
控えめが女の子とラブレターが紙飛行機になる!・・・というのを書きたかっただけです(笑)
凄く書き溜めしてたので、無事に書き終わってほっとしてます・・・。
さて、一応作者は受験生なので、これから受験が終わるまでは投稿は出来ません!
作者の合格をどうかお祈り下さい(笑)頑張ってきます!!