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序章

気楽に読み始めていただければ幸いです

 エミリーはこの森に来るのが好きだった。なぜならここにセルジュがいるから。家の畑を越えて少し歩いた先にある森。森は広大でエミリーは果てまで行ったことがなく、どこまで続いているのか知らなかった。森の中に入ると多くの種類の木々が鬱蒼と生い茂り足元には地面や倒木の上を覆う苔が明るい緑色を放っていた。頭上では鳥たちが歌声を奏で、目の前をリスやイタチなどの小動物が横切ることもあった。多くの虫も住み、ここには命が満ち溢れていた。畑から小一時間程歩いた先にポッカリ開いた空間があり、その中央にデンとセルジュが大きく構えていた。大人が両腕を横に広げてつながっても数十人いないと一周できない程太い幹。その幹から地面には蛇が這うように根が四方に広がっていた。幹の上には枝葉が広がり、その枝葉が笠となって下に大きな空間を作っていた。枝葉から降り注ぐ木漏れ日が適度な明るさとなって空間を心地よい広場としていた。セルジュはここに生を受けてから1万年以上にもなるクスの木の巨大な老樹だった。幼いときからエミリーは毎日のようにセルジュのもとに通い、木陰で休み、彼との会話を楽しんだ。エミリーは彼から色々なことを教わった。木々のこと、森のこと、生き物のこと、歴史のこと、世界のこと、そして宇宙のことも。エミリーにとってセルジュはおじいちゃんであり、教師であり、神様だった。


 今日もセルジュの木陰にはさわやかな風が吹き抜けていた。しかしエミリーには今、心配なことがあった。

「セルジュ。お父さんとお兄ちゃんは一体、何をしているの?なぜ帰ってこないの?」

「彼らもやりたいことがあるのだろう。しかし大きなうねりに巻き込まれてしまっている」

「いったい何に巻き込まれているの?何が起きているというの?」

「皆、若い。若いと落ち着くことができない。どうにかしたい、何かしたいと思うものだ。その行動がぶつかり合い、軋轢が生まれ、爆発が起きようとしている」

「皆、何を求めているの?」

「避けられない定められた道がある。しかし彼らはその道からどうにか逃れようとしている。皆、若い」

「探しに行って確かめるしかないのかな」


エミリーは街へ

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