第三章 (2)
エミリーをどうにか助けたいと思うショウタ。
翌日のお昼過ぎ、またショウタはエミリーを川向こうの森の公園に連れ出した。ケントは仕込みがあるからということで店に残った。空は晴れ渡り、春のそよ風がエミリーの髪とスカートの裾をたなびかせた。公園の木々の中に入ると相変わらず木漏れ日と鳥のさえずりが心地よかった。二人はベンチに腰かけ休憩した。
「エミリーちゃん、これからどうするつもり?」
「父と兄をどうにか家に帰るように説得したいと思います」
「でも二人は今は帰れない、1年待ってくれと言っていたよ」
「この前、会ったときに、お兄さんはまだしも、父は帰りたい気持ちがあるように感じました。ただ仕事の守秘義務があるから帰れないんだと思います」
「だとしたら秘密が秘密でなくなってしまえばいいのか。一体、二人は産業技術研究所で何の仕事をしているんだろう?」
「それがわからないんです。考えたのですが思い当たりません」
「植物とコミュニケーションができることと関係があるのかな?」
「それも考えたんです。でも工業技術と植物の関連も思い当たらないんです」
「確かにね。植物と言えば昨日のマリの木が現れたこととご父兄の仕事や産業技術研究所のやっていることと関係があるのかな?」
「どうなんでしょうか?一つ気になるのは街の中心から産業技術研究所に近づくにつれ木々の怖れる気持ちが増えたことです」
「確かにそれは産業技術研究所と関係するのかもね。でもそれが何なのか見当がつかない……」
「どちらにしろ、父と兄、せめて父だけでも帰ってきて欲しいです」エミリーは正面の池の方をじっと見つめていた。その表情にエミリーの強い意志を感じ、ショウタもエミリーを助けたいと強く思った。しかし産業技術研究所の仕事を探り当てるにもショウタには特にコネもなく、いい方法が思いつかなかった。
エミリーをモッキンに送った後、ショウタは一旦自分の家に引き上げた。途中の道で新興宗教のデモに出くわした。いつもより多くの人が集まっていた。プラカードを掲げ『木々の騒ぎは神の怒りだ』『破滅の始まりだ』『神に祈ろう』と口々に叫びながら行進していた。その列は後ろが見えない程長く続いていた。別に木々の騒ぎは神に祈ってもどうにもならないよとショウタは思ったが、一方、昨晩の木の群れが恐ろしかったのも事実だった。ショウタはある旧友のことをふと思い出した。その男は大学時代の同級生で仲間内でも植物好きの“植物オタク”で知られていた。アイツなら植物来襲の原因、ひいては研究所やエミリーの父兄の仕事のヒントがわかるんじゃないかと閃いた。その場でショウタは男に電話した。
「カズユキ?久しぶり元気?」
「ショウタか?3年ぶり位だな。元気だよ」
「昨日の木の騒ぎ、知ってる?」
「当たりまえじゃないか。テレビで見たよ」
「実は俺、目の前で見たんだ」
「え? ホント、あの場にいたの?ねえどんなんだったか話聞かせてよ」
「うん、俺もカズユキの話を聞きたいから、今晩会わない?」
カズユキは助けになるのか?




