第二章 (1)
研究所で出会ったおばさんが教えてくれたこととは
おばさんは産業技術研究所の社員食堂にパートで勤めていて、配膳を担当しているとのことだった。産業技術研究所の中には寮もあり、寮の人は昼食だけでなく朝食、夕食も社員食堂でとっていた。エミリーの父兄はほぼ毎日、朝食のときに食堂に来ている、おそらく寮で暮らしているのではないかという話だった。4人はその朗報を聞いて喜んだが、この後の作戦を考えるため一旦、モッキンに引き上げた。
「やっぱり産業技術研究所にいるんですね。マスターの予想通り、あいつら嘘をついていたんだ」ショウタは、だから大企業のおじさんは信じられないんだと不信な思いを膨らませていた。
「何か、隠さないといけない理由があるんですね」トウヤがケントに向かって言った。
「そうだな……それは何なんだ?」ケントは天井を見上げながら考えていた。
「お父さんたち、いったい、何をしているの? 私には理解できない…… あんなところにいないで帰ってきて欲しいです」エミリーは少し怒っているようだった。
「でも居場所がわかったんだ。それはいいことだよ」とショウタはエミリーをなだめるように言った。
「どうにか二人に会えないですかね?」ショウタがそう言うとトウヤがパッとうつむいていた顔を上げて言った。
「そうだ、リョウヘイの会社は清掃で研究所に出入りしているんだろう。どうにか潜り込めないかな?」
その夜、モッキンに飲みにきたリョウヘイを捕まえてトウヤは迫った。
「リョウヘイ、研究所にどうにか潜り込めないかなあ?」
「えーっ。研究所はお得意様だからなあ、あんまり悪いことはできないよ。睨まれたらうちの会社つぶれちゃうよ」
「そこをどうにか協力してくれませんかね。この子をほっとけないでしょ」ケントも頼みこんだ。
「頼むよ、リョウヘイ」トウヤがプッシュした。
「まあね。清掃員になれば入り込めないことはないけど…… そのためにはばれないように朝から夕方まで清掃をフルで一日、しっかりしてもらわなければならないですよ」
「掃除は得意だよ」ケントが言った。
「俺も」ショウタも同調した。
「ショウタちゃんはなんか当てにならないなあ。でもわかったよ、そんなに言うなら次の清掃のときに清掃員に化けて入ったら」
「ありがとう」ケントが頭を下げた。
「清掃は週に1回入ってる。次回は来週の火曜日、四日後だな。いつも4名で入っているんだけど、主任は顔を覚えられているから変えられない。だから人数は3名まで」
「じゃあ、エミリーちゃんとマスターと俺の3名でどうです?」ショウタはその気になって身を乗り出した。
「いいんじゃないか」ケントが同意した。
「時間は朝9時から夕方5時まで。事前に清掃の仕方の講習をするから覚えてよ」
「でもどうやって二人に会うんだ。居場所は分からないぞ。あの広い敷地に多くの建物だ。場所がわからないと探せない」トウヤが言った。
「そこは自分達で調べてどうにかしてよ。中に入ってからあんまり関係ないところうろうろしないでよ。バレちゃうから」リョウヘイが注文をつけた。
「朝、朝食をとりに食堂に来てるんですよね。そこを狙えばいいんじゃないですか?でもそれには朝早くに入る必要がありますね」ショウタが提案した。
「わかった、主任に朝早く入れないか聞いてみる」リョウヘイはそう言って携帯を耳に当てた。
「大丈夫だ、今までも朝早くに入ったことはあるらしい。事前に申請をすれば入れる」
「よし、じゃあ今度の火曜日に朝6時に入るということではどうですか?」
「ショウタ君、やけに張り切ってるなあ」トウヤがそう言うとショウタはちょっと照れた。
「皆さん、ありがとうございます。 リョウヘイさんも無理言って申し訳ありません」とエミリーが頭を下げてお礼を言うとリョウヘイもまんざらでもないらしく照れていた。
「いいんだよ」
モッキンに集う人は優しい




