第一章 (4)
楽しい飲み屋 モッキンです。
その日の夜、いつものようにモッキンは常連客で賑わっていた。
「ほら、やっぱり警察は当てになんないだろう。ダメなんだよ、今の役所はやる気がなくて」トウヤが自分の予想通りになったことを自慢げに話した。
「それでネットを使って自分たちで捜索願いを発信することにしましたよ。もう色々、情報が上がってきていますよ」ショウタはトウヤの自慢話はどうでもいいという風に、手元の端末をにらみながら話した。
「それでエミリーちゃんは今、どうしているの?」ルミコが心配そうな表情でケントに訊いた。
「上で休んでいるよ。疲れが溜まっているみたいで、こんな飲み屋に来てもさらに疲れちゃうだろ」ケントはカウンターの中で調理が忙しそうだった。
「そうですよね。遠くから来て、まだ何にも手掛かりがないんじゃ、不安もあって疲れちゃうよねえ」
「ハヤトちゃん、なんかお笑いの芸やって元気づけてあげたら」リョウヘイがルミコの隣に座るハヤトをけしかけた。
「ダメですよ、ハヤトちゃんの芸じゃ、かえって滅入っちゃうよ」ユキエが笑いながらからかった。流れに乗れないハヤトはきょとんとしていた。
「失礼な、ハヤトの芸を馬鹿にしないでくださいよ。最近、人気も上がってきてるんだから。特に女子高生のファンも増えたし」ルミコがかみついた。
「へえ、そうなんだ」ユキエはルミコの言葉を信じてないようだった。
「マスター、こんな情報が来ているんですけど」ショウタがケントのそばに寄って端末の画面を見せた。そこには、エミリーと同じような服装をした二人の男性が産業技術研究所に入るところを見たという情報があった。時期も去年の春ということで、二人がここに来た時期と一致した。
「産業技術研究所って……何の用事で入ったんでしょうね?」ショウタがケントに訊いた。
「二人はあんまり工業技術には関係がなさそうだけどな。特にお父さんのライアンは、工業には全く無縁な感じだったけどなあ」ケントには思い当たるところがなかった。
「とりあえず産業技術研究所に行ってみましょうか?」
「ただ訪ねても入れてくれないぞ。事前にアポを取らないと」ケントの言葉に思い出したようにショウタが言った。
「そういえば、リョウヘイさん、産業技術研究所に清掃に入っているって言っていませんでしたっけ?」
「ああ入っているよ。でも清掃だけだからなあ、あんまり強いコネはないよ」リョウヘイの頼りない答えにトウヤが入り込んできた。
「産業技術研究所だったら昔、取引きがあったから知っている人はいるよ。調達部の部長とかだけど」
「部長かぁ、それはいい。アポ取れませんかね?」
産業技術研究所に父兄はいるのでしょうか?




