第一章 (2)
エミリーのお父さん、お兄さんはどこに? 捜索が始まります。
翌朝、ケントとショウタはエミリーを連れて街中の警察署に行った。捜索願の担当の警察官にエミリーの父兄が行方不明であることを説明したが、警察の対応はそっけなかった。
「世の中には行方不明者はたくさんいます。捜索願もこの街だけで年間千件はあるんです。人手も潤沢にあるわけではないので、行方不明の方が健常者の場合、積極的に捜索はしていないんです。どちらにしろ具体的な手掛かりやヒントがないとなかなか見つからないんですよ」
「でもこの娘は遠くから父親と兄を探しに来たんだ。どうにか見つけてくれませんか?」その強い口調からケントが冷たい警察官の態度にイライラしているのは明らかだった。
「もちろんご協力はしますよ。でももう少し手掛かりはないんですかねえ」
「父と兄は私と同じような服を着ていました。それがヒントにはなりませんか?」
「確かにこんな服はここじゃあんまり見かけないもんな。この写真を表に流せば誰か見かけた人がいるかもしれない」エミリーの提案にショウタも同調した。
「そうですね。じゃ写真を撮らせてください。関係各所と外に公開して捜索願いを出しますよ」
「まったく、トウヤさんの言う通りだったな。警察は全然当てにならない」警察署を出てすぐにショウタは愚痴を言った。
「警察とか役所はもうだめだな。この国にはもうやる気がないんだよ」ケントは諦めの冷めた口調だった。
「さて、警察が当てにならないとなると、どうします?」ショウタがケントに問いかけた。
「そうだな、特に俺にはツテもないし……」困った顔をしたケントの横で、ショウタが思いついた。
「お父さんとお兄さんの顔写真や服装の画像をネットで流しませんか?そうしたら一般の人から情報が集まるかもしれない。エミリーちゃん、どうかな?」
「是非、お願いします。別に父と兄の画像が公開されても構わないので」
「いいアイデアだね。それ、ショウタ君にお願いできる?俺はネットとか疎いから」
「任せてくださいよ。そういうのはこれでも得意だから」不安そうなケントを見て逆にショウタにはやる気が出てきた。
3人はモッキンに帰るべく歩を進めた。街の中心部はビルが所狭しと並び窮屈だったが、辛うじてところどころに木が植えられた小さな公園があった。ケントは緑が好きなのでなるべく公園の中を通るような道を選んだ。エミリーも木が好きなのか顔を上に向けて木々の枝葉を眺めながら歩いた。ある公園に入りかけたとき何かを思いついたように急にエミリーが駆けだした。驚いたケントとショウタを尻目にエミリーは一本の木のそばに近づき、幹に添えるように手の平を優しく当てた。そして下を向いて瞳を閉じ姿勢を変えずにじっとそのままたたずんだ。
「どうしたのエミリーちゃん」エミリーに追い付いたケントが優しく声をかけた。
「この木は怯えています。何かを怖がっている……」エミリーが目を閉じたまま小さな声で言った。
不思議な少女エミリー。




